見出し画像

ベクトル検索とは?基本的概念と応用例。データマネジメントをしっかり行って品質を高めること大事

昨夕、JDMCコミュニティ「エンジニアの会」が主宰されている「ベクトル検索とは?」のセミナーに現地参加してきました。GINZA SIXのWeWorkさんのオープンスペースでの開催(#オサレな空間)
 https://jdmc.connpass.com/event/326396

講師は、株式会社D.Force社長の川上明久さん。川上さんとはデータ関係の団体の勉強会等で10年余のご一緒させていただいており、川上さんの最新テック情報は、ぜひ学んでおきたかった。D.Forceは、データマネジメントを専門とするコンサルティング会社です。HPには、川上さんのデータ基盤やデータベースまわりのご著書も沢山ならんでるので、ご存じの方も多いと思う(#あ、あの川上さんですか)

今回のセミナーに関連した記事はここ。

 

川上さんの講演概要、自分メモとしてまとめてみます。

ベクトル検索の基本概念とその重要性

ベクトル検索とは、単語や文章を数値ベクトルに変換し、そのベクトル同士の類似度を基に検索結果を返す技術。この技術で、従来のキーワード検索では対応できなかった類義語や文脈に基づいた検索が可能となり、ユーザーがより直感的で的確な検索結果を得られるようになる。

具体的には、ベクトル検索は、言葉や文章をベクトル化し、それらのベクトルの向きや距離を計算することで、その言葉や文章がどの程度似ているかを判定。例えば「スマートフォン」と「携帯電話」のように、意味が近いものを正確に関連付けることが可能になる。これによって、従来のキーワード検索では拾いきれなかった検索結果を提供できるようになる。

ベクトル検索の仕組みと動作原理

川上さんは、ベクトル検索の仕組みについても詳しく説明された。ベクトル検索は、まず単語や文章を「言語モデル」と呼ばれる技術によってベクトル化する。言語モデルとは、ChatGPTのような大規模な自然言語処理モデルで、入力された言葉や文章を数値ベクトルとして表現する。これらのベクトル同士の距離や向きを計算することで、言葉の類似度を判定し、検索結果を返す。

この際に言語モデルが持つ能力により、単語や文章がどのようにベクトル化されるかが決まると。例えば、「スマートフォン」と「携帯電話」という言葉は、言語モデルによって近いベクトル空間に配置されます。これにより、ベクトル検索を行うと、これらの言葉が類似していると判断されて、ユーザーには適切な検索結果が返される仕組み。

ベクトル検索の応用例


ベクトル検索の応用例として、川上さんは特に商品検索を例に挙げて説明されていた。従来のキーワード検索では、ユーザーが入力したキーワードに完全一致する商品しかヒットしなかったけれども、ベクトル検索を利用することで、類似する言葉や文脈を考慮して、より関連性の高い商品を提示することが可能になると。

これによってユーザーは自分の意図により合致した商品を簡単に見つけることができ、検索体験の向上につながる。

また、業界用語や特定の専門用語にも対応できる点も大きな利点であると。例えば、建設業界では「一輪車」を「猫」と呼ぶことがあるけれど、ベクトル検索を利用すれば、こうした業界特有の用語も正確に理解し、適切な検索結果を返すことが可能とのこと。ただし、これを実現するためには、言語モデルがその業界特有の用語を十分に学習している必要があるので、モデル選定が重要。

システム構成と技術的背景

次に、ベクトル検索を実現するためのシステム構成についても、川上さんは説明されました。基本的な構成としては、データをベクトル化する言語モデルと、そのベクトルデータを格納・検索するベクトルデータベースが必要で、このベクトルデータベースは、ベクトルデータを効率よく検索するためのインデックス機能を持っており、このインデックスを活用することで、高速な検索が可能になる。

システムの動作としては、まずデータが言語モデルによってベクトル化され、そのベクトルデータがベクトルデータベースに格納される。そして、ユーザーが検索クエリを入力すると、そのクエリもベクトル化され、データベース内のベクトルデータと比較される。この比較により、類似度が高いデータが検索結果として返される。

ベクトル検索には高度な計算が伴うので、計算リソースの確保や最適化が非常に重要です。特に、ECサイトのようなオンラインサービスでは、ユーザーが離脱しないよう、数百ミリ秒以内に検索結果を返すことが求められる。このため、インデックスの使用や、GPUを活用した高速化が不可欠。GPUを利用することで、計算処理が格段に速くなるが、一方でコストが増加するという課題もある。

ベクトル検索のメリットと課題


川上さん曰く、最大のメリットは、検索の精度が飛躍的に向上すること。ユーザーにとって直感的で有用な検索結果を提供できる。特に、キーワード検索ではヒットしなかった類義語や文脈を理解した検索が可能になるため、ECサイトなどでは売上向上に直結する可能性がある。

例えばECサイトの商品検索で、ユーザーが入力したキーワードが一部異なる場合でも、ベクトル検索は類義語や関連する商品を提案する。これで検索ヒット数が増加し、ユーザーにとっても、求める商品をより見つけやすくなる。

一方で、ベクトル検索には課題もあって、計算量が多く、処理に時間がかかるので、システム全体のコストが増加しやすい点。特に、大規模なデータベースを扱う場合、この問題は顕著。また、ベクトル検索を導入する際には、高度な技術的知識が求められるため、組織全体のスキルアップが不可欠で、導入前には十分な準備と計画が必要。

ベクトル検索の実装例とチューニングのポイント


実際の導入に向けて、川上さんはベクトル検索の実装例をいくつか紹介されました。例えば、PostgreSQLの拡張機能であるPGベクターを使用することで、簡単にベクトル検索を実現できる。この機能を利用すれば既存のデータベース環境にベクトル検索を組み込むことが容易になり、検索機能の拡張が可能。

また、Oracleデータベースなどの大規模システムでは、独自の言語モデルをデータベース内にホストし、SQLで操作することができると説明されました。

実装に際しては、検索精度の向上や計算速度の最適化が重要なポイント。特に、データの質と量の改善がベクトル検索の精度に直結するため、データのリッチ化が不可欠。データのリッチ化とは、商品説明やメタデータを充実させること。商品データに詳細な説明や関連情報を追加すること。

場合によっては言語モデル自体をチューニングし、特定のドメインに適したモデルに改良することも考えられる。例えば、業界特有の用語や文脈を反映させるために、言語モデルを再学習させることで、検索精度をさらに向上させることが可能。ただし、このようなチューニングは高度な機械学習の知識が必要となるため、専門家の支援が不可欠(#そうだろな)

ベクトル検索の未来と展望


ベクトル検索は、今後ますます広がりを見せる技術だろうと川上さん。特に大規模なデータを扱う企業にとって重要なツールとなる。そのためにも、データの質を高めることが大事。

ベクトル検索はECサイト以外にも、FAQシステムや人材管理、研究論文の検索など、さまざまな分野での応用が期待されている。さらに、ベクトル検索はテキスト以外のコンテンツにも応用が可能で、例えば、画像や音声データをベクトル化し、類似の画像や音声を検索することができるそうだ。従来のテキストベースの検索では見つけられなかったコンテンツを発見できる可能性が広がっている。

加えて、川上さんはベクトル検索が将来的にどのように発展するかについても言及されました。例えば、今後はより多くの企業がベクトル検索を導入し、AIや機械学習と組み合わせることで、さらに高度な検索機能を提供できるようになると。顧客体験が向上が期待されますね。 

データマネジメントの重要性とベクトル検索への影響


ベクトル検索が成功するためには、データマネジメントが非常に重要であると川上さんは強調されましたベクトル検索はデータの質に大きく依存しており、データが正確でリッチなものであればあるほど、検索結果の精度が向上する。このため、企業はデータの管理に投資し、データの品質を維持・向上させることが重要。

データマネジメントにはメリハリが必要で、すべてのデータをリッチ化するのではなく、特に重要なデータに焦点を当てて改善を進めるべきであると川上さんは述べられた。

まとめ


川上さんの講演は、ベクトル検索の基本概念から応用、実装、そして将来の展望に至るまで、非常に広範な内容をカバーしていました。ベクトル検索に注目です。そのためには、データマネジメントをしっかりと行い、データの品質を高めることが必要。また、システムの設計やチューニングにおいても、適切な技術選定と最適化が求められるだろう。

最後に、川上さんは今後のベクトル検索の発展に期待を寄せており、データを活用したより高度な検索技術が、多くの企業やユーザーにとって大きな価値をもたらすだろうと締めくくられました。

データ横丁では、ポッドキャスト「データマネジメント・ラジオ」を配信中


関連リンク


JDMCコミュニティ・エンジニアの会









 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?