上村楽園 年間 文学表彰2024年
上村が今年読んだ小説、戯曲の中で、「おおお」と思った作品について、分野別に表彰します。素晴らしい作品をありがとうございます。心の中ではともかく、現実世界ではトロフィーも賞金も有価証券もカタログギフトもnoteポイントの付与もありません。
作品部門
「光のとこにいてね」(一穂ミチ さん)
わくわくどきどきするし、しんみりもするし、きゅんとするし、心が忙しくなる作品です。
登場人物部門
リッカさん
「パン屋まよなかあひる」(皐月まう さん)の登場人物です。「魔女の宅急便」の おそのさんへのオマージュということで、温かくて豪快で懐の広いキャラクターです。
セリフ部門
「イートインで逢いましょう」(考える犬くん@音楽の話をしよう さん)
いいセリフが多い。
例えば、
「結局のところ私たちは、何が正しいかなんてわからないのよ。だから、正しいと思ったことをやるしかないの」
地の文部門
「ダイヤモンドより無価値なわたしは」(岩月すみか さん)
方言と語りで進む地の文に惹き込まれてしまいます。
「First Love」(橘 実来 さん)
心の襞を一枚一枚丁寧に描く心情表現が見事です。
比喩部門 すごい比喩だという部門です。該当比喩は なかった
音響部門 音の表現がすごいという部門です。該当の表現は なかった。
オノマトペ部門
「光のとこにいてね」(一穂ミチ さん)
設定部門
「君を数える」(Haruko Mori さん)
記憶喪失ものというのはいろいろ見たり読んだりしてきましたが、十人しか覚えられないという設定はユニークで、設定を活かした物語に惹き込まれました。
2024年12/28時点では閲覧できないようになっています。
「ダイヤモンドより無価値なわたしは」(岩月すみか さん)
身体が結晶化して、死ぬとその人の体重分のダイヤモンドになるという奇妙な設定の物語です。母親がその奇病にかかった後の、後日譚の筆運びも見事です。
「光のとこにいてね」(一穂ミチ さん)
家族との関係を描くだけでは狭く、希望のない物語になったことでしょう。けれど、行動して応援する果遠ちゃんと、考えて止めてくれる結珠ちゃんという二人の関係があることで、希望のある外の世界へとひらけています。お互いにとって、いつか会えるかもしれない想像上の友達がいることで、生きていけるようになっています。
構成部門、ストーリー部門
「私の死体を探してください」(星月渉さん)
note創作大賞も受賞しています。
少しずつ明かされていくという構成がいいですね。
紙の本もあります。
トリック部門
「幻の彼女」(酒本歩さん)
別れた恋人が三人も死んでいる。一人なら色々とトリックを思いつくのですが、
この作品はどう解決すればいいのか思いつかないなと思いながら読んでいました。おお、なんと。そういう仕掛けがありましたか。なるほどです。
見出し画像部門
「陽だまりはそこにいた」(rinさん)
念のために書いておきますが、どの部門でも上村は作品そのものもスキです。
じんわり部門
「家族の言い訳」(森浩美さん)
短編集です。
「山ぎわ少し明かりて」(辻堂ゆめさん)
故郷がダム湖に沈んでしまう。ああ郷愁の物語。
知的な楽しみ部門
「エンプティチェア」(ジェフリーディーバーさん)
最後であの伏線が回収されてるー、と言うか、伏線だったことにも気づかなかったという、先が読めないミステリーです。
選んだらすべて小説になりました。戯曲は ありませんでした。
来年は、最初の一行部門なども設けようかなと思っています。