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オープンデータ活用研究vol10(経済センサス編) 地方都市比較による宿泊・飲食業の収益性分析から得られる新たなインサイト探索~データ分析編④~

お疲れ様です。ムロイです。
皆様、いかがお過ごしでしょうか。

今年2022年の1月よりデータ活用からビジネスインサイトを探索する研究を始めようと思ってから早半年。おかげ様で本連載も計10回を数える企画となりました。皆様からの反応をもってはんとか持ちこたえた印象です。

40歳を超えていろいろチャレンジしようとするとなかなか難しい状況もあるわけですが、自分に言い訳せず初心を忘れずに細々とこの活動は継続していこうと思います。

さて前回より全国地方都市をランキング形式で収益性比較をしていまして、北海道&東北ブロックを見てきました。特に山形市のポテンシャルについては新たなインサイトがありましたので、興味のある方はぜひ前回記事を流し読みしてみてください。今回は関東ブロックを見ていきます。

1. 地方都市の収益性ランキング(関東ブロック)

このブロックで対象としたのは、水戸市、宇都宮市、前橋市、さいたま市、横浜市、千葉市、港区の計7都市です。東京は県庁所在地という訳にもいかないため行政区で港区を選定しました。再開発著しい品川区や白金高輪等の高級住宅街、六本木や麻布十番など連日多くの人で賑わう場所まで、とにかく国内最高クラスの高級地です。

これらの都市を抽出条件にして、経済センサスデータ最新(2016年)から関連データを抽出します。具体的には、売上(収入)金額【百万円】、費用 売上原価【百万円】、費用 販売費及び一般管理費【百万円】です。これらを元データに売上原価から売上総利益率(粗利率)、販管費から営業利益率を算出します。

★売上ランキング
①港区(1,494,009)
②横浜市(596,327)
③さいたま市(223,623)
④千葉市(110,733)
⑤宇都宮市(100,597)
⑥水戸市(46,784)
⑦前橋市(34,096)

★売上総利益率ランキング
①水戸市(78.9%)
②前橋市(74.8%)
③千葉市(71.7%)
④さいたま市(71.2%)
⑤横浜市(65.2%)
⑥宇都宮市(61.6%)
⑦港区(56.8%)

★営業利益率ランキング
①さいたま市(30.4%)
②前橋市(28.6%)
③水戸市(28.2%)
④宇都宮市(22.2%)
⑤千葉市(21.0%)
⑥横浜市(20.1%)
⑦港区(13.3%)

2. 関東ブロックの考察(その1)

まず港区の売上規模を見てみましょう。
港区界隈の飲食宿泊ビジネス規模は1.4兆円です。他都市との比較でも同ブロック横浜の3倍規模ですから一行政区の規模と考えるとすごい額です。

売上総利益や営業利益率はどうでしょうか。
どちらの指標も同ブロック最下位で、前回の北海道&東北ブロックを含めても圧倒的に低いレベルの数値です。
経済センサスの別データも確認すると、港区のコストが他地域と比較して恐ろしく高いコストがかかるビジネス構造になっていることが分かります。
例えば、人件費や不動産賃借料は約3倍、福利厚生費や原価償却費は約2倍、外注費は10倍です。

働く人にとっては非常に素晴らしい環境といえます。毎年多くの若者が夢を抱いて状況する価値のある街であるのは間違いなさそうです。(当然競争も激しく、多様なリスクも介在しますが)
新規出店など地域参入組の視点では売上スケールのチャレンジの場所において申し分なく、ここで成功すればブランディングの面でも貢献が大きいものと思います。ただやはりコストのかかる場所なのは間違いないですから、いかにしてこの部分のリスク、例えば小規模展開可能な事業設計や人材育成の簡素化などが課題になるでしょうか。

3. 関東ブロックの考察(その2)

その他の地域の指標も見てみましょう。
さいたま、水戸、前橋は東京からも1時間程度という立地、事業者としては地代が安い、食材の現地調達が可能などの利点もあって、営業利益率25%以上は素晴らしいです。
横浜や宇都宮は売上はある程度見込めるのですが、利益率観点だと厳しい場所のようにも見えます。今回のデータセットだけでは原因特定までは行けませんが、横浜は港区同じレベルの税金がかかっていましたね。
前回もそうでしたが、やはり個人的にも営業利益率が20%、30%のビジネスはなかなか馴染みがないのですが、成功指標の一つとして認識しておく必要がありそうです。


今回は以上です。いかがでしたでしょうか。今回も経済センサスデータから見えてくるインサイトでビジネス可能性や仮設設定もできることを実感いただけたのではないでしょうか。

次回は中部&北陸ブロックブロックで何か新たなインサイトがないかなどを見ていきたいと思っています。

この企画を進めているとなんだか旅行に行きたくなってきます。温泉入って、うまいものでも食べにいきたいなぁと。ではまた次の機会に!


(おまけ)地方事業者向け気になるニュース紹介

今回も私が個人的に気になるニュースをピックアップしています。
地方事業者の目線で役に立つ情報を中心にご紹介です。

抽出期間:2022/5/21~2022/6/12
ニュース転載元:EnterpriseZine(エンタープライズジン)

社員の6割近くがDX関与に消極的 ドリーム・アーツが調査結果を発表

DXに消極的という記事です。私は"デジタル化によって新たな事業機会を創出すること"をDXと定義しています。デジタル化は避けられないわけで、消極も積極もなく、いやおうなしの通常の営みレベルの話と思っています。
現実的にはデジタル化を毛嫌いしてしまう人も理解できます。IT専門家やデジタルネイティブ世代などデジタル化が当たり前に生きている人もいますので、そういう人たちに任ればいいんじゃないでしょうか。全員DX化計画などありえないと思っています。

日立システムズが越谷市と事業協定を締結 自治体におけるDX人材育成を担う

私も本業では多くのDX教育をここ2~3年受けていますが、やはり全員のマインドを底上げするにとどまっているのが現状ではないでしょうか。
まずデジタル化に際して全社展開を考える事業者は組織設計が重要で、専門家+若手のチーミングがベストだと思っています。ど新規の革新的売上創出機会は通常のマインド設定からは生まれないので、自分の意思で本気で取り組める人たちを集めてみてはいかがでしょうか。

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