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ああ、素晴らしき茨城。最高のチームで最高の勝利。

11月9日(土)の茨城VS渋谷。結果は87対80で茨城の勝利となりました。

今シーズンの成績やメンバーのネームバリュー的には渋谷優位のこの試合ですが、点差以上に茨城の完勝となりました。

本当に素晴らしかった茨城。

プレビューしたこの記事も見ながら、その素晴らしさを綴っていきます。


プレビュー記事の振り返り

プレビュー記事では、茨城勝利のための4つの条件を挙げていました。
これが達成されたのかをまずは見ていきましょう。

条件1:渋谷のインサイドをある程度止める

さぁ、どうだったのでしょうか?

プレビュー記事と同じ表を見てみましょう。
普段の渋谷のゴール下の確率が72%近くですが、この試合では45%と、止めまくっている、、、、、、
ように見えますが実は少し実態とは違います。
下の表を見てください。
これは渋谷が放ったゴール下からのシュートを全て記録したものです。
ただ、手で数えているので2本ほど記録が漏れてます。すみません。

赤文字にしているのは、オフェンスリバウンドを取られている部分です。そう見ると、オフェンスリバウンドを拾われてのシュートが多いことがわかります。
また、白と水色で色分けしていますが、連続で同じ色にしているのは「時間的に近いところでゴール下が打たれているケース」です。
例えば、1Q冒頭の2本は、クレモンズのシュートが外れるもジョーンズがオフェンスリバウンドをとって最終的には決めています。
このように、1本目のシュートが外れても、オフェンスリバウンドを取られて押し込まれているケースが非常に多いです。少なくとも5件あります。

これは実は「1本目のシュートブロックに全力になりすぎるとオフェンスリバウンドが拾われやすい」という現象と関連しています。
つまり、1本目を決められない代わりに2本目を決められているということであり、実質的には1本目を決められていることと変わりありません。
なので、これを1本のシュート成功とみなすと、実は表中のゴール下のシュートは
18本中7本成功ではなく、12本中7本成功になります。
僕が数え漏らしているシュートを足すと14本中9本成功の64.2%になります。

渋谷のシーズン通しての数字は、12.2本中8.8本成功の71.9%なので、これより少し多く打たれて、確率は抑えたものの多く決められてしまったことになります。

ただ、決められた本数は+0.2本なのでほぼ誤差です。

まさしく、「そこそこ」とめたと言えるでしょう。

条件2:スリーが落ちてくれる

茨城が勝利していた2試合で

・千葉:11.5% シーズン全体では32.2%
・名古屋:22.5% シーズン全体で29.2

と、相手のスリーが絶不調だったことから、この条件を挙げたわけですが、実際は

39.1% 23本中9本成功 (シーズン全体では35.1% 21.9本中7.7本成功

と逆に普段よりも決められてしまいました。

ただ、これは4Qを別物として考えると見え方が変わってきます。

1~3Q 28.6% 14本中4本成功
4Q  55.6%  9本中5本成功

と、ここを境に大きく確率が変わっています。特に、最後の5分は6本中4本成功と確率が上がっていました(うち3本はステップバックスリーというタフショット)。

点差が空いていて「スリーを決めるしかなくなった」渋谷がスリーを撃ちまくった結果であり、タフスリーが決まったものの逆に確率をさらに落としていてもおかしくない試合でした。

4Qは渋谷を褒めるとして、逆に1~3Qの茨城のディフェンスは明確に渋谷のスリーを止めていました。

「落としてくれる」ではなく、「止めている」です。後でその秘密は見ていきます。

条件3:自慢のガードコンビが切り裂けるか

中村と長谷川のことですが、彼らのスタッツを見てみると

中村 6得点(2pt 0/0 3pt 2/6) 3アシスト
長谷川 15得点 (2pt 2/4 3pt 2/6 フリースロー 5/5) 1アシスト

それぞれ十分活躍をしたと思います。

中村は「切り裂けたか」というと少々微妙ですが、開始早々2本の質の高いアシストは、渋谷のガード陣を混乱させることに成功しました。

1Q 残り8:15  ゴール下へのノールックパス
1Q 残り5:12  タプスコットへのアシスト

また、長谷川はファウルトラブルに苦しみながらも、そんなこと関係なく、5本のフリースローをゲット。うち2本は最後のファウルゲームでしたが、1本バスカン・2本はスティールからのアンスポ誘発と、どちらもインパクトが大きいものでした。
また、開始早々ボールにだいぶするなど、勝ちに対する強い気持ちを見せました。あのプレーがチームに与えた影響は間違いなく大きいはずです。さすがキャプテン。

また、特に中村がインサイドを個人技で攻められなかった分、出色のできを見せたのが、遠藤善でした。

遠藤善 9得点 (2pt 3/3 3pt 1/2) 1アシスト

実は9得点を取ったことは今シーズンすでに2回あったのですが、これを
・少ないアテンプトで
・2ptを多めに
行えたことが非常に大きいです。

割とベンチに置くのが勿体無い。田中からのスティール、欲しい所での3ポイント、コーナー3をアシスト、など、シンプルに個人能力が高い印象です。
中村・長谷川と個人能力に秀でるスターターと違う時間に出すことで、あえて得点力を分散させる狙いを感じました。

条件4:シンデレラボーイの登場

この試合、2人にシンデレラボーイが登場しました。

①鶴巻啓太
まずは、プレビュー記事で僕がいっている事をご覧ください。

彼はおそらくクレモンズにマッチアップすると予想されますが、クレモンズのターンオーバーは1つ渋谷のアキレス腱です。
ここ最近は3以上を犯すことはありませんが、開幕当初は最大7のターンオーバーを犯していました。
鶴巻がディフェンスで、クレモンズを苦しめることができれば、そもそもインサイドやスリーを攻められる前にオフェンスを終わらせる&ファーストブレークで得点を奪うことができる可能性があります。

はい、ではクレモンズのターンオーバーが何個だったかというと、

7

です。預言者かな?
さらに、このクレモンズのターンオーバーの内訳を見ていきましょう。

そう、うち6個が鶴巻とのマッチアップの際に生まれているものでした。
というか、明らかに茨城はクレモンズに鶴巻をマッチアップさせるようにプレイタイムを調整していましたね。
クレモンズ自体は21得点9アシストと一見活躍しているのですが…
ターンオーバー7個というのは、残念ながらそれを帳消しにしてしまう数字です。
クレモンズは秋田戦ではターンオーバー7個を犯しており(チームは敗戦)、これを再現できたのは茨城にとっては大きかったと言えます。

②チェハーレス・タプスコット

そしてこの男をあげないわけにはいけません。
平均得点は10.3得点ながら、この試合では31得点と大きくステップアップしました。
ただ、その内訳をまた見ていくと面白い事実が浮き彫りになります。

これはタプスコットの全得点をまとめたものです。例の如く、集計ミスで2得点足りません。許してください。何をもとに色分けしているかというと

黄色→日本人相手のミスマッチを決め切った
緑→仲間からのアシストを決め切った

となります。自分からクリエイトしているのは白の3本だけで、31得点とったプレイヤーとしては異常です。

おそらく、緑と白は、通常通りの役割で通常通り決めてきたのでしょう。実際、外しているシュートもあります。

今回違ったのは黄色の部分です。
その要因に、渋谷がスイッチディフェンスを採用したことがあります。
スイッチディフェンスは、スクリーンに対してマークマンを変更する守り方でその分ミスマッチが生じやすくなります。

具体的に見ていきましょう。

ここでは、もともとタプスコットにはホーキンソンがマッチアップしていましたが、阿部がマークマンを交代する形でタプスコットにつきました。
当然ミスマッチとなり、ここを突く形でバスケットカウントを獲得しています。

こんな感じで、イージーにゴール下を攻め込む場面が僕の集計では6回=12点分見られました。

別のシーンも貼っておきますね。

実はミスマッチ=簡単に決められる、というわけではなく、実際渋谷のガード陣は相手によっては止めます。この試合も、「止められる」という計算からスイッチディフェンスを採用したのでしょうが、その思惑を見事に打ち砕きました。

・仲間からのパスに応える堅実性
・相手の思惑を砕く個人技

特に後者が今回の試合を動かす要因だったと言えるでしょう。

なぜこのような結果となったのか?

さて、ここまで見てきて、改めて各条件の結果をまとめます。

条件1:インサイドをそこそこ止める→70点くらい
条件2:スリーが落ちる→80点くらい
条件3:ガードコンビの躍動→70点くらい(遠藤含めたら90点)
条件4:シンデレラボーイ→120点

このように、条件1~3は完璧とは言わないまでも及第点、条件4が素晴らしく勝利した、という試合でした。

条件3,4に関しては、半分は個人の力量による部分が大きいため、条件1,2で及第点が取れたのか?を見ていくと、2つの要因が考えられます。

要因1:ハードショーディフェンス

渋谷がスクリーンに対してスイッチディフェンスを採用したのに対し、茨城はハードショーディフェンスを採用し、これが奏功しました。また具体的に見ていきましょう。

ここでは、最初、タプスコットがクレモンズに対してハードショー(=プレッシャーを思いっきりかけるディフェンス)を見せます。これに対応してクレモンズはパスを逃がそうとしますが、それを読んでいた平尾がカット。見事に速攻につなげました。

解説が「同じですね」と言っているように、これに何度もやられた渋谷。スティールはされないまでも非常に苦労していました。

要因2:ゴール下を徹底して塞ぐ

上の例もそうですが、何度も日本人プレイヤーも含めてゴール下を塞ぎにいく素晴らしいプレイヤーが見られました。2個ほど紹介しましょう。

ポストアップしているトラビスにボールが入ります
確かにポストアップから得点が狙える危険な選手です
この時点で、タプスコットはウィークサイド(エンドライン側)を
開けています
開けられているウィークサイドに入り込もうとするトラビス
その瞬間、逆サイドからクレモンズのマークマンである鶴巻が
猛然とゴール下にカバーに入ります
ちょうど、トラビスが顔を上げてシュートに行こうとするタイミングで
鶴巻がここを塞ぎます。
これが早すぎるとクレモンズにパスを出されますし、
遅すぎると間に合いません
どうしようもないトラビスはトップのトロイにパスを出します。
ただ、この時点でショットクロックは残り6秒です
トロイはトップでボールを持ちドライブするもうまくいかず
残り2秒でこの状態で、まともにシュートを放てずに終わります

ここでも登場、鶴巻。彼は、クレモンズのマークマンを任されつつ、むしろこういうカバーディフェンスの方が得意なんじゃないのかなという気がします。

もう1個見てみましょう。次は平尾です。

今度は逆サイドでトラビスにボールが入ります。
今度もタプスコットはウィークサイドを開けています。
トラビスの右足よりもタプスコットの右足の方が明確に右側にある状態です。
これではそちらのサイドにはトラビスはいけません。
狙い通り、トラビスはまたウィークサイドにドライブしますが
そこにはゴール下にいた平尾が塞ぎにいきます。
平尾が見えたので逆に今度はストロングサイド(内側)を狙うトラビス
ただ、そこはタプスコットの責任範囲なのでしっかり止めます
行き場を失ったトラビス。結局、平尾がボールに手をかけ、
トラベリングを誘発します。

完璧なディフェンスでした。さすが平尾。いや、平尾先生とお呼びしましょう。


素晴らしいのは、これらのディフェンスに再現性があること、そして違うプレイヤーでできていることです。
チームとして明確なルールとしているに違いありません。まぁそれを忠実に実行する選手たち(特にタプスコットと平尾)は本当に凄いですし、何よりコーチ陣の勝利と言えるでしょう。

このディフェンスの結果、2つの結果がもたらされました。

結果1:インサイドでのイージーシュートがない

このディフェンスの結果、当然ながらゴール下に侵入できなくなります。
トラビス・ホーキンソンが止められたように。
いけても、1本目のシュートはほとんど落ちて、渋谷はオフェンスリバウンドで回収するしかなくなっていましたね。

結果2:ガードの自由が奪われる

まず、ガードのレイアップがほとんどありませんでした。
それ以上に大きいのは、ガードからスリーをお膳立てするパスが出なくなりました。

2つ、具体的な事例を見てみましょう。

1つ目は、渋谷のシュートチャートを先日のFE名古屋戦と茨城戦で比較したものです。
注目ポイントは、コーナーからのスリーとトップからのスリーのバランスになります。

ご覧の通り、FE名古屋戦は、左右のコーナーから5本ずつとバランスよく、合計60%と高確率で決めていました。実際、フリーでのシュートが多かった…。また、トップからは2本と少ないです。
これが渋谷のやりたいことなのは間違い無いでしょう。

しかし、茨城戦は左コーナーのみで右コーナーがなし。左コーナーも5本中1本成功。
トップからが9本と激増してます。

さらにこれを4Qだけで見ると、トップから4本、そして右ウィングからも3本打ってます。
これは先ほど話した「スリーを決めるしか無いからとりあえずタフなスリーを撃つ」で撃たれたスリーです。これが決められてしまったためトータルの数字は微妙でしたが、明確に渋谷の狙いを崩すことには成功しています。

2つ目の事例は、ホーキンソンのアウトサイドシュートが生まれなかったことです。

ホーキンソンのスリーは1Qに2本、4Qに2本です。
1Qはうまくフリーを作れていましたが、そこからハードショーディフェンスが強まると、ガードが自由を奪われ、いいパスがホーキンソンに供給されませんでした。
結果、4Qの無理やりスリーを2本撃つまでアウトサイドで打つ機会が消えた形です。

ちなみに、以下はホーキンソンが今シーズン最多の6本のスリーを放った川崎戦のスリー内訳です。
これを見ると、全てガード陣からのパスで打ってることがわかります。


このように、ディフェンス面での仕掛けが奏功し、インサイドでもアウトサイドでも相手の思惑を外した茨城でした。
こう見ると、確率云々以上に「思い通りやれていない感」が渋谷の中でフラストレーションとしてたまっていった感覚もありますね。

おまけ:入れ込みにくかった好プレイ

上の流れには入れにくかったのですが、素晴らしいプレイが他にもありました。
簡単にご紹介。

相手の立ち位置を見たプレイ変更

まずは鶴巻選手。ちょうど、公式が動画を出してくれてました。

このシーン、明らかに最初はタプスコットが鶴巻のマークマンであるクレモンズにスクリーンをかけるプレーコールだったと思われます。
これを先読みして、クレモンズはスクリーンにかからないようにあえて体をプレスコット側に動かしています。スクリーンを利用する鶴巻の進路を防ぐのが狙いです。
これを見て鶴巻は瞬時にプレーを変更して、ドライブを選択。
見事にレイアップを成功させました。

ちなみに、平尾も2Qの頭に全く同じようなプレイを成功させています。

トップでスクリーンプレーが行われており、船生がそこへのパスコースを切っています。
しかし、パスコースを切っているということはゴールへの道は開いている、ということで、平尾はプレーを変更。ドライブに一直線です。

日本人ガードのスクリーン


基本的に、スクリーンは外国籍ビッグマンが掛けるもの、と思われていますがそうではありません。

実はこのシーン、微妙に切り取られちゃってるんですけど、フランクスのドライブの前に中村がスクリーンをかけています。
それによってできたズレをフランクスが利用している形です。
なかなか、このプレイで中村にはフォーカスされないですが、小柄ながら強い体を生かした好プレイでしょう。

ちなみに、鶴巻も同じようにフランクスのためにスクリーンをかけてます。
こちらは動画なし。

フロイドのハードワーク

本当に素晴らしかったフロイド。
オフェンスリバウンドに果敢に絡み、ハードショーは一番うまかったです。
「頑張った」だけといえばだけなので、特に細かい話はないのですが、残りの外国籍2人が、どちらかというと器用でなんでもこなせるタイプである一方、インサイドでゴツゴツ体をぶつけてハードワークするタイプではありません。
フリースロー2本外してしまったりと「できないこと」は明確にあるようですが、一方で「今できることをチームのために全力でやる」という姿勢は、今の茨城にぴったりでした。
この選手を連れてきたフロントも素晴らしいですね。

まとめ:本当に素晴らしかったね

こんなに書くつもりなかったんですが長くなってしまいました。本当に素晴らしかったです。

・コーチングスタッフのディフェンス戦略を堅実に実行
・相手のスイッチディフェンスの弱点を突くミスマッチ攻略
・エースガード陣の奮闘
・目立たない脇役たちの小技
・新加入外国人のハードワーク

これらが見事に折り重なった、チーム全体で掴んだ会心の勝利といえます。

とはいえ、渋谷はMr.バウンスバックです。
京都相手にGAME1で惜敗しましたが、GAME2で35点差をつけています。


同じことを繰り返してはおそらく敗戦濃厚なだけに、どのような手を用意してくるのか。
ここで2連勝できれば、初めての同一カード2連戦です。期待が膨らむと同時に、渋谷のバウンスバックも楽しみにしたいと思います。


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