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ルーキーらしくない、いや逆にルーキーらしい? ともかく素晴らしい脇真大

ルーキーでありながら琉球でスタメンを貼り、代表候補にも選出された脇真大。

先日琉球vs佐賀で初めて脇のプレイをしっかり見てかなり衝撃を受けました。

異様な完成度を誇る脇ですが、そこには「ルーキーらしいよさ」と「ルーキーらしからぬよさ」が両方詰まっていました。


誰の下位互換にもならないクレバーなプレイヤー

綺麗に並ぶオフェンススタッツ

シンプルにスタッツを見ていきましょう。

プレイタイム…22:19(チーム5位)
得点…8.6点(チーム6位)
アシスト…1.5本(チーム5位)
オフェンスリバウンド…1.1本(チーム5位)

と、オフェンスの主要スタッツを見ると、いずれもチーム全体で5位または6位の数字です。

「スリーを担う岸本」「リバウンドを担うクーリー」のように突出した存在ではありませんが、「全部において脇より優れたプレイヤー」というのが存在しにくいタイプの選手です。俗にいうオールラウンダー。

ただ、脇が明確に与えられている役割もあります。

リーグ最高レベルのアウトサイド系インサイドフィニッシャー

それは2ptでの得点です。

以下はリーグ全体のSGで、2ptでの得点が多い選手を上から並べたものです。ここで、ルーキーながらリーグ7位と素晴らしい成績を誇っています。

確率も上位の選手には及びませんが、悪い確率ではありません。
そもそも5位までは外国籍選手と代表選手が並ぶ上位陣。いわゆるチームの「エース」たちです

6位以降、なんか化け物のような確率の中東以降、完全にチームの「エース」ではないロールプレイヤーたちが並んでいますが、そこで争うと第2位で、最高級のアウトサイド系インサイドフィニッシャーとなってます
ていうか中東は、なんだこれ。すごすぎだろ。

チームではアウトサイドも役割の1つ

実は、スリーが33.3%というのもチーム3位です。もちろんアテンプトは少ないのですが、メインのシューターたちのスリーにまだ当たりが来ていない中で高確率です。

また、スリーも分布を見ると、その傾向がわかります。せっかくなので同ポジションの小野寺・松脇と比較してみましょう。

脇は左のコーナーからしかほとんど決めていません。
ただ、その左のコーナーは54.5%と非常に高確率。
そして、すごいのは左のコーナーが11本と明らかに「そこから打つようにしていること」です。

そして、松脇と小野寺にウィングやトップからのシュートを任せる。岸本やヴィックローも含めてかな。

これはチームの戦術の効果も大きそうですが、ここまでルーキーがクレバーにプレイできているのは素晴らしいです。


このように、突出した能力があるわけではありませんが、うまく自分の能力を戦術的に使うことで、どの部門でも高い数字を出しているのが脇という選手の特徴です。

バランサーとしてぴったりなプレイヤー。

実際のプレイで鮮明にわかるクレバーさ

スタッツだけではなく実際にプレイを見てみると、そのクレバーさがわかります。フランクスの記事とほぼ同じシーン。

3つのプレイの使い分け

彼のすごさは、主に3つのプレイを、状況に応じて使い分けているように見えることです。

①コーナーで待機してスリー

右のローポストでボールを持つクーリーですが逆サイドのコーナーに脇が広がっています。
そこにスキップパスが出て見事コーナースリーをゲットした脇。

先ほどお見せした通り、左コーナーから打ちたい脇。しかもオープンなシュートを選んで適切に打っている感じがしますね。

②アウトサイドからのカッティング

このシーン、最初は左のコーナーにいた脇ですが、岸本のドライブに合わせてゴール方向にカッティングしています。
そして、そのままシュートに行けなかったので1回キックアウトして今度は右コーナーへ。
再び、岸本のドライブにゴール方向へのカッティングで合わせてイージーなシュートを決めました。

このように、自分からドライブするエースムーブではなくて、エースの岸本などに合わせてカッティングすることでインサイドを攻略しているようです。
なお、岸本のような身長が低い選手にとって、ドライブ後にキックアウトするのは結構難しいです。距離が離れて、ディフェンスの手も引っかかりやすいので。河村でも長年の課題。
だから、近くにカッティングしてくれた方がパスは出やすい。
一方で、タイミングを間違えるとゴール下のスペースを消してしまうので見た目よりも難しいプレイですが、それを簡単に実行しているように見えます。

こちらは大阪戦。オフボールのカッティングではないのですが、カウンタードライブ。ディフェンスの裏をとりにいくという意味では同じかな。
そして、シンプルにゴール下でのフィニッシュ技術が高いです。小さくクラッチを入れて、ブロックのタイミングをずらしています。

③エースムーブ

クーリーのスクリーンを受けてドライブからのシンプルなレイアップ。

なお、このシーンですが相手が金丸というディフェンスに強いわけではない選手です。
同時に、ヴィックローや岸本というハンドラーエースが出場していない時間帯。
相手を見ながら、かつ必要に応じてこのようなエースムーブをして得点を生み出しているのであれば非常にすごいことです。

こちらは逆にスターターの時間で。
ここで注目なのは他のプレイヤーの立ち位置。
両コーナーに岸本と小野寺、ウィングにはヴィックローとしっかりスペースを開けつつ、クーリーが走り込んでます。左側にレイアップが外れたらクーリーがオフェンスリバウンドとってそう。
期待に応えた脇もですが、それをお膳立てするチームオフェンスも素晴らしいです。


このように、
コーナーまでボールが届きそうなとき→コーナー待機
コーナーまでボールが届かなそうなときかつインサイドが空いているとき→カッティング
ハンドラーが足りないとき・変化をつけたいとき→ボールハンドラーとしてドライブ

というプレイを使い分けているように思えます。

これは佐賀・大阪との試合を見ての感想なので、ちょっともう1試合。シーズンハイの17得点を挙げた広島戦を見てみましょう。

1Q 残り8:15 岸本に合わせてカッティングでレイアップ
1Q 残り5:53   ヴィックローのドライブに対して左コーナー待機してオープンスリー
(2Q 残り2:34  岸本のパスに合わせてトップからドライブレイアップ)
(2Q 残り0:07  岸本のドライブに右コーナー待機でオープンスリー)
3Q 残り8:02   クーリーがウィングでボールを持つ中逆のウィングからカッティングでレイアップ
3Q 残り6:43   時間がないところで中村のコンタクトを受けながらフローター。エンドワンも獲得
3Q 残り4:15  ファーストブレークから岸本のドライブに合わせてレイアップ
4Q 残り0:17  コーナーのドライブからエンドワン。ガベージタイム。

とりあえずFGだけ抜粋しましたが、やはりコーナースリーとカッティングが目立ちます。コーナースリーも両方オープンでしたが、左は決めて右は外しました。

あと、この試合でもドライブしていたので、4つと分類してもいいかな。
また太線にしたように、欲しいところでは決め切ってくれる。

明確にコーナー待機とカッティング・ドライブを使い分けています。

そして、岸本との相性の良さ、岸本の素晴らしい先輩ぶりもひかりますね。

良いチーム、良い師匠

これは脇が素晴らしいのはもちろんですが、桶谷HCを中心としたコーチ陣が作り上げているオフェンスなのでしょう。そのルール・原則を脇がしっかりと守っている形。

そして、そこににはいい師匠がチーム内にいるように思います。

そう、小野寺です。

コーナースリー待機とカッティングに関しては小野寺も同じ役割を担っています。
小野寺には、脇と違ってウィングからのスリーもあって、でもエースムーブがない感じかな。

ヴィック・ローのミスマッチでディフェンスが集まったところで逆サイドで小野寺がコーナースリーです。

そしてカッティング。小野寺も岸本に合わせてます。

脇が昔からこういうプレイヤーだったのかはよく把握してないのですが、
・チームがしっかりオフェンス戦術を持っていること
・チーム内にプレイ面・人格面でお手本になれるプレイヤーがいること
・脇自身の学ぶ姿勢
があってこその素晴らしいプレイなのだと思います。

随所に出るルーキーっぽい可愛らしさ

一転して、極めて主観的な内容ですが、これも大事なように思います。

このプレイのあとの表情を見ていても、楽しそうですよね。

そして、自分がアシストした後は必ずと言っていいほど相手を指差しているように見えます。
最後、一瞬しか写りませんが、ここも岸本に指を差してます。

(関係ないけど、サムネに牧を持ってくるのは琉球の愛を感じていいですね)

ルーキーながら非常に重用されている脇。
他の選手がそれを僻んだりする、とは思えませんが、早くチームに溶け込んで、信頼を掴むためにはシンプルな人格も非常に重要な要素です。

楽しそうにプレイし、先輩へのリスペクトも見える可愛らしさは、ルーキーらしいと言えばルーキーらしい。

そういう要素も彼の成長と活躍に一役買っているように思います。

琉球好調の要因

こう見ると、今季も強い琉球のポイントが見えてきます。

それは多彩なオフェンスです。

非常にバリエーションが豊富。

岸本・ヴィックローを中心に、他のプレイヤーが合わせる形を持ちながら、一方で、脇がハンドリングしてオフェンスを担う時間も作るなど、的を絞らせません。

また、いかに脇が素晴らしくても、ここまで早く適応するには、チームの戦術自体がしっかりとしている必要があります。

非常に再現性がある多彩なオフェンス。

チームとしての成熟度の高さには感服するしかありません。

日本代表になれるのか?

得意なことをうまく組み合わせている脇は、見事代表合宿に招集されました。
まだ若いだけにその未来には期待がかかりますが、彼は日本代表になるのでしょうか?

予想に意味はありませんが、少なくとも解決するべき課題が2つあるように見えます。

①左コーナー以外のスリーの確率

左コーナー:54.5%
左コーナー以外:15.3%
と、これほどわかりやすいこともないくらいわかりやすいです。

ただ、コーナーからシュートがうまくなっていく、というのは実はシュートの上達ステップあるあるです。
宇都宮の鵤とかはそうでしたね。ここ2年はなぜかシュート力が落ちてますが…。

また、フリースローも70.6%と悪くないですし、シンプルに練習がそこまで回ってない感じを受けます。

確実に成長してくれそうな部分だけに期待です。

②ディフェンス

ディフェンスも特段悪いわけでもないのですが、まだ信頼は勝ち取れてないように思います(金丸・ガルシアのマッチアップ担当は基本的に他のプレイヤーがしていたりと。ポジション的にはガルシアとかはもう少しついても良かったよね)。

これも小野寺の背中を見たいところ。岸本も含めて明らかにここ数年でディフェンスが向上しているように思います。

脇はそこまで身体能力が高いわけではないので、ディフェンス同様、知性で守っているように見えます。
そんな中で、以下のシーンに脇のディフェンス面での2つの課題が示されているように思います。

①フィジカル・スピード
これは身体能力的な部分なので仕方ない部分もないのですが、安藤にシンプルに抜かれて前に入られています。
この試合、岸本を安藤につけるわけにもいかないので安藤担当でしたが、割とコテンパンにされていました。
安藤がすごいのは間違いないのですが、一方で代表選手となるのであれば、安藤をある程度止められないといけないのも事実です。

②経験値・知性で上回る相手に後手に回る
先述のように、知性で勝負するタイプであるため、経験を積んで知性もある選手には後手に回ってしまうのかもしれません。安藤は全てを兼ね備えているな。百戦錬磨。
このシーンでは、一瞬の油断をつかれました。知性で勝負するのであれば、そこは誰にも負けてはいけないポイントになりそうです。


この2つの課題は最低限のラインかなと思います。
加えて、難しいスリーは不要ですが、少しドリブルからのスリーも選択肢としてあるとベターですかね。

まとめ

普通に考えたら、新人賞の活躍をしている脇。

限られた能力を最大限使う知性とともに、その愛されるキャラクターやスポンジのような吸収力から、これから先の成長の可能性もビシビシ感じます。

こういうインテリジェントな選手は大好物なので、今後も追っていきましょう。






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