自民党総裁選の結果
29日の投開票によって自民党の新しい総裁は岸田文雄氏が選出された。本命と見られていた岸田氏は決選投票にはなったものの下馬評通り手堅く票を集めた結果となった。
河野太郎氏は決選投票までは進出したものの、1回目の投票において国会議員票で高市早苗氏に大差をつけられる等当初の目論見を大きく外し、惨敗と言ってよい結果となった。また野田聖子氏は事前の想定の範囲内であっただろう。
一方高市早苗氏は安倍前首相の後ろ盾もあり、想定よりも票を獲得する事ができたのではないか。但し、この先も安倍氏の威光がどこまで続くのかは未知数であるし、自民党以外の熱狂的な安倍支持層であるネット保守(ネット右翼)層以外からの支持は見込めないのではないかという印象を持った。
岸田氏は自民党の中では比較的リベラルと見られており、実際に今回の総裁選においてもその主張はリベラル寄りである様に感じられた。ただし「新自由主義からの脱却」を目指すと言うが、果たして本当にできるのかは疑問符が付く。もし本当に目指すのであれば今まで自民党の中枢に居た事との整合性が取れないのではないか。
本当にフリーハンドで岸田氏が腕を振るう事が出来る環境なのであればもしかしたらという期待も無きにしも非ずではあるが、現実には非常に難しいと言わざるを得ない。
思えば平成になってからの30年余りでリベラル派の自民党総裁は、宮澤喜一氏、河野洋平氏、谷垣禎一氏、そして今回の岸田氏の4名であるが、過去の3名は野党転落および野党での総裁という苦境の時代の総裁となっている。今回の岸田氏についても新型コロナ対応、安倍政権から続く政治とカネの問題等自民党の支持率が下がっている中での登板となっている。
リベラル派が苦境の中で総裁(総理)になったのはめぐり合わせが悪いといった運・不運に関わるものではなく必然であったと考えられる。その直前までの議席数に頼ったタカ派路線や、気の緩みからくる金権政治に代表される不祥事が続いたことによって支持率を下げ、それを挽回することを期待されてリベラル(ハト派)が選出された背景があるからである。
しかしながら無党派層やよりラディカルなリベラルは野党へ流れる事が多いため結果として自民党ハト派が党勢を挽回する事ができず、反動の反動としていわゆるネオリベ、ネオコンと言われる保守的な思想信条を持った新自由主義がより強い形で台頭する結果となっている。
果たして岸田氏の登板により自民党はどの様になっていくのだろうか。
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