ちょっと慣れてきた施設看護師は読んでみて!「ボクはやっと認知症のことがわかった」レビュー
こんにちはDash(@DashEnglish1)です。
今回レビューする本は「ボクはやっと認知症のことがわかった」です。
この本の特徴は著者の人生を賭けて書いたといっても過言ではないほど貴重なものです。介護施設で働いてる看護師として興味があったので読んでみました。
認知症ケアをされてる皆さんにとっても普段なかなか聞けない新しい発見があります。
この本を読もうと思った理由
看護師ならほとんどの人が「長谷川式簡易知能評価スケール」を見たことありますよね?
入院時や転院時にルーティーンの一環として使う認知症のテストです。
この本の著者は、そのスケールを作った長谷川先生。つまり認知症治療における大家が出版された本なんです。
でも、それだけだったら読みません。
すごいのは長谷川先生自身も認知症になったと公表して本人の言葉が綴られていることです。
これまで治療する側として数々の文献を発表されてきたと思いますが、そんな人が患者としての視点も追加して本を出版するのはおそらく世界で初めてでしょう。
だからこそ興味を持ちました。この本の貴重さは他の本には到底及ばないものです。
この本がすごいと思った3つの点
「ボクはやっと認知症のことがわかった」には素晴らしい点が沢山ありましたが、その中からこれはと思ったものを3つ紹介します。
認知症を公表する勇気
認知症を公表するのは2種類の勇気が必要だったと思います。
まずは認知症と向き合う勇気。
確定診断された時点でとても落ち込むでしょう。なぜなら誰よりも認知症のネガティブな側面や、行きつく先を心得ているからです。
発症して最期までの過程をイメージできて怖くないことはないでしょうから。
もう1つは社会と向き合う勇気。
社会が持っている認知症に対するスティグマ。例えば「何もできない人」というような人格の否定があるのは事実ですから。
認知症の大家として今まで築き上げた権威が傷つく可能性への恐怖も少なからずあったと思います。
これら2つの勇気を併せ持ち、影響力がある人が認知症を公表して病気の経緯や思いを語ることで同じ境遇の人の気持ちを代弁している。
こんな役割がある素晴らしい本だと考えています。
看護師の問題を見つけた
看護師日常をケアする者の視点から読んでいると気付いたことがあります。
それはボク自身がステレオタイプを持って患者さんを見ていたということ。
看護師は患者さんの「できない部分」に目が行きがちです。何が問題かを理解し、それをケアするのが仕事だから。
認知症の患者さんが入院してくると「こんな感じだろう」とあらかじめ予測をつけて関わり始める。これはある意味、職業病で患者本人を見ていません。
本書の中でも語られていましたが認知症になったからといって、いきなり人格が変わるこちはありません。だから一律に「認知症患者」として扱うのは失礼ですね。
そんな社会と看護師やケアに関わる人も含めて認知症に対するスティグマ・理解不足を問題提起している部分は今後の役に立つと思います。
免許返還についても取り上げている
高齢者が自動車事故を起こすことがよく問題として取り上げられています。このことについて僕がどうこう言う気はありません。
しかし、これも車好きの著者が自ら
高齢
認知症
知名度がある
この様な立場にある人としての選択を表明したのも社会に影響を与えるだろうと思いました。
車を運転できないと生活が大変になるのは目に見えています。
それをサポートする制度が十分ではない社会に生きて自ら決定を下した行動は称賛です。
この本のレビューを読んで思う
アマゾンのレビューに「認知症患者を支える患者の苦労が全く描かれていない」というものが多くありました。このレビューは当たっています。
ボクも看護師なので働いていて大変さは理解できます。
しかしこの本の趣旨とはずれている指摘かなとも思いました。この本は認知症専門医の認知症体験談なのでご本人の視点から描かれるのは当然かなと。
その反面、専門医ならご家族の大変さをご存じのはずですが、あまり触れないのも少し違和感を感じました。
今後も改革が必要なこと
医療界に改革を!という感じの意見ではなく、大変なんだろうと思ったことです。
パーソンセンタードケアというのはとても良いアイデアだと思います。
ボクが看護学生だったことから学んでいました。もちろんオーストラリアでも習って、現場でも聞きます。最初に聞いたのはもう15年以上も前ですね。
だけど理想に現状が追い付いていないのが事実。
これはどこまでやればパーソンセンタードケアと言えるかという定義の話にもなるかもしれません。その人に必要なケアを手配すればいいわけではないからです。
ボクの目から見たパーソンセンタードケアはまだまだ達成できていない。
原因は人手不足です。現場は働き手が足りてなくて日常のケアさえままならない状況。
理想がなかったら進むべき方向も分からなくなるので大切ですが、現場の問題とのギャップが埋まるのをずっと待っています。
人手不足とケアの質は切っても切れない関係にあり、今後の改善に期待しています。
他にも著者の口からどのような現状が語られているのか気になった方は読んでみてください。