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ふつうのマヨネーズ

「推しが燃えた」

たまには真面目な食の話しも。
代々木上原にあるミシュランのレストラン、
sioの鳥羽シェフが作った「ふつうのマヨネーズ」が炎上している。

炎上内容について気になる方はTwitterにて「ふつうのマヨネーズ」で検索して確認してみてください。

ボクはsioさんにも行ったことがあるし
鳥羽シェフの発信もよく見ていて
飲食業界にいた身としては心が痛い。

食は人を幸せにするために存在するので。

この広告が大手食品メーカーのマヨネーズを批判しているということで炎上している。

この点についてかなり個人的な見解をまとめてみました。(Twitterでこの炎上の時系列を確認して頂いてからの方が分かり易いかもしれません。)

1.プロダクトではなくて価値変化。
鳥羽シェフが「ふつうのマヨネーズ」と冠した商品。製品の有能さを語るならネーミングは「贅沢なマヨネーズ」や「sioの本当に美味しいマヨネーズ」みたいな感じでも良かったはず。根底の意図として大量消費や低価格消費を変えていかないと業界が良くならないという思いがあったのだと思う。
高くて良い食品を普遍的に沢山の人が楽しむ世界を作りましょう。そんなメッセージだったのだと思います。

2.ふつうという感覚
現代においてふつう(広く遍く)という物が存在しなくなってきていると感じる。
社会的にふつうな物(一般常識とか)と個人的にふつうな物(家訓とか)は違う世界観。
社会的なふつう(大手食品メーカーのマヨネーズ)と個人的なふつう(sioのマヨネーズ)を対立構造にして社会的なふつうを塗り変えたいように見えたことも炎上の火種のように思います。
社会が個人的になってきているからこそ、多様な存在と共存することが大切で、広く遍くじゃなくて良い。
個人的なふつうとは物凄いアイデンティティ。
そのふつうを愛してくれる人は必ずいて、
そのふつうを嫌う人も必ずいる。

3.D2Cの捉え方
OEMで作られるD2Cブランドを開発する最大のメリットは売り上げにある。店舗以外で売り上げを生み出していかないと飲食業は理想を追えない。
だから鳥羽シェフがD2Cブランドを開発するのは必然だし、これからのロールモデルになるはず。

鳥羽シェフのメッセージである「幸せの分母を増やす」というミッション。D2Cで店舗以外の売り上げを生み出せば料理人たちへのリターンが大きくなる。そうすれば働き手の幸せが増える。働き手が幸せになれば、それが仕事に還元されて消費者も幸せにも繋がるはず。
このサイクルがモデルになる。

売り上げがメリットではあるが、買ってもらうには価値ある物を作らなければ売れない。
お客様が買いたくなる価値が、鳥羽シェフの「ふつう」という新しい価値観を手に入れることだったのか。その点も少し引っかかったのかも。
多分、消費者が買う理由はお洒落で、美味しくて、自然で、丁寧に作られていて。みたいなことやsioのファンだから応援したい。みたいなことだと思う。そこを直接的に表現しなかった。

今回の広告が、幸せの分母を増やすという点でお客様よりも業界に向いているように見えたので、エンドユーザーからの批判が出たのかなとも推察した。作り手と買い手のD2Cの捉え方の違い。
本当はこの溝を取り払ってグッドリレーションを作り出すことが広告の役目だったんだろう。

4.レストランが不安を内包する。
レストランにとって安くて美味しいは敵ではない。が、不安要素ではあるのだと思う。
大手企業の努力で安くて美味しい物が溢れる。すると、家で安くて美味しい物が食べられる。なので、美味しいという"味"に価値を置くとレストランの需要が無くなる。という不安。
安くて美味しいを叶えるには大量生産、大量消費が必要。安くて良いという物は薄利多売の"多売"がポイントになる。
それに比べて、レストランは高くて良い物だろう。そうなると、安くて良い物の「良い」と高くて良い物の「良い」の部分が同じであれば安価な方を消費者は選択する。
高い金額を払うからこそ手に入る「良い」部分が何なのかを認識できないと選ばない。
これを明確に言語化できないと作り手も自分が何の価値を生み出しているか分からなくなって怖いと感じてしまう。分からないことは不安に繋がるから。

料理人にとって美味しい物を作ることが絶対的な正義なのだけど、美味しいをもっと細分化しないと、家の中にも美味しいはあるから。

そのような不安が対立構造の広告になって、攻撃するようなコピーに感じさせたように思う。


5.sioに似合わない。
今回、広告面だけでなく、値段が高いという批判もある。しかし、鳥羽シェフは決して騙して劣化物を高く買わせている訳じゃない。
そこは絶対に間違いない。
良い物を売る。ただ、美味しいだけじゃ金額的価値の差別化としては弱い。
そこで、価値を際立たせるために、「手間」や「ナチュラル」や「素材」を謳う。
伝えたいことは、上品で繊細な旨味のあるマヨネーズである。そんな感じだと思います。
ただ、その要素を強調するために書いたコピーが添加物や大手企業を連想させて対立構造を作った。

そもそも、対立構造がsioの理念に合わない。
「幸せの分母を増やす」
幸せって争うことでは無いと思うので。
sioの理念と整合性が生まれなかったんだと思います。良い悪いではなくて「似合わない」。

エシカルやサスティナブルの思想はボクも好きですし、目指す方向性であるはず。
ただ、その思想が大量生産大量消費や食品添加物、トリュフや雲丹などの高級食嗜好などへのアンチ思想に繋がり表面化してしまったようにも思う。このアンチ思想は業界の中の人たちと消費者とかなりズレているかもしれない。

以上、ここまでがボクの感じたことなのですが、今回の件についてボクは鳥羽シェフを応援しています。飲食業界を良い方向へリードしてくださる方だと感じているので本当に応援している。

ただ、今回の炎上は今後の食の業界について考えさせられる点も多く、学ぶことも多い。
ステマ疑惑もありますが、ボクは全然良いと思う。スポーツ選手がNIKE着てるのと一緒っす。むしろ、良い関係を築けてないとできないので。
有名な方たちもお金じゃなくて自分が紹介するもの選んでますよ。紹介する人たち見れば分かる。
だからこそ、逆に信頼だと思う。

ふつうのマヨネーズの炎上もあって多分、
商品は売れてると思う。
売り上げ至上主義の人にとっては、炎上したけど売れたからいいじゃん。
でもレストラン(sioの皆さん)は人を幸せにしたかったはずだし、笑顔が見たかったんだと思うから炎上して悲しい気持ちがあると思う。
飲食人ってそういう生き物だから。

sioさんの発信を見ていると、「ふつう」はシリーズで、今までのふつうを再定義しようという商品開発とのこと。この件でシリーズが終わりにならず、まだまだクリエイティブを続けて欲しい。

どちらにせよ
色んな美味しいや体験、料理、素材、食にまつわる物があって、それが人の幸せを増やしていると嬉しい。食が好きだからこそ。

食は世界を幸せにする。
それは間違いないですよね。
鳥羽シェフ。

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