矢倉沢往還を走る その1 伊勢原~南足柄
矢倉沢往還は、東海道の脇往還として、江戸から内陸部を進み、足柄峠を経て、沼津まで至る街道です。現在の246号線とほぼ重なります。
以前走った青山通り大山道は、この矢倉沢往還の前半に相当するので、大山道との分岐点をスタート地点として、その先の沼津を目指しました。
その初日として、伊勢原から南足柄市大雄山駅までを走った行程を紹介します。
当時の様子がそのまま残っている場所がある一方、消えゆく古道の姿も垣間見れましたので、その状況もお伝えできればと思います。
伊勢原~秦野 10㎞
伊勢原の平野部を進み、善波峠を越えて秦野市へ。
相鉄線、小田急線を乗り継いで伊勢原駅に9時前に到着。今まで縁が無かった伊勢原駅に、3週連続で乗り降りするとは。おかげでトイレの場所とか迷わず行けるようになった。
大山道との分岐点に移動し、9時すぎにスタートする。
スタートしてすぐに246号線に入るが、途中遠回りの旧道に入り、鈴川に掛かる鈴川橋を渡る。当時は田畑が広がり、山裾を街道は通っていたようだ。
再び246号線に合流して、すぐ旧道へ分岐する。246号線は掘り下げて勾配を少なくしている。
大住台の住宅地を抜けて、古道に入る。路面の矢印はマラソン大会があったのか。
ほどなく、道は舗装路だが古道の景色を残す区間に入り、気分が上がる。
開けて眺望の良い場所もあり、天気が良いのもあって清々しい。
未舗装の林道区間に入り、ますます古道の姿がそのまま残っている。
もともとはこのまま善波峠を越えるルートだったが、峠目前はラブホが立ち並ぶエリアになっていて、旧道は途絶える。しかたなく、善波隧道を抜けた先から戻って善波峠を目指す。
善波峠には、今まで見た中で一番大きな切通が開かれていた。わざわざ戻っても十分一見の価値がある峠道だ。
善波峠を抜けて秦野市を見下ろす高台から富士山も楽しめる。
善波峠前までの旧道区間は、古道の趣を残しながら気持ち良い区間だったが、最後の峠に至るルートが途絶えているのが非常に残念だし、もったいないと思った。
旧道からそのまま善波峠に至る遊歩道があれば、完璧な古道体験が得られて、訪れる人がもっと増えるのでは。
秦野~松田 12㎞
秦野市を横断し、山間の古道を進み松田町に至る。
246号線から離れて、秦野市市街に向かう。
秦野市に入ったのは今回が初めてだが、富士山や丹沢の山塊を間近に見れるのがうらやましい。
渋沢駅を過ぎて、徐々に登坂が始まるが、急峻な峠越えではない。
温室栽培の施設を過ぎると、山中に入り、その先に人家はない。
途中車止めもあり、車も入れないため、徐々に道が荒れてくる。
未舗装区間に入る。ここも古道がそのまま残っている。
徐々に藪に覆われ、通行できなくなる不安を感じ始めるが、古道の先に小田急線の踏切があり、ちょっと安心する。
でもその先はさらに藪が濃くなり、道がわからなくなった。
藪をかき分けて進むと川にたどり着いた。対岸に246号線に上がれる階段を見つけたので渡河地点を探す。
先人の探訪記録によると仮橋があったようだが、流されたのか見つけられなかった。
飛び石を使い、なんとか最小限の水没で川を渡る。
階段を上がり246号線に合流すると、矢倉沢往還の標識があったのでルートは間違っていないようだ。
この区間も、古道がそのまま残っていて気分よく進めた。
最後は藪に覆われていたが、途中各所の標識で見かけた「矢倉沢往還道を甦らせる会」の方々が整備をされていて、何とか通れる状態が維持できているのだと思うので感謝です。
通る人が多いと自然に道は甦ると思うので、古道に興味がある方、ちょっとした探検気分を味わいたい方は訪れてみてはいかがでしょうか。
松田~南足柄 8.7㎞
松田町、開成町を横断し、南足柄市に至る。酒匂川とその支流から形作られた平野を進む。
町中に降りて、松田町に入る。
小田急線の新松田駅と御殿場線の松田駅の間を抜ける。
ここを初日のゴールにしてもよかったが、この後の足柄峠越えのアプローチを短くするため、もう少し進む。
進行方向に箱根の山々が迫る。
あそこを越えると思うとわくわくするが、当時の旅人には気が重くなる場所だったかも。
河原の土手で昼食を取りながら休憩する。富士山と矢倉岳がくっきりと見える。
田んぼの脇を進む。この辺りで田んぼを目にするようになる。
丹沢から流れるきれいな支流が、そこかしこの道沿いを流れている。
南足柄市の平地に延びている丘陵地を越える。
丘陵地の坂を下る。矢倉岳がだいぶ近づいた。矢倉沢往還は、その麓を通る。
大雄山駅の入口の交差点「竜福寺」に14時前に到着し、本日のゴールとする。大雄山駅まで歩いて、伊豆箱根鉄道、JRを乗り継いで帰宅する。
距離は短いと思っていましたが、引き返したりして実質の走行距離は30㎞に達しました。
古道がそのまま残っている区間が2箇所あり、それを1日で満喫できたのは、ぜいたくな区間でした。
それでも、訪れる人が少ないためか、ところどころ道が消失していたのはもったいないと感じました。
地元の方々の努力だけで維持するのは大変だと思うので、古道に興味を持った人たちが訪れて歩くことにより、道を甦らせることができるのではないかと考えます。
そのためにも、古道の魅力を少しでも伝えられていれば幸いです。
次回は足柄峠を越えて駿河の国に入る予定です。