【ChatGPT(3.5)で英語は学べる?】添削を頼むか作ってもらうか?
前回は、ChatGPTに日本語を英語に翻訳してもらいました。今回は、学生の書いた英文のビデオ原稿を添削して、修正してもらうとどうなるか検証します。
ChatGPTにビデオ原稿の添削を依頼する
テーマは、A day in the life of a first-year student (大学1年生の1日)。日本の大学生がどんな1日を過ごしているかを紹介するビデオの原稿です。ビデオでは、学生は画像や映像を見せながらセルフィーで撮影、あるいは、ペアの相手に撮ってもらいながら話します。
授業では、いろいろな海外の大学生たちのA day in the life …のビデオ※1を見て、どんなビデオを作るのかイメージし、基本的な表現や文法を提示して、それを元に原稿を作ります。習慣や状態の説明なので、文法は主に現在形を使います。
添削前の学生の原稿はこれです。(過去に実際に学生が書いたものを一部アレンジしています。)
この原稿を提示して、
何も説明せず、修正だけ依頼
「"A day in the life of a fist-year student"というタイトルのビデオのシナリオを書きました。 英文を修正して、なぜその修正をしたか日本語で説明してください。 まだ英語を学んでいるところなので、修正はできるだけシンプルでわかりやすい表現でお願いします。」という説明をつけて修正を依頼
2と同じ内容を英語で説明して、英語での回答を依頼
という3つのパターンでどういう答えが返ってくるか検証しました。
すべてのパターンの修正文と説明は以下の添付ファイルの通りです。もちろん、何回も同じ質問をすると、ChatGPTはその都度違うことを言ってくるので、これはたまたま出てきた一つの回答例ということになります。
修正についての説明は抽象的、間違いも多い
今回特に知りたかったのは、ChatGPT(3.5)が修正した理由をちゃんと説明できるのかという点でしたが、「こちらが期待したような説明はほとんどできなかった」というのが結論です。
英文の修正については、「文を整理し、より自然な表現にしました」「文法的な正確性を持たせ、文を簡潔にしました」「文法的に正確な表現に修正しました」"Simplified the expression to make it clearer" "Corrected the grammar" "Clarified the subject and the verb" "〇〇 is the correct phrase"など、日本語でも英語でも抽象的だったり、修正が正しいと断定したりするだけの説明がほとんどでした。
"I get up 7:30 o'clock" は、今回はすべてのケースで"I wake up at 7:30"と修正されています。でも、「o'clockは不要で..」"Removed 'o'clock' as it's redundant"と、なぜ不要なのかの説明はなし。そして、「"wake up"は"get up"と同義語でシンプルな表現」とか、"'Wake up' is the correct phrase"など、get upをwake upにした理由もわかりません。そもそも、get up(起床する)でも、wake up(目覚める)でも意味はほぼ同じなので、余計な修正はいらない部分だと思います。(何度も聞くと修正しない時もあり)
"I have ten minutes all ready"は、学生は「準備する時間は10分しかない」というつもりで書いていて、1と3ではそのように理解されたようですが、2では"I already have ten minutes"という修正文が示され、「"already"を使って時間の既存性を示します」と、説明も意味不明です。
"There is a first period"の文については、2の"a first class"は、意味的にも文法的にもちょっとおかしいと思いますが、「文法的な正確性を持たせ」たと言っています。また、"I have a first-period class"と主語をIにしたのは、3だけ。私としては、There is…は文法的にはあっていても、自分が1時限目の授業を取っていることを話すときは、こっちの方が自然だと説明して欲しかったのですが。
"I ate bento at the outside"や"I worked McDonald's"では、過去形を使っていることと場所を表す表現についての指摘を期待しました。毎日のルーティンを話しているので、動詞は現在形が普通ですが、修正していないケースもあり、修正していても「仕事の現在形を表現しました」と、説明はよく意味がわかりませんでした。
1文ずつ修正を頼めば丁寧な説明もできる
結局、学生の意図を理解して、文法、意味の両面から修正、説明してもらうのはChatGPT(3.5)では限界があるということだと思います。
ただ、今回、原稿を丸ごと投げて修正を依頼しましたが、1文ずつ聞くともっと説明は丁寧になります。
例えば、
学生はもともと、二度寝ならぬ三度寝をしてしまって1限には遅刻しがち、と言いたかったのですが、そのようには受け取ってもらえなかったようです。ただ、そのことは明確に説明されているので、どうしてこの修正文になったかもよくわかります。
また、同じように"I worked at McDonald's"を直してもらうと、
という期待通りの答えが帰ってきました。
ところが、"I get up at 7:30 o'clock"はどうかと聞いたら、
7:30 o'clockは"文法的に"正しいとしても、○時〇分の後には使わないのだということは、このあと、本当にこれでいいんですかと繰り返し聞いてもなかなか説明してもらえませんでした。
原稿作成は任せてよりよい学びを目指すべき?
ところで、ChatGPTは英作文は得意です。ということは、自分が書いた今ひとつ意味がわからない英文を添削させて、さらに訳がわからなくなるより、最初から書いてもらう方がずっと効率的ではあります。
そこで、こんなお願いをして、A day in the life of a first-year studentの原稿を書いてもらいました。
なかなかいい原稿です。こちらの意図をしっかり理解しているし、最後にビデオ撮影のアドバイスまでしてくれました。この方法なら、日本文の作成を含めて、5分以内に課題完了です。
では、教員として、この課題のやり方を推奨(容認?)するのかどうか。ChatGPTに全部書かせたら、学生たちの学びにならないんじゃないか? というのは最初に浮かぶ疑問です。自分たちは教科書で文法を覚えて、辞書を引いて、自力で英文を読んだり書いたりしてきたので、そうしないと英語力はつかないと、なんとなく思い込んでいるかもしれません。
でも原稿を作るのに何時間もかけるのと、英語原稿作成は5分で片付けて、あとは原稿を覚えて、話し方の練習をして、ビジュアルや演出を工夫してより伝わるビデオを作ることに時間を使うのとどっちがいいのか。自力で原稿を書いたら英語力がついて、ChatGPTに書いてもらったら学びにならない、ということではないでしょう。
教員は、ChatGPTに英文を添削してもらうことを学生に勧めるよりは、ChatGPTの作った原稿から、学生たちがどう学びを深め、広げられるか、その方法を考えることに時間を使うべきかもしれません。次はそのことについて検証してみたいと思います。
※1
A day in the life …の参考に見るビデオの例
Student life at FLC: A day in the life of Michael
Student life at FLC: A day in the life of Michaela
A day on the Hilltop