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【ChatGPT(3.5)で英語は学べる?】添削を頼むか作ってもらうか?


前回は、ChatGPTに日本語を英語に翻訳してもらいました。今回は、学生の書いた英文のビデオ原稿を添削して、修正してもらうとどうなるか検証します。

ChatGPTにビデオ原稿の添削を依頼する

テーマは、A day in the life of a first-year student (大学1年生の1日)。日本の大学生がどんな1日を過ごしているかを紹介するビデオの原稿です。ビデオでは、学生は画像や映像を見せながらセルフィーで撮影、あるいは、ペアの相手に撮ってもらいながら話します。

授業では、いろいろな海外の大学生たちのA day in the life …のビデオ※1を見て、どんなビデオを作るのかイメージし、基本的な表現や文法を提示して、それを元に原稿を作ります。習慣や状態の説明なので、文法は主に現在形を使います。

添削前の学生の原稿はこれです。(過去に実際に学生が書いたものを一部アレンジしています。)

添削前の原稿
I get up 7:30 o'clock.
I have ten minutes all ready.
My breakfast is milk and bread. I don't have time, so I don't eat many times.
There is a first period, but I sleep three times and often late.
I ate bento at the outside and very hot.
There are classes PE and English. Table tennis is very busy.
I worked McDonald's.
I home at 22:00 p.m.
Old sister is cooked dinner.
I want to hobbies but can't finish homework.
So not time for hobbies.
I go to bed to 4 a.m. Fast asleep.

この原稿を提示して、

  1. 何も説明せず、修正だけ依頼

  2. 「"A day in the life of a fist-year student"というタイトルのビデオのシナリオを書きました。 英文を修正して、なぜその修正をしたか日本語で説明してください。 まだ英語を学んでいるところなので、修正はできるだけシンプルでわかりやすい表現でお願いします。」という説明をつけて修正を依頼

  3. 2と同じ内容を英語で説明して、英語での回答を依頼

    という3つのパターンでどういう答えが返ってくるか検証しました。

すべてのパターンの修正文と説明は以下の添付ファイルの通りです。もちろん、何回も同じ質問をすると、ChatGPTはその都度違うことを言ってくるので、これはたまたま出てきた一つの回答例ということになります。

修正についての説明は抽象的、間違いも多い

今回特に知りたかったのは、ChatGPT(3.5)が修正した理由をちゃんと説明できるのかという点でしたが、「こちらが期待したような説明はほとんどできなかった」というのが結論です。

英文の修正については、「文を整理し、より自然な表現にしました」「文法的な正確性を持たせ、文を簡潔にしました」「文法的に正確な表現に修正しました」"Simplified the expression to make it clearer" "Corrected the grammar" "Clarified the subject and the verb" "〇〇 is the correct phrase"など、日本語でも英語でも抽象的だったり、修正が正しいと断定したりするだけの説明がほとんどでした。

"I get up 7:30 o'clock" は、今回はすべてのケースで"I wake up at 7:30"と修正されています。でも、「o'clockは不要で..」"Removed 'o'clock' as it's redundant"と、なぜ不要なのかの説明はなし。そして、「"wake up"は"get up"と同義語でシンプルな表現」とか、"'Wake up' is the correct phrase"など、get upをwake upにした理由もわかりません。そもそも、get up(起床する)でも、wake up(目覚める)でも意味はほぼ同じなので、余計な修正はいらない部分だと思います。(何度も聞くと修正しない時もあり)

"I have ten minutes all ready"は、学生は「準備する時間は10分しかない」というつもりで書いていて、1と3ではそのように理解されたようですが、2では"I already have ten minutes"という修正文が示され、「"already"を使って時間の既存性を示します」と、説明も意味不明です。

"There is a first period"の文については、2の"a first class"は、意味的にも文法的にもちょっとおかしいと思いますが、「文法的な正確性を持たせ」たと言っています。また、"I have a first-period class"と主語をIにしたのは、3だけ。私としては、There is…は文法的にはあっていても、自分が1時限目の授業を取っていることを話すときは、こっちの方が自然だと説明して欲しかったのですが。

"I ate bento at the outside"や"I worked McDonald's"では、過去形を使っていることと場所を表す表現についての指摘を期待しました。毎日のルーティンを話しているので、動詞は現在形が普通ですが、修正していないケースもあり、修正していても「仕事の現在形を表現しました」と、説明はよく意味がわかりませんでした。

1文ずつ修正を頼めば丁寧な説明もできる

結局、学生の意図を理解して、文法、意味の両面から修正、説明してもらうのはChatGPT(3.5)では限界があるということだと思います。

ただ、今回、原稿を丸ごと投げて修正を依頼しましたが、1文ずつ聞くともっと説明は丁寧になります。

例えば、

プロンプト:
There is a first period, but I sleep three times and often late. ある学生のdaily routineを話しているビデオの中のセリフです。文法的、意味的におかしいところを修正して、なぜその修正が必要だったか教えてください。修正文はもちろん英語で、説明は日本語でお願いします。

答え:
セリフを修正します:
"There is a first period, but I sometimes fall asleep and am often late."
修正の理由(説明):元の文にはいくつかの文法的および意味的な問題がありました。
1. "I sleep three times" は文脈に合っていなかったため、それを修正しました。学校の授業中に3回寝ることは通常起こり得ません。
2. "often late" という表現を追加して、学生が頻繁に遅刻することを明確にしました。
したがって、修正文では、学生が授業中に時々寝てしまい、そして頻繁に遅刻することが明示されています。

学生はもともと、二度寝ならぬ三度寝をしてしまって1限には遅刻しがち、と言いたかったのですが、そのようには受け取ってもらえなかったようです。ただ、そのことは明確に説明されているので、どうしてこの修正文になったかもよくわかります。

また、同じように"I worked at McDonald's"を直してもらうと、

答え:
"I work at McDonald's."
説明: 元の文は過去形 "worked" を使用しており、一般的な日常のルーチンを表現する文脈に適していませんでした。一般的な日常のアクションや習慣について語る場合、現在形を使うのが一般的です。したがって、修正した文では現在形 "work" を使用して、学生が通常どおりマクドナルドでアルバイトをしていることを表現しました。

という期待通りの答えが帰ってきました。

ところが、"I get up at 7:30 o'clock"はどうかと聞いたら、

答え:
"I get up at 7:30 o'clock." の文は文法的には正しいですが、より自然な表現にするために "o'clock" を省略することができます。ですので、次のように表現することが一般的です:
"I get up at 7:30."
この方がシンプルで一般的な表現ですが、元の文も文法的には正しい表現であることに変わりはありません。

7:30 o'clockは"文法的に"正しいとしても、○時〇分の後には使わないのだということは、このあと、本当にこれでいいんですかと繰り返し聞いてもなかなか説明してもらえませんでした。

原稿作成は任せてよりよい学びを目指すべき?

ところで、ChatGPTは英作文は得意です。ということは、自分が書いた今ひとつ意味がわからない英文を添削させて、さらに訳がわからなくなるより、最初から書いてもらう方がずっと効率的ではあります。

そこで、こんなお願いをして、A day in the life of a first-year studentの原稿を書いてもらいました。

お願い(プロンプト):
課題で私のある1日を英語で話すビデオを撮影します。原稿を作ってもらえますか。 私は英語は勉強中なので、できる限りわかりやすいシンプルな英語で書いてください。 朝7時半に起きて、10分で支度をします。朝食はパンとミルクを食べますが、いつも時間がないので食べないことも多いです。1時間目の授業がありますが、一旦起きても3回くらい寝てしまって遅刻することもよくあります。 授業は体育と英語です。 その後マクドナルドでアルバイトをします。家には22時に帰ります。お姉さんがご飯を作ってくれます。その後趣味を楽しみたいですが、宿題が終わらないのでできません。寝るのは4時で、すぐに眠ってしまいます。

Chat GPTの答え:
もちろん、ビデオの原稿を作成します。以下はシンプルな英語での日常の1日のストーリーです:
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I wake up at 7:30 in the morning and get ready in just ten minutes. For breakfast, I have bread and milk, but I often skip it because I'm usually short on time. I have my first class, but even after I wake up, I sometimes end up falling asleep three times and being late.
My classes include physical education and English. After that, I work at McDonald's. I return home at 10:00 PM. My older sister cooks dinner for me.
Afterward, I would like to enjoy my hobbies, but I can't because my homework is not finished. I go to bed at 4:00 AM, and I fall asleep right away.
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この原稿をビデオで使う際、ゆっくり話すことを心がけ、自分のペースで話すのが大切です。頑張ってビデオを撮影してください!

なかなかいい原稿です。こちらの意図をしっかり理解しているし、最後にビデオ撮影のアドバイスまでしてくれました。この方法なら、日本文の作成を含めて、5分以内に課題完了です。

では、教員として、この課題のやり方を推奨(容認?)するのかどうか。ChatGPTに全部書かせたら、学生たちの学びにならないんじゃないか? というのは最初に浮かぶ疑問です。自分たちは教科書で文法を覚えて、辞書を引いて、自力で英文を読んだり書いたりしてきたので、そうしないと英語力はつかないと、なんとなく思い込んでいるかもしれません。

でも原稿を作るのに何時間もかけるのと、英語原稿作成は5分で片付けて、あとは原稿を覚えて、話し方の練習をして、ビジュアルや演出を工夫してより伝わるビデオを作ることに時間を使うのとどっちがいいのか。自力で原稿を書いたら英語力がついて、ChatGPTに書いてもらったら学びにならない、ということではないでしょう。

教員は、ChatGPTに英文を添削してもらうことを学生に勧めるよりは、ChatGPTの作った原稿から、学生たちがどう学びを深め、広げられるか、その方法を考えることに時間を使うべきかもしれません。次はそのことについて検証してみたいと思います。


※1
A day in the life …の参考に見るビデオの例
Student life at FLC: A day in the life of Michael
Student life at FLC: A day in the life of Michaela
A day on the Hilltop