ルネ・ヤーコプスのドイツオペラ 2:ゲオルグ・フィリップ・テレマン(1681-1767)「オルフォイス、または愛の素晴らしき不変性」(1726) その1
オルフェのストーリーとしては異色な脚色に見えますが、実は元ネタがあってフランス・バロックオペラの元祖ジャン=バプティスト・リュリの子ルイ・リュリ(1664-1734)の叙情悲劇「オルフェ」(1690)です(Michel Du Boullay作の台本)。トラキアの王妃で未亡人となったオラジアがキーパーソンになる。ひょっとすると時代を相当下ってコクトーの映画「オルフェ」の元ネタなのかもしれない。奥様よりも死の女神に惹かれてしまうんですが…
更に「オルフォイス」で特徴的なのはドイツ語が基本ではありますが一部イタリア語、更にはフランス語歌詞があり、それらが歌詞内容や音楽の出自と強くリンクしている所ですね。いかにも国際派のテレマン、またそれが許容される当時のハンブルク。1721年に客演での歌劇「辛抱づよいソクラテス」初演が大成功したのをきっかけに1722年ゲンゼマルクト歌劇場の楽長に就任、1726年にコンサート形式で、1736年に決定稿が初演されました。ベルリン古楽アカデミーとの1996年録音、全三幕。
序曲はフランス風序曲(!)、このオペラ全体の出自が叙情悲劇にある事を示してるかも。第一幕が開くとトラキアの都近郊の庭、第一場オラジア(ソプラノ)のアリアが三曲。第一曲短調で新婚のオルフォイス(バリトン)への叶わぬ恋を切々と、侍女イズメネ(ソプラノ)とのレシタティーヴォを挟み二曲目は長調のやや諦めモードか。“音のタイル張り舗道”さんの、第一曲はドイツの受難曲のような曲想、第二曲はヘンデルのアリアを想わせるという表現は的確。やがて恋敵オイリュディケ(ソプラノ)に対し次第に激昂し三曲目イタリア語歌詞で殺してやると(!)、快速で激しく技巧的な確かにイタリア語が最適でしょね。…続く
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