Padmâvatî (1923) その3
第二幕 シヴァの神殿の中、暗闇
短いですが悲劇的で壮大な前奏曲にて第一幕とは異なる空間に導かれます。第一場、祭司達のシヴァへの祈りの声、パドマヴァーティも加わる。チットール軍の劣勢は明らかでラタン=サンは残兵を率いて絶望的な最後の戦いに向かっている。チットールの民を救うには生贄が必要と言われパドマヴァーティは腰の剣を掲げて覚悟は出来ていると応じるが、一人では足りないのだと続けられ、たじろぎ剣を納める。第二場、深く傷を負ったラタン=サンが戻ってくる。最初で最後の二重唱。サルタンは夜明けまで休戦を命じたとの事だ。ラタン=サンはパドマヴァーティに生き伸びてサルタンの元へ行き、民の命を救うように懇願するが、夫婦共に死にゆく事を望んだパドマヴァーティは何とラタン=サンを剣で刺し殺してしまう(ルーセルおよび台本担当のルイ・ラロワの独自の改変だそうです)。今際の際で「何をしたのだ。」「私はあなたから離れません、死が我らを結びます。」「祭司達よ、二人の生贄が待っている。侍女たちよ、最期の着替えを頼みます。」と言い(これでパドマヴァーティの歌は終わり!)第三場へ。
侍女達が婚礼の櫛、鏡、ネックレスとヴェールを用意、祭司達は呪文を唱え始める。下手の血で染まった岩に向かい「血染めの岩よ、死よ!シヴァの白き娘達、プリティヴィ! パルヴァティ! ウマ! ガウリ! 汝らの獲物を探すがいい。」でパントマイムへ。白い吸血鬼のような四体が徘徊し遺骸に近づこうとするが追い払われ下手へ消える。
祭司たちは上手の白い大理石に向かい「輝く岩よ、生命よ!シヴァの黒き娘達、欲望にて傷ついたカリ!不実な甘美のしもべドゥルガ!試すがいい!」と叫び踊りとパントマイムへ。三叉を持った敏捷なカリは跳ね回り、ドゥルガは蛇の様に動き回る。侍女達やパドマヴァーティを脅すが追い払われ上手へ消える。
祭司等の究極の呪文によって終曲の葬送儀式が始まります。四体の黒い娘と二体の白い娘が再登場しアプサラス達に変容する。王ラタン=サンの亡骸に向かい花で飾り、パドマヴァーティを導き隣に寄り添わせる。葬送の婚姻の儀式は終わりに近づくと、外から敵軍の叫び声が。「夜明けだ、虐殺が始まる、急げ!」地下へ先ずは王の遺骸を。パドマヴァティが続きアプサラ達も。地下には薪が積まれている。後方の扉が開いてアラウッディンとその手勢が入ってくるが時既に遅く地下から煙が上がり茫然と眺める中ゆっくりと幕が降りる。(終)
歌の聴かせ所も効率的、なんと言ってもバレエ場面の比重が大きく実際の舞台を観てみたいなあと思わせるし実際その評判が高い。近年ではパリ・シャトレ座でボリウッドのスタッフが演出して上演収録があるはずです。ゾウや虎まで登場したらしい。今の所気楽には観れなさそうなのは残念。
ミシェル・プラッソン盤が唯一の正規盤、ただマルティノンのBBCでのライブ(?)も録音状態を超えて流石と思います。
今回聴き込んだ結果、どうも晦渋だなと敬遠していた「交響曲第二番 作品23」(1921)も試しに聴き直してみたら、とても腑に落ちた感じです。強面ながら意外にジョーキーな部分がある力作だとやっと思える様になりました。
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