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アルベリック・マニャール「ゲルクール」、三幕五景からなる音楽悲劇 Op.12 その4

 …承前、息が長く幅広く上下する旋律と、コラールの様な荘厳で静的な旋律、そして最もコントラストをつけるのがリズミックで(シューベルトの交響曲の様な)前進性の強い音楽が交響的間奏曲では繰り広げられ、マニャールの音楽の特色が発揮されていると思う。次景での“凱旋行進曲”が予告される。そして苦悩も。
 第三景 群衆
 第一場、都市の公会堂に面した広場、女達、男達、パンをよこせ、ウルタルの支持派反対派が入り乱れる。第三景全般に言えることですが群衆のカオスが整然と表現される、カノンやフーガの技法を駆使したこんな音楽は聴いた事がない。無調に傾いたベルクの例があるけれど…第二場、ゲルクールは民衆の混乱を嘆きウルタルへの第三場呪いのことばを吐く、賛成派と反対派の対立、ウルタルの演説はむしろ火に油を注ぎ一触即発になりゲルクールが割って入る。一部には恐れを抱かせるがウルタルがニセモノだと断じて群衆を煽り支持派を勢いづかせ、ゲルクールと反対派は暴力でちりじりに。第四場“凱旋行進曲”、ヴィヴァウルタル、反復の際にピッコロのオブリガートが付け加えられるのが彼等の空疎さ浅はかさを揶揄してる様に聴こえる。次第に遠ざかって夜が暮れる。第五場、ゲルクールの二度目の死、今際の際の言葉は「真実はん、私の自尊心をお赦し下さい」 遠くから“ヴィヴァウルタル”と三度聞こえ、鋭い終和音で幕。
…続く

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