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アルベリック・マニャール 「ベレニス」、三幕からなる音楽悲劇 Op.19 その4

 Jeanne Julia Bartet 扮するベレニス(1893)です。
 …承前、第二幕第五場、ベレニスはdésespéré(絶望して)、自死も仄めかすとティテュスは足元に崩れて涙ながらに止めるのでそれはしないと約束するベレニス、ただ最後の願いとして明日船で旅立つ前にもう一度だけあの庭で会って欲しい、今晩…では今晩にと答えるティテュス、静かに去るベレニス。第六場、ティテュス独り、改めてベレニスを賛美し何もかも捨てて彼女と世界の果てへ逃げようかと。この時ティテュスの帰還、騎馬のティテュスが短調化して現れて転調を重ねる。上手の扉に向かい垂れ幕を上げるとムシアンが立っていてたじろぐティテュス。第七場、「陛下は自由を取り戻されましたか?」明日発つ前今夜会う約束をしてると聞きそれはなりませぬと。説き伏せられてdésespéré(絶望しながら)従うティテュス。一人にしてくれと退場。第八場ムシアンひとり、まだ東方の毒が抜けていないようだ、きょうびの皇帝の血筋は弱まるばかり。重々しくムシアン=ローマが響いて静かに幕。
 ティテュスの上がったり下がったりの落差の激しさはゲーテの疾風怒涛(若きウェルテルの悩み)やヘルダーリンの「ヒュペーリオン」を思い出す。
 第三幕 オスティアの港
 前奏曲は葬送行進曲の様な曲調、ドビュッシー「ペレアスとメリザンド」のゴローの動機、あるいはその元ネタであるパルジファルの行進を連想する。次第に速度を上げ最後に愛のテーマを回想する。第一場、ベレニスとリアの乗る三段櫂船 、艦隊長が準備が完了、女王様の合図でいつでも出航できますと報告、ベレニスはまだ日が沈むには早い、夕べの風が吹き始めるのを待ちましょうと答える。第二場、リアとベレニス、ベレニスは最後にティテュスと会える事をまだ期待している。この五年は愛の女神ヴィーナスのお陰で幸せだったと。泣き崩れ、リアも一緒に。己が髪を捧げるのでもう一度だけ会わせてくれる様ヴィーナスに懇願する。と奴隷が申し上げます、皇帝の使いがご挨拶に参りましたと叫ぶ。
 第三場、来たのはティテュス本人(でしょうね)。
…続く


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