Death, Destruction & Detroit
物々しいタイトルはロバート・ウィルソンの舞台作品のタイトルの借用です。あまりに印象が強くデトロイトといわれれば必ず思い出す(実は記憶では間違ってdestructionがdestroyに入れ替わってましたが)ていうだけで中身とは関係ない、かも。1982年から2004年にエーテボリ交響楽団の首席指揮者を、並行して1990年から2005年デトロイト交響楽団の音楽監督を務めていたネーメ・ヤルヴィ。世界的な自動車メーカーのある都市二ヶ所で君臨しているなんていわれてました(ボルボとゼネラルモーターズね)。どちらも長期ですよね。もう一箇所、ロイヤル・スコッティッシュ・ナショナル管弦楽団は1984年から1988年に首席指揮者でした。グラスゴー、造船の都市ですな。ただ日本ではエーテボリでの仕事や(BISやDG)やスコットランド(シャンドス)の録音は良く知られているのに、デトロイトでもあったであろう実り多い活動の一端(シャンドス)に触れている人は少ないのでは。
目立つのはチャイコフスキー、しかも交響曲はないというのが面白い。オーケストラ組曲全曲が1〜4番までに、フィルアップに様々の序曲等、メジャーなのはピアノ曲編曲の「四季」か「フランチェスカ・ダ・リミニ」でしょうか。どれも生きが良くて私にはちょうど良いチャイコフスキーです。そして劇音楽「雪娘」がほんとうに素晴らしい。こんなにいい曲揃いとは。お子さんのクリスチャン・ヤルヴィも録音していますが勝るとも劣らぬ若々しさ、瑞々しさ。
そして10枚に及んだ「アメリカン・シリーズ」も労作、vol. 1からサミュエル・バーバーと一緒に女流作曲家エイミー・ビーチの交響曲を取り上げたり、アイヴズ、黒人作曲家ウィリアム・グラント・スティルやウィリアム・レヴィ・ローソンやデューク・エリントン、ジョージ・フレデリック・ブリストウ、ジョージ・ホワイトフィールド・チャドウィック、ポール・クレストン、ランドール・トンプソン、コープランドにハリス。最近ネゼ=セガンが黒人女性作曲家フローレンス・プライスの交響曲の録音でグラミー賞を受賞してましたが、それに先駆けた仕事だと思います。作風は様々ですが基本的に難解さが全くなく楽しめます。比較的メジャーなバーバーやコープランドの交響曲等も他盤に引けをとらないと思います。
その他ではスメタナ「我が祖国」、ネーメらしい勢いのある全曲。ちなみにネーメは1994年のプラハの春に招かれ同曲を指揮しています。そしてフィビッヒの交響曲、ドヴォルザークより歳下ながらより古典派よりの、もっと親しまれて良い曲と思いました。
現在ネーメは米国国籍でアメリカ在住とのこと、最近もラロのオーケストラ曲がエストニアのオーケストラとの新譜として出てました。
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