Ralph Vaughan Williams (1872/10/12 - 1958/8/26)
1865年生まれのシベリウスの約12歳年下、没年は約1年あとになります。どちらも長寿でしたが早くに筆を折ったかたちになってしまったシベリウスに対し、ヴォーン=ウィリアムズは生涯現役で、交響曲第9番の初演に立ち会ったその月に亡くなりました。
年譜によれば早熟の人とは言えなさそうです。民謡の採集、イギリス讃美歌集の編さん等に携わり「ノーフォーク狂詩曲第一番」を34歳で発表、35歳で3ヶ月ほどモーリス・ラヴェルに師事しています(裏山C(著作権主張します))。
1909年(37歳)から1910年に最初の爆発的創作活動が(「ウェンロック・エッジで」「すずめばち」「トマス・タリスの主題による幻想曲」「海の交響曲」)。1914年の第一次世界大戦開戦に際し兵役に着きます。フランスやギリシアにも軍務で赴き1919年に除隊になるまでの期間に、「ロンドン交響曲」「揚げひばり」を作曲しています。
1922年(50歳)の「田園交響曲」、私などは以前イギリスの田園風景なんて思ってましたが実は戦地フランスでの光景が源の、むしろ戦争交響曲とも言うべき作品だそう。
歌劇「恋するサー・ジョン」とかもっと上演されてもいいような作品群の後、転機と言えるのが1935年(63歳)初演の「交響曲第四番」、本人は否定しますが1939年の第二次世界大戦開戦を予感させる世情とは無関係な筈はない、ハードな世界に踏み込みました。
道徳劇「天路歴程」をオペラ化するという若き日からの途方もない試みの途上、一部流用されたような形で1943年(71歳)に初演された「交響曲第五番」は終戦が見えてきたかもしれない時期の聴衆にどんな風に聴かれたか、失敬極まりないが老作曲家最期のテスタメントのように捉えていた人もきっと。でもそれは大外れえ-、どんどんドンドン・パフ-。オペラ「天路歴程」も自身の予想と違い完成するんすよ、で1951年(79歳)に初演されます、すげえ。ちなみに第五番は了解なしで勝手にシベリウスに献呈、のちにラジオでシベリウスも耳にすること何出来て大変感銘を受けたと伝えられています。
1948年(76歳)の「交響曲第六番」は戦争の後の世界か、第四番以上にハードでシニカルな表現から最後全編弱音の第4楽章、さながらベケットのような荒涼とした光景。これで行き着くところまで行き着いたかと思えば、映画「南極のスコット」の音楽を転用して「南極交響曲」なんてのをしれっと発表してしまう81歳(1953年)、その年再婚。
1956年の第八番も新たな音響への挑戦が感じられる。極めて遊戯的、第4楽章で初めて全楽器群が使われ多彩な打楽器が加わる。1958年(85歳)の第九番は謎多し、ハーディの小説「テス」に基づく標題性があるという話ですがまだ私には理解の外です。なんて人だ!
ディスクはまず二度交響曲全集を作り天路歴程も録音したボールト、またオペラを広く録音、残念ながら交響曲全集は南極交響曲を残して急逝したヒコックス。ブライデン・トムソンは感情豊かでありながら形が崩れない、印象的なのは海の交響曲第4楽章、合唱を受けたオーケストラがため息をつくように響く瞬間。クラウス・テンシュテットを彷彿としました。ヴァーノン・ハンドリーはボールト以上に武骨で生真面目なのが好感、例えば第四番の幕切れなど大迫力す。魔術師ロジェストヴェンスキも悪くないんですよほんとに。最近のアンドルー・マンゼ (ピリオドとかを超えた直裁さ)やブラビンス(なんて誠実な音楽す)、本当にみんなちがってみんないい。
「トマス・タリスの主題による幻想曲」って凄くない? 皆さんどなたの演奏だって構わないので聴いてみてください。
すません長々と、私基本RVW全部好きなので。