見出し画像

アルベリック・マニャール 「ベレニス」、三幕からなる音楽悲劇 Op.19 その1

 ラシーヌの悲劇全五幕のタイトルとして(名のみ)有名、アクチュアルにはパリでイザベル・ユペールが主演でカステルッチが演出しとった!

 ただし本作はマニャール自作の台本です。世界を統べる皇帝となる運命の故に愛し合うパレスチナの女王ベレニス(グラン・ソプラノ)と引き裂かれてしまうティテュス(バリトン)って話は要約出来る。ラシーヌと違うのは三一致の法則には従わない三幕構成、ティテュスは既に皇帝に即位しているラシーヌ作に対しオペラでは第一幕と二幕の間に即位します。あとベレニスの乳母リア(アルト)、ティテュスに仕える法廷長官ムシアン(バス・シャンタントゥ)もマニャール独自の創作。
 第一幕 ローマ近郊のベレニスの宮殿の庭園
 大規模な序曲で始まります。このオペラを献呈されたロパルツが序曲だけを1907年ナンシーで初演、全曲初演は1911年パリ・オペラコミックでした。序曲は全曲を簡潔にダイジェストした様な急-緩-急-緩の構成です。一通りのライトモティーフが提示される場でもあります。2/4拍子兼6/8拍子、いきなり走りだす無窮動(まるでフィリップ・グラス)を伴奏に付点音符の音型は「ティテュスの帰還」、続くファンファーレは「騎馬のティテュス」だそう。確保の後テンポを緩め4/4拍子、三全音の下降が特徴の「不幸な運命」から抒情的な流れとなって愛の二重唱に繋がってゆく(カノン)。不吉な和音シグナルに続いて下降半音階の「ベレニスの悔悟」。続いて冒頭のテンポが戻ってティテュスの戴冠に関わるモティーフが提示される中間部というか短い展開部となってから、はっきりティテュスの帰還、騎馬のティテュスが再現部。抒情、愛、不吉、悔悟そして最後に威嚇的な「ムシアン=ローマ」のモティーフ。
...続く

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?