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ジョゼフ=ギィ・ロパルツ「故郷」(1912)、三幕四景からなる音楽ドラマ その2



 (承前)第一幕第二場、しかし「おるふぇお」、「えれくとら」や「るいーず」ほどのダークな展開にはならないんで安心して下さい、ぱぱヨルゲンも好意的ではあるんで。だけど意外な驚きが。ヨルゲンのメロディはコラール調(アイスランドはプロテスタント)で、アイスランドそのものあるいはケーテの貞節な愛も象徴します。牧師さんは遠くなので代わりにヨルゲン立ち合いの元、結婚の誓いを古からの慣習に則り「若し誓いに背けばHrafuagaに呑み込まれるがいい」と二人が唱える、その際の音楽はまるで愛を呪うアルベリッヒの音楽の如き。
 第二幕第一場、四月のフィヨルドの海辺、極夜の時期で雪も残る。テュアルは難破船の残骸を利用して船を作っている。ブルゴーニュの古い民謡を歌い、故郷への思いを募らせる、この部の音楽の美しい事! 第二場、ケーテが登場、もう直ぐあなたは父親になると告げる。不安ながらも貞節な愛を込めてヒルダ姫とオラフ卿のバラードを歌う。音楽はヨルゲン=アイスランドのメロディ、死する時はお互いを抱きながら一緒にといった伝説。
 第三幕第一景、同じく四月の家の中、第一場帰りの遅いテュアルを待つケーテ、「駆けろ急げ、旅人よ、Hrafuagaに気をつけろ…」歌いながら第二場ヨルゲンが一足早く帰ってくる。ケーテの不安は晴れない。第三場テュアルが帰るが上の空の様子。ジンをひっかけて来て上機嫌なヨルゲン、ザイディスフィヨルドでブルターニュのペンポルから来た漁師たちが漁を始めたという話を聞いてきた。俄然興味が湧いたテュアル、そこってここから遠いのか? 夏なら三日はかかるがHrafuagaが凍っているうちは10数マイルで数時間で行けるだろうとヨルゲン。まだ大丈夫だろうかとテュアル、四月だからなあ、ただカラスが現れると冬の終わり、それまではとヨルゲン、そう言うとさっさと寝に。外の空気を吸いにと言うテュアルをケーテが必死に制止し二人も眠りにつく。テュアルの夢:暗闇に朧げなブルターニュの田舎の風景、消えて再びより鮮明になって現れるが再び消える。三たび現れて今度は帆をいっぱいにあげた漁をする帆船がテュアルに会いに向かってくるかの様。突然起き出し叫んでテュアルは外へ。まもなく馬の駆けてゆく音。気付いたケーテは後を追う。ヨルゲンは再び眠りに、寝言の様に「駆けろ急げ、旅人よ、Hrafuagaに気をつけろ…」
 間奏曲に続く第二景は第一幕と同じ砂丘、夜、星空と雪あかり、第一場、姿は見えぬがテュアルの馬を叱咤する声だけが聞こえ、ケーテは呼びかける、もう一度会いたい、戻って来て。しかし第二場、ヨルゲンも現れ叫ぶ「カラスだ!」ケーテが嘆く、私がもう赦しているのにHrafuagaは何て無慈悲なんでしょう!(終)

 唯一の録音はジャン=イヴ・オッソンスの指揮、交響曲第三番でも感じた重心の軽さがもしかしてこの曲を充分に捉えきれてないんではって思ってしまう。ミレイユ・ドルンシュさん等声楽陣も少々地味か。贅沢ながら競合盤の欲しいところです。


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