ジャン=バティスト・リュリ(1632/11/28 - 1687/3/22)の音楽悲劇「ファエトン」(1783)その1
「黄金時代の再来」と題されたプロローグは序曲に続いて正義の女神アストレ(アストライアー)の宮殿の庭、とりまきの歌い踊る中アストレ(ソプラノ)は悪が蔓延った下界を去って久しいがまだその後を気遣っている。サテュルヌ(サートゥルヌス、バリトン)達が現れ、新たな英雄(≒ ルイ14世でしょうな)の到来で再び黄金時代が訪れるとアストレを下界に誘う。アストレもそれに頷き、皆で英雄を賛美する合唱。幕
序曲の再現に続いて第一幕前景は庭、中景は洞窟、遠景は海。第一場エジプト王メロプスの王女リビ(ソプラノ)一人、恋の悩みから逃れたいとのエール。第二場海神プロテ(プローテウス)の娘テオーヌ(テオノエー、ソプラノ)登場。今日はメロプスがリビの結婚相手を決める日、エパフュス(エパポス)に恋するリビは不安を打ち明け、一方テオーヌは恋人ファエトン(パエトーン)の心変わりを疑っている。ファエトンが現れリビが去る。第三場最初テオーヌが居ることにも気づかないファエトン(テノール)の冷たさを詰るが取り合わないファエトン。テオーヌと入れ替わりファエトンの母で王妃のクリメーヌ(クリュメネー、ソプラノ)登場。第四場エパフュスとリビが結婚すればエパフュスに王位を奪われると懸念するファエトンにクリメーヌは、メロプスの考える相手はファエトンと答え安心させる。テオーヌとの恋を心配するクリメーヌにファエトンは恋より栄光を選ぶと言い切る。クリメーヌは幾多の凶兆に胸騒ぎし未来を透視できるプロテ(バリトン)の予言を聞こうと決心する。第五場プロテとネプチューンの羊の群れ、海の神々、恋の苦悩を海の嵐に譬えて避けるべきものと歌うと、「夢」の音楽で洞窟にて眠りにつく。第六場クリメーヌが甥のトリトン(トリートーン、テノール)に協力を求める。第七場トリトンらが海から現れ歌と踊りにプロテに誘う。歌いだすプロテにファエトンの運命を聞き出そうとするが、プロテはトリトンのエール「秘密をあなたからもぎ取らねばならない」に挿入される器楽にのって姿をライオン、樹、海の怪物、泉、炎に変身して逃れようとするが、第八場とうとう運命を予言するエールを雄弁な伴奏とともに歌いトリトンとクリメーヌの恐怖の叫び。幕
第二幕はエジプト王宮の一室、儀式の準備中、第一場プロテの予言を聞いたクリメーヌ、王位を諦めテオーヌとの愛に生きよと諭すがファエトンは応じない。第二場テオーヌ独り「彼は私から逃げる、不実者!」、オスティナート・バスのエール。第三場リビも現れ二人で恋の苦しみを嘆き合う。第四場エパフュス(バリトン)登場、ファエトンが婿に選ばれたことを伝え、デュエット「私の運命は幸せだったろうに」。第五場メロプスが傘下のエチオピア王とその民、インドの王とその民、エジプトの民の前で後継者はファエトンと宣言、合唱とディヴェルティスマン、更にシャコンヌで頂点。小さなエールで幕。…続く