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Padmâvatî (1923) その2

 第三場、宮殿のバルコニーにパドマヴァーティ(コントラルト、第三場の間は黙役)とお付きの者ナカムティ(メゾ・ソプラノ)が姿をみせる。バラモンの歌へ呼応するようにナカムティがパドマヴァーティを讃えて歌う。アラウッディンがヴェールを開けて顔を見せるよう懇願しラタン=サンが許してパドマヴァーティはそれに従ったものの軽蔑したように立ち去る。ゴラの合図で皆は平伏し、アラウッディンは引き寄せられたように立ち上がったが、打ちのめされたように深く椅子に沈む。そして和睦の儀式をドタキャンし明日また出直すと言い残し立ち去る(史実のAlauddin Khaljiはモンゴル人ではなくむしろモンゴルの侵略を再三食い止めた人らしい)。
 一人居残ったバラモンが(や、お前には見覚えが、以前この宮殿に仕えていたがよなよなパドマヴァーティ様の窓の下に居座っているのを見つかって追放された奴だな、そーですわたすが、ってなんともご都合主義なやり取りの後)、サルタンに代わって最後通牒、パドマヴァーティをアラウッディンに差し出さねば総攻撃だと。ラタン=センは皆の者、戦争だ、準備せよと叫ぶ。皆が口々に召集だと騒ぎ、厄介を持ち込んだバラモンに詰め寄り、彼が挑発的にチットールの人々やパドマヴァーティを蔑むようなセリフ歌うもんだから激昂してなぶり殺しに。
 第四場、さていよいよパドマヴァーティひとり、舞台裏から「オザルム(aux armes、武器をとれ、ってラ・マルセイエーズのリフレインで有名)」と聴こえてくる中、夫ラタン=サンに従う心情を歌い、第一幕の幕が降りる。

 なんでしょ、ホントによく出来た台本です。バラモンのキャラクター設定で妙なご都合主義を感じるかもですが、考えてみても下さいそのお陰であたかも愛の場面のように男声と女声が呼びかわす、そりゃ絶世の美女であるお妃様を賛美するって音楽的にチャーンスなので逃せませんよね。第一幕最後にやっと主役パドマヴァーティが初めて歌うのも巧妙、第二幕は出ずっぱりなんでね。所謂ワーグナー的ライトモチーフは(間違ってるかもしれんが)無いと思います。(続く)


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