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ジョルジィ・リゲティ ピアノのための練習曲集第一巻(1985年) その3

 第三曲はとっても説明的な題名で、正しく一回性アイディアだけで成立してる性格をズバリと。譜面にひし形で書かれた2~6個の音符は音を出さないように前もって押さえ込んでおくのがルール。もう片方の手で上下に流れていく音階状の旋律線を弾くのだが、先に押さえ込まれた鍵盤は音がしないので途切れて、結果複雑なリズムが生み出される。ルールは単純なのにね。
 似たような例は、ちょっと違うけどドビュッシーの前奏曲集第一集第二曲“Voiles”の結尾、ペダル効果の豊かな響きの中からペダルを止めると押さえてあるドミの二音だけが残される。あとは演奏現場でのアイディア、ショパンの24の前奏曲終曲の結尾、最低音のレの劇的三連打を、ドとミを静かに抑えておいてもう一方の拳で叩いて鳴らすやり方がありますが、自分の指を叩き潰さぬよう、良い子のみんなはマネしないでね。視覚的効果も大きい。
 視覚的といえば、「妨げられた打鍵」も視覚効果絶大、一生懸命弾いているのに歯が抜けたような音が聴こえてくるだけ(リゲティらしいイロニー)。その仕掛けは予備知識がなくとも次第に見えてくる。のでこの曲は特に耳だけでは寂しい。

 他、視覚的効果が重要な曲と言えばリストやラフマニノフのいわゆるヴィルトーゾ、左手の大きな跳躍とか両手オクターブ連打とかがすぐ思いつきそう。意外かもですが、ウェーベルンの「変奏曲」も実はよく指摘されます。曲の鏡像構造がピアニストの所作からも読み取れ、理解しやすくなる。

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