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エリオット・カーター(1908/12/11 - 2012/11/5)とアルフレート・シュニトケ(1934/11/24 - 1998/8/3)の弦楽四重奏曲第二番

E. C. の弦楽四重奏曲第二番(1959)
 導入部
1. アレグロ・ファンタスティコ
 ヴィオラのカデンツァ
2. プレスト・スケルツァンド
 チェロのカデンツァ
3. アンダンテ・エスプレッシーヴォ
 1stのカデンツァ
4. アレグロ
 結尾部

 四楽器をそれぞれオペラの登場人物の様に見立てる。ここでアイーダやオテロの四重唱(!)を念頭においてらしいのだが、1stは“mercurical”、「幻想的で華麗、そして快活」、2ndは”laconic”、「簡潔で規則正しく、ときにユーモラス」、ヴィオラは”expressive”、「表情豊か」、チェロは”impetuous”、「衝動的」な性格としてそれぞれの音程やテンポ、奏法などを限定する。奏者は可能な限り離れて演奏する事になっている、同時に違う曲を演奏しているかの様に。
 9つの部分が連続して演奏、導入部と結尾部に枠取られ、4つの楽章は楽器同士のバラバラ感が緩和され親和度が増していく一方、3つのカデンツァは独立性がむしろ増すように設計されている。
 第1楽章は華麗な1stが主役、ヴィオラのカデンツァは短く他楽器と共に、第2楽章はピチカートで拍を刻む2ndが主役。複数のテンポの伴奏に乗ったチェロのカデンツァとヴィオラの穏やかなメロディが主役の第3楽章。1stのカデンツァの最後他楽器がトレモロで入ってきて第4楽章でクライマックスを築く。だいぶ短くまとめられていて助かります。

A. S. の弦楽四重奏曲第二番(1980)
1. モデラート(アタッカ)
2. アジタート(アタッカ)
3. メスト(アタッカ)
4. モデラート
 映画音楽の仕事が糧にもなり大いなる実験の場ともなっていたシュニトケ(このへんは武満徹とも通ずる所)が親友でもあったラリーサ・シェピチコの早過ぎる交通事故死(1979)を受けてこの曲を彼女の記憶に献呈した。古いロシア正教の聖歌がベースの曲ってゆうけど。
 冒頭から極端な高音フラジヨレットに始まり落ち着いたかと思うと第2楽章前半は全員でカオスなアルペジョ、中間は全員でカオスなトリル、和声的になってもまたアルペジョの嵐、この辺りはどんな風に記譜されてんだろう? 何と全部きっちり書かれていた! 第3楽章でなるほどベースは古い聖歌ですが直ぐに崩壊して秩序が失せる。フィナーレは救いなのか巣食ってるのか、最後にチェロの保続低音プラスでフラジヨレットどころかペンデレツキ的ななんでもいいから一番高い音を出せってやつかと思ったら全部きっちり音が書いてあった。冒頭に回帰?

 全部きっちり書くところはE. C. とA. S. の意外な共通点。

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