ハインリッヒ・シュッツの「我らが愛する救い主イエス・キリストの七つの言葉」(1657?)
ドイツ語歌唱、入祭唱に始まり閉祭唱で閉じ(Johann BoeschensteinのDa Jesus an dem Kreuze stundの最初最後の聯を歌詞にしています)、更にシンフォニアが間奏曲となって七つの言葉を福音史家とイエスが提示していきます。
入祭唱 ソプラノアルトテノール二人バスの五重唱
シンフォニア
福音史家:三時ごろイエス大聲に叫びて
イエス:父よ、彼らを赦し給へ、その爲す所を知らざればなり
福音史家:さてイエスの十字架の傍らには、その母と母の姉妹と、クロパの妻マリヤとマグダラのマリヤと立てり。イエスその母とその愛する弟子との近く立てるを見て、母に言ひ給ふ
イエス:をんなよ、視よ、なんぢの子なり
福音史家:また弟子に言ひたまふ
イエス:視よ、なんぢの母なり
福音史家:この時より、その弟子かれを己が家に接けたり
十字架に懸けられたる惡人の一人、イエスを譏りて言ふ左の盗人:なんぢはキリストならずや、己と我らとを救へ』
福音史家:他の者これに答へ禁めて言ふ
右の盗人:なんぢ同じく罪に定められながら、神を畏れぬか。我らは爲しし事の報を受くるなれば當然なり。されど此の人は何の不善をも爲さざりき
福音史家:また言ふ
右の盗人:イエスよ、御國に入り給ふとき、我を憶えたまえ
福音史家:イエス言ひ給ふ
イエス:われ誠に汝に告ぐ、今日なんぢは我と偕にパラダイスに在るべし
福音史家:イエス大聲に叫びて
イエス:エリ、エリ、レマ、サバクタニ
福音史家:意は
イエス:わが神、わが神、なんぞ我を見棄て給ひし
福音史家:この後イエス萬の事の終りたるを知りて、聖書の全うせられん爲に言ひ給ふ。
イエス:われ渇く
福音史家:ここに酸き葡萄酒の滿ちたる器あり、その葡萄酒のふくみたる海綿をヒソプに著けてイエスの口に差附く。イエスその葡萄酒をうけて後いひ給ふ
イエス:事畢りぬ
福音史家:イエス大聲に呼はりて言ひたまふ
イエス:父よ、わが靈を御手にゆだぬ
福音史家:遂に首をたれて靈をわたし給ふ
シンフォニア
閉祭唱
瞑想に誘われる静かな静かな音楽です。