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ハインリッヒ・シュッツ(1585/10/18 - 1672/11/6)のオラトリオ「イエス・キリストの喜ばしい降誕の物語」(1664)

 初めて聴いた時に福音史家がこんなに伸びやかに明るく歌うなんてとびっくりした記憶があります。シュッツって禁欲的とか渋いっていう先入観がひっくり返りました。ドイツ語歌唱です。

 
1. シンフォニア
 賑々しく器楽と四部合唱で始まり、生誕ですよとのアナウンス。
2. 福音史家(テノール)
 
その頃、天下の人を戸籍に著かすべき詔令、カイザル・アウグストより出づ。この戸籍登録は、クレニオ、シリヤの總督たりし時に行はれし初のものなり。さて人みな戸籍に著かんとて、各自その故郷に歸る。ヨセフもダビデの家系また血統なれば、既に孕める許嫁の妻マリヤとともに、戸籍に著かんとて、ガリラヤの町ナザレを出でてユダヤに上り、ダビデの町ベツレヘムといふ處に到りぬ。此處に居るほどに、マリヤ月滿ちて、初子をうみ、之を布に包みて馬槽に臥させたり。旅舍にをる處なかりし故なり。この地に野宿して、夜群を守りをる牧者ありしが、主の使その傍らに立ち、主の榮光その周圍を照したれば、甚く懼る。御使かれらに言ふ
3. 間奏曲 I(ソプラノ、アルト)
 懼るな、視よ、この民一般に及ぶべき、大なる歡喜の音信を我なんぢらに告ぐ。今日ダビデの町にて汝らの爲に救主うまれ給へり、これ主キリストなり。なんぢら布にて包まれ、馬槽に臥しをる嬰兒を見ん、是その徴なり4. 福音史家
 忽ちあまたの天の軍勢、御使に加はり、神を讃美して言ふ
5. 間奏曲II(六部合唱)
 いと高き處には榮光、神にあれ。:地には平和、主の悦び給ふ人にあれ
6. 福音史家
 御使等さりて天に往きしとき、牧者たがひに語る
7. 間奏曲II(テノール三重唱)
 いざ、ベツレヘムにいたり、主の示し給ひし起れる事を見ん
8. 福音史家
 乃ち急ぎ往きて、マリヤとヨセフと、馬槽に臥したる嬰兒とに尋ねあふ。既に見て、この子につき御使の語りしことを告げたれば、聞く者はみな牧者の語りしことを怪しみたり。而してマリヤは凡て此等のことを心に留めて思ひ囘せり。牧者は御使の語りしごとく凡ての事を見聞せしによりて、神を崇めかつ讃美しつつ歸れり。八日みちて幼兒に割禮を施すべき日となりたれば、未だ胎内に宿らぬ先に御使の名づけし如く、その名をイエスと名づけたり。イエスはヘロデ王の時、ユダヤのベツレヘムに生れ給ひしが、視よ、東の博士たちエルサレムに來りて言ふ
9. 間奏曲IV(テノール三重唱)
 ユダヤ人の王とて生れ給へる者は、何處に在すか。 我ら東にてその星を見たれば、拜せんために來れり
10. 福音史家
 ヘロデ王これを聞きて惱みまどふ、エルサレムも皆然り。王、民の祭司長・學者らを皆あつめて、キリストの何處に生るべきを問ひ質す。かれら言ふ
11. 間奏曲V(バス四重唱)
 ユダヤのベツレヘムなり。 それは預言者によりて、「ユダの地ベツレヘムよ、汝はユダの長たちの中にて最小き者にあらず、汝の中より一人の君いでて、わが民イスラエルを牧せん」と録されたるなり」
12. 福音史家
 ここにヘロデ密に博士たちを招きて、星の現れし時を詳細にし、彼らをベツレヘムに遣さんとして言ふ
13. 間奏曲VI(バス)
 往きて幼兒のことを細にたづね、之にあはば我に告げよ。 我も往きて拜せん
14. 福音史家
 彼ら王の言をききて往きしに、視よ、前に東にて見し星、先だちゆきて、幼兒の在すところの上に止る。かれら星を見て、歡喜に溢れつつ、家に入りて、幼兒のその母マリヤと偕に在すを見、平伏して拜し、かつ寶の匣をあけて、黄金・乳香・沒藥など禮物を献げたり。かくて夢にてヘロデの許に返るなとの御告を蒙り、ほかの路より己が國に去りゆきぬ。その去り往きしのち、視よ、主の使、夢にてヨセフに現れていふ
15. 間奏曲VII(ソプラノ、アルト)
 起きて、幼兒とその母とを携へ、エジプトに逃れ、わが告ぐるまで彼處に留れ。 ヘロデ幼兒を索めて亡さんとするなり
16. 福音史家
 ヨセフ起きて、夜の間に幼兒とその母とを携へて、エジプトに去りゆき、ヘロデの死ぬるまで彼處に留りぬ。 これ主が預言者によりて『我エジプトより我が子を呼び出せり』と云ひ給ひし言の成就せん爲なり。ここにヘロデ、博士たちに賺されたりと悟りて、甚だしく憤ほり、人を遣し、博士たちに由りて詳細にせし時を計り、ベツレヘム及び凡てその邊の地方なる、二歳以下の男の兒をことごとく殺せり。ここに預言者エレミヤによりて云はれたる言は成就したり。 曰く、「聲ラマにありて聞ゆ、慟哭なり、いとどしき悲哀なり。ラケル己が子らを歎き、子等のなき故に慰めらるるを厭ふ」ヘロデ死にてのち、視よ、主の使、夢にてエジプトなるヨセフに現れて言ふ
17. 間奏曲VIII(ソプラノ、アルト)
 起きて、幼兒とその母とを携へ、イスラエルの地にゆけ。 幼兒の生命を索めし者どもは死にたり
18. 福音史家
 ヨセフ起きて、幼兒とその母とを携へ、イスラエルの地に到りしに、アケラオその父ヘロデに代りてユダヤを治むと聞き、彼處に往くことを恐る。 また夢にて御告を蒙り、ガリラヤの地方に退き、ナザレといふ町に到りて住みたり。 これは預言者たちに由りて、『彼はナザレ人と呼ばれん』と云はれたる言の成就せん爲なり。幼兒は漸に成長して健かになり、智慧みち、かつ神の惠その上にありき。
19. 終曲(合唱)
 …Preis sei Gott in der Höhe.

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