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画家は絵が上手くあるべきか

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この二枚の画像はいずれも私の作品です。

上の作品はデジタルで描いた限定100部の版画で、下はアクリル絵の具でキャンバスに描きました。

上の絵はよくイベントでも出品しており、何度もべた褒めされることもありました。版画作品なのでこれまで複数回販売しておりますが、おそらくこれまでの収益はグッズ化も含めても5万円いくか行かないかと言ったところです。

対して下の作品は海外の方にご購入いただいたのですが、いくらで売れたか言うと、1250ユーロ(日本円でおよそ156,000円)でした。

下の作品を見て「この絵、超上手い!」って思う人はあまりいないでしょう。人によってはなんだこの糞みたいな絵は!と思うでしょう。それでも上の作品の累計販売額のおよそ3倍で売れました。

では両者の違いは何でしょうか。

絵の道を志す人は誰もが一度は、絵が上手くなりたい!と思うはずです。実際私もかつては絵の技術を高めることしか考えておらず、技術書を読み漁っておりました。そんな時期に制作したのが上の作品です。

しかし教科書通りの上手さで人から称賛されるレベルの技術が身についても、収益化はなかなか難しいのが現実です。これはデジタル・アナログ両方に言えると思います。如何に画力に優れていても、高値が付きやすいのはせいぜい美人画くらいなのです。

実は絵を買う人というのは意外なほど技術を求めていません。それよりもいかに個性的か、いかに斬新か、いかに力強いかが購入の決め手になることが多く、高く買う人ほどその傾向が顕著です。

彼らは”上手い絵”などとっくの昔に見飽きているのです。もしくは最初から求めていません。彼らが求めるものは魂の表現です。

ネットで自分の作品を公開している上手い絵師は沢山います。今の時代「画力」と言う点に限って言えば、本当にレベルの高い絵師が多いと思います。しかしその中で収益化に成功しているのはほんの一握りでしかありません。”上手い絵”は需要に対して供給過多になっているのが現状と言えます。

せっかくの絵の才能を画力の向上にばかり費やすのはなんとももったいない話です。

私はここ数年デッサンやスケッチするのを止めました。実物の描写力が高くなりすぎると、それに囚われてしまい、かえって自分の線が出にくくなると気づいたのです。

安易に絵は個性だというのは私はあまり好きではありませんが、やはり最終的には際立った個性こそが決め手となります。ですので、一生懸命画力を高めてる絵描き諸君には冷や水を浴びせるようなことを言いますが、よほどテクニカルな絵の仕事を目指すでもない限りは、技術を高めるのはほどほどにしておいた方がよいというのが持論です。

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