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エースコンバット3を逐一語る#11
Mission6について語っていきます。いよいよヒロイン、レナの過去やディジョンとの因縁、そしてナイトレーベンといった、今作の根幹にかかわるワードが登場してストーリが動き始める回です。このステージは敵との空戦もなく、レナと二人で飛行するイベントシーンのようなステージ、ともいえるわけですが、一方でストーリ的に重要な伏線や設定が盛り込まれたステージかと思います。まずはステージ前のムービーから見ていきましょう。
まずUPEOのハンガーに忍び込んだ連中の会話シーンからです。
「これが、Rナンバー…。」
この連中が何者なのかは不明ですが、プレイ当時はUPEOのパイロットか整備員あたりが節操なくRナンバーを導入する様子を見てぼやいてるのかと思いました。まあそういう見方もありだと思いますが、でもそれなら警報が鳴るような場所にわざわざ入る必要はなく堂々と見ればよいので、恐らくジャーナリストか何かがこっそり忍び込んでのセリフかと思います。いい加減なセキュリティなのも張子の虎ゆえなのでしょうか。
その様子をプレイヤーが見ているのは、エレクトロスフィア上で動くAIであるプレイヤーが、エレクトロスフィアを介して監視カメラをハッキングしている、という事なのはプレイした方ならわかるかと思います。
「もう、UPEOのロゴいれたのか。」
「ニューコムも必死なのさ。停戦も終わったな。」
と続くわけですが、この会話を読み取ってみましょうか。
「Rナンバー」というのはニューコム製航空機全体を指す通称です。型式番号がRから始まることからそう呼ぶわけです。このようなニックネームで呼ばれるという事は、ニューコム製の独特のフォルムを持つ、先進的な設計に対する、ある種の称賛を含んでいて、エースコンバット3の世界でのニューコムの評判の一端を見ることができます。ここの「(これが)Rナンバー…」の言い方にそんな雰囲気が感じられますね。
この「Rナンバー」という言葉一つでぐっと物語の世界が深く感じられる仕掛けになっているように思います。
第一にはプレイヤー自身に与える効果で、「Rナンバー」という言葉には作品の顔とも言えるニューコム機にプレイヤーの印象を引き付ける役割があるわけです。プレイ当時わたしが強く感じたのはこの「Rナンバー」に対する「憧れ」のような感情でした。この「Rナンバー」という名称にシビれたわけです。早く自分で操縦したい、という気持ちがあふれていたのを思い出します。こんな風にプレイヤーの心をぐっとゲーム側に近づける効果があるわけです。
第二には劇中の世界描写における効果で、わざわざ「Rナンバー」と呼んで見せることで保守的なゼネラルに対して先進的なニューコム、という対比を表現する、ビジュアルだけではなくて、この世界において二つの対立する組織がどういう風にみられているか、というところまで想像させる力があるわけです。
この言葉一つでエースコンバット3の世界がぐっと奥行きを持った、生き生きとしたモノとして立ち上がってくるわけです。
「もう、UPEOのロゴいれたのか。」
は、ニューコムが機体を提供するという情報をどこかで仕入れていて、実物を確認しに来たらすでにロゴが入っていて、ああもう配備が目前なのか、という事を言っているんですね。思っていたよりもUPEOの動きが速いな、という感じです。
「ニューコムも必死なのさ。」
はそのままで、戦局の打開のためになりふり構っていられない、という事なのでしょうが、必死、というのはちょっと違う気がします。必死と言うと、さもニューコムがゼネラルの反撃を受けて、場当たり的にUPEOにすり寄ったように聞こえますが、ニューコムの政治工作は開戦前から綿密に計画されたものであって、停戦交渉の見返りに機体を提供することもUPEOとの条件に含まれていたでしょうからこれ自体は既定路線なわけです。
提供した機体はR-101 デルフィナス#1というニューコム航空部隊では標準的な機体であり、これがもし最新鋭の高性能機体であるデルフィナス#2や#3であったなら、必死というのも頷けますが。
この辺の齟齬は、ニューコムとUPEOとの間で、停戦までのやり取りがどのように進んでいたのか表になっていないが故の勘違いといったところでしょう。つまり、世間に流れている情報と、当事者の間の情報格差を表しているわけです。世間的には今までゼネラルとべったりで敵対していたUPEOに、ニューコムが急に協力し始めたとなれば、必死、に見えてしますわけです。
ここで、立場によって知っていること、見ているものが違う、という事を見せています。エースコンバット3世界の一般の人達と、三つの組織の中にいて、関わりあっている当事者たちと、そしてプレイヤー。一つの出来事に三つの階層を設けることで、それぞれ立場によって見ているものや方向、その見え方が違う、という事をさりげなく入れてきているんですね。
「停戦も終わったな。」
はゼネラルとニューコムでUPEOの取り合いをしている様子を見て、早晩対立が激化すると踏んでの発言です。これも水面下で行われていた政治工作を知らないが故の発言です。表向きは停戦ですが、その実隠れてバチバチにやりあっていて、この機体供与もその一局面に過ぎないわけですが、そういうことは表沙汰にはなっていない、という事を表しているわけですね。
一見するとRナンバーの顔みせに過ぎない、なんてことのないシーンなんですが、ただの顔見せと見せかけて作り手側の裏の意図をたくさん含んでいる、そんなシーンなのかなと思います。
で、それが終わるとレナからメッセージが届きます。レナとの会話、というか一方向のメッセージですが、まあこれはいかにも無口系ヒロインといった感じの話しぶりですね。はじめは事務的な連絡かな?という感じですが、
と思いきや頬を書きながら言い訳っぽくあいさつするのが大変かわいらしいです。まあ若干デレさせておいて、メインヒロインとしてのつかみはOKといったところですかね。
ミッション通達文書によると、停戦空域を飛ぶゼネラルの偵察機を追跡せよ、との命令なわけですが、ゼネラルの言いなりだったのに急にゼネラルの意図を勘繰るあたり、ちょっと怪しいですよね。この情報はどこから入手したのかも不明ですよね。そんなミッションにレナとリハビリ代わりに飛べ、というのも不可解です。まあ何か裏がありそうだなというわけです。
これはおそらくパーク司令の差し金でしょう。
この渓谷にある施設はハッティーズ渓谷にある「DOE極秘開発施設」です。ストーリー上はのちに明らかになる事ですが、パーク司令はゼネラルに対して対抗心があり、一矢報いるその切り札を得るためにこの極秘施設を手中に収めたいと考えていて、停戦違反を口実に施設を調査することと、そこにレナを接近させることが目的だと思われます。
この施設で過去に行われていた開発計画、というのがこの物語の中核となるわけですが、その顔みせ的なステージです。というところで続きはまた次回。