ココロの声が枯れるまで書く
午前4時。
いつも通りシャワーと歯磨きを済ませ、冷蔵庫から500mlの水を取り出し、仁王立ちで腰に手を当てて一気に飲み干す。
冷たいものが喉から胃に入り、お腹へと流れる感じが好きで毎日続けている。内臓がビックリしているのがたまらなくて、身体に「今日も生きるぞ!」と喝を入れる。
いつも通りのデスクに着き、パソコンを開く。キーボードに手を置いた瞬間、ココロの声が聴こえてくる。
ひとりではない、自分の声なのに大勢の声。ライブ会場の観客のごとくそれぞれがいろんなことを言ってくる。
怒鳴るヤツ。
号泣して言葉にならないコトバを訴えているヤツ。
テンションが高すぎて気が狂っているヤツ。
沈着冷静に誰にも聞こえない声で何か言っているヤツ。
全てのヤツを同時に聴き分けられるほど処理能力は無いので、ひとりずつステージに上げて聞いていく。すると、ヤツはひとつずつヒントを残して去っていく。
忘れてしまわぬよう、A4の紙を折り畳んだだけのシンプルなメモ帳に、文字が生まれる。
ヤツに親指を立て、キーボードを走らせる。一気に書ききれた時は、ヤツはみんな声が枯れている。逆に書ききれなかった時は、耳を澄ますと何かしら叫んでいる。
そんな時は、さらにステージに上げてヒントをもらう。
ココロの声が枯れるまで。