贖罪
ごめんで済むなら警察は要らないから
私にしか使えない言葉を探すことにしました。
そんなことも出来ずして、どうして詩人など名乗れましょうか。
でも、宝探しはいつだって困難を極めます。
泳げないくせに、広大で深い海に潜って
たった一欠片の宝石を取って来なければならないほどに。
だけど、もしそれがあなたの心を再び開く鍵となるのなら、
私は命など顧みず、荒波の海へと飛び込みましょう。
対価に見合わない愚かな行為かも知れない。
でも私の記憶の中に溢れるあなたの笑顔が、
私の背中を押すのです。
人が愛の為ならどれだけでも勇敢になれることを、
教えてくれたのはあなた自身に他ならないのですから。
怖くないと言ったら噓になります。
だけれどもっと怖いのは、もう二度とあなたの笑顔を見れなくなること。
だから私は行くのです。
この震えは武者震いなのだと、自分に言い聞かせて。
とっくのとうに夏の過ぎ去った海には、誰の姿もありません。
私を応援してくれる人など、世界中探しても在りはしません。
だからって孤独を理由に嘆いてる暇など無い。
それに今更、孤独なんて恐れたりはしません。
あなたに出会う前の私がどれほど孤独だったか。
それに比べたらこんなものへっちゃらです。
ずっと、ずっと、ずっと、独りぼっちでした。
それでもいい、仕方がない、と己が運命を享受してきました。
でも一度、誰かの腕の中の温もりを味わってしまったら、
もう一人では生きては行けないのです。
必ず、再び取り戻してみせます。
命すら危険に晒す価値は十分にあると、確信を持って断言できます。
私の正体は臆病者です。
なのにあなただけが私を勇者に変えることができる。
これを奇跡と言わずして、何と呼ぶでしょう。
そう、奇跡は確実に実在するものなのです。
独りぼっちだった頃には想像もしなかったことが、
今まさに起ころうとしています。
少し長くなりましたが、これを以って、贖罪の言葉と
させて頂きます。
それでは、行ってきます。
私が生きて戻ろうがどうなろうが、今のあなたには
どうでもいい事かもしれません。
でも私は必ずあなたの傍に舞い戻ってみせる。
荒れ狂う海よ、私を飲み込むがいい。
苦しむ私を眺めて笑うがいい。
そんな程度で私は負けはしないのだから。
なぜなら私は、勇者なのですから。