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親の車で聴いた曲の話
車酔いの記憶
子どもの頃、家族でドライブする時には、いつも親が好きなB'zのアルバムが流れていた。
私は乗り物酔いしやすい子どもで、30分以上車に乗っていると必ず気分が悪くなっていたのだが、車内で聞くB'zの曲が、その乗り物酔いの感覚とセットで記憶されてしまって、私の中ではすっかりB'z=めまいと吐き気のイメージになってしまった。
特に『BAD COMMUNICATION』がダメだった。大人になった今聞いても、4~5歳ごろに、遠方の遊園地に行く途中で車酔いした時の嫌な感覚がフッと蘇ってくる。
他にも、車酔いの記憶とセットになっている曲はいくつかある。
宇多田ヒカルの『Deep River』。車で40分ほどかかるジャスコ(当時)に行った時に車内で流れていた。気分が悪くなって目を閉じている時に、シタールの音に神経を逆撫でされる思いがした。
『東京NIGHTS』のチェンバロも、音が身体に刺さるようだったのを覚えている。
Every Little Thingの『Dear My Friend』。シンセサイザーとギターの音で具合悪くなってしまい、辛かった。
浜崎あゆみのトランスリミックスなんかも、続けて聞いていると結構キツかった。
あゆの曲を聴くと、車酔いの感覚と共に、この時期に父の車に置かれていた芳香剤の匂いまで蘇ってきて、総合的に「ウッ」となってしまう。
今になってみると、「ギターやシンセなどのキンキンした音色が、車酔いの症状と相性が悪かったのだな」とわかるが、子どもの頃は訳もわからず辛いばかりだった。
親の嗜好が子に影響する
上記に挙げたのは、運悪く体調不良の記憶とセットになってしまった曲たちで、もちろん曲自体に罪はない。
むしろ、大人になって聴き直してみて「こんなにいい曲だったのか」と感動するものばかりである。
親が聞いていた曲というのは、子どもの音楽嗜好にかなり影響があるものだと思う。
繰り返し聞かされる「単純接触回数」の効果もあるだろうし、子どもは「親から与えられたもの=良いもの」と信じる性質を持っているから、無条件に好感を抱きやすいのだろう。
人は、「懐かしい」というだけで何かを好きになることがあるのだと思う。
脳にとって「懐かしい」という感情は、ストレス解消などのポジティブな効果をもたらすらしい。
私自身も、「これ、親が聴いていたな~。懐かしい~」という理由で、宇多田ヒカルをはじめ、globeや大黒摩季などを聴くことがある。確かにそれらの曲を聴いていると、ストレスが解けていく気がしないでもない。
音楽の好みは遺伝するのではないか
親が好きだった曲を子どもも好きになりやすいのは、「繰り返し聞かされた」以外にも、「音楽の好みは遺伝する」という理由があるのではないかと思っている。
私は昔、モーニング娘。の『浪漫~MY DEAR BOY~』という曲がめちゃくちゃ好きだったのだが、父の車でCDをかけたところ、父は「バービーボーイズじゃん!」と珍しくテンションが上がっていた。
調べてみると、サックス演奏でBARBEE BOYSのKONTAが参加している楽曲だった。
私はその時点で、父がBARBEE BOYS好きとは知らなかったし、BARBEE BOYS自体も知らなかったのであるが、この会話をきっかけにベストアルバムを聴き始め、まんまとその魅力にハマったのである。
他にも、私と父は、音楽的な好みが似ていると感じることが多かった。別々にTSUTAYAへ行って、同じアーティストのCDを借りて帰って来たこともあったくらいだ。
音楽の好みは、個人の気質と関係があるという。
確かに、クラシックやオペラが好きな人とラップやクラブミュージックの好きな人とでは、そりゃ気質が違うだろう。
私と父とは、性格や気質が似ているので、音楽の好みも似ているのかもしれない。
逆に、母は私の妹と気質が似ていて、音楽の好みも似ているので、個人的にこの説は信憑性があるんじゃないかと思っている。
吐き気と高揚感の混同
さて、ここからはちょっとトンデモ話。
私はすごく没入できる曲を聴いている時に、大袈裟かもしれないが、「あまりにも曲が良すぎて、どうにかなりそう」と怖くなることがある。何と言うか、曲の高揚感に身体がついていかなくなる感じがするのだ。
最近だと10-FEETの『第ゼロ感』をイヤホンで聴いていて、間奏の音がグワッと盛り上がる所で、ゾクゾクするのと共に、胃が「ウッ」とせり上がる感じがした。
その時に考えたことなのだが、このように、音楽を聴いて「吐き気に似た高揚感」を催すことがあるのなら、もしかすると、子どもの頃の私が車酔いと認識していたうちの何割かは、「曲が良すぎて体が興奮していただけ」という可能性もあるのではないか。
先ほど挙げた「車酔いの記憶とセットになっている曲」と「好みの曲」には、必ずと言っていいほどキンキンキラキラした音が入っている。
ギターがキュインキュインしていたり、金属的な音や電子音、オーケストラヒットが多用されていたり。
私の場合、「車酔いしている時にキンキン音が神経に障る→しかし生来そういう曲が好みなので気分が高揚してしまう→さらに具合が悪くなる」という悪循環が出来上がっていたとしたら、色々と合点がいく。
今更何の役にも立たない考察ではあるが、この結論にたどり着き、自分の中では「そういうことだったのか!」と、結構スッキリした気分だ。
そういうわけで、「親の好きな曲⇔好きな曲を聴いた時の高揚感⇔車酔いの気持ち悪さ」は、三つ巴の相関関係にあるのではあるのではないか?というお話でした。
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