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メンヘラギャルじゃなくても加藤ミリヤ聴くよ

ガラケー時代、加藤ミリヤの『WHY』を着うたにしていた。その当時の心境にマッチしていたからだ。

定番の『Love Forever』や『Last Love』『Aitai』でなくこの曲ってところが、私のジメジメ女っぷりを象徴している。
メールが来るたびに「どうして私じゃダメなのぉ~♪」だもの。

私は加藤ミリヤにすごく詳しいわけではないが、世代的に自然と耳にする機会が多かったので、なんとなくずっと好きで、他にも『SAYONARAベイベー』とか『X.O.X.O.』を着信音にしていた。

加藤ミリヤは、「片思いソングの女王」と称されることがある。

確かに、愛が重めの女性視点の歌詞が多く、しかも愛に応えてくれない男にどうしても惹かれてしまう・・・・みたいなストーリーがよく描かれるから、そのイメージが強いのだろう。

でもそれだけではなく、誰もが持ち得る「幸せになりたい」「満たされたい」感覚や、それに対する葛藤や心の機微を表現するのに長けているアーティストだと思っている。

『勇者たち』という曲を聴いた時に、そう感じた。

さまざまに解釈できる歌詞だが、「憧れの存在でもあった、かつての親友への想い」あるいは「不器用に生きる男性の、別れた後も輝きを増す元彼女への気持ち」と考えるのが自然ではないだろうか。
今はもう以前のように近い存在ではなくなったが、それでも「君」の幸せを願い、自分も変わろうとしている。
切ないようで、不思議と前向きでもある。

タイトルの『勇者たち』は誰を指すのか?おそらく、生きていこうとする人全てだろう。


『神様』も良い。
初めて聴いた時、息が止まるような衝撃を受けた。ストーリー性の高いMVも含めて、胸を鷲掴みにされた。

歌詞に出てくる「神様」は、何の情緒もなく「依存先」と読み替えてしまうこともできる。
心に欠乏感を抱えた「あたし」が、「神様」みたいな存在によって生きる意味を見出す。
言うまでもなく、自分の価値や生きる意味を相手に依存するのは危険な行為であるが、そこに純粋な安らぎと救いがある限り、その相手は「神様」なのである。
「他者から見ると刹那でも、当人にとっては永遠」。そんな、悲しいけれど美しく魅力的な物語が描かれている。

この曲は本人による小説が元になっているらしいが未読。機会があれば読みたい。


ミリヤを評する上で散見されるのが「メンヘラ」というワードである。
確かに「見た目は派手で強気だが、実は繊細」というキャラがハマり過ぎているので、彼女自身がメンヘラギャルのように言われてしまうこともある。

しかし、それこそ『SAYONARAベイベー』なんか見ると、どこか冷静な、三人称的な視点を感じる。
どう転んでも愛を受け取ってもらえなさそうな相手への、一人相撲な恋慕。一人称「私」の目線ではあるが、サビのLINEのスクショみたいな歌詞は、この滑稽でもある哀切な恋愛模様を、俯瞰から描いているようにも思える。

「満たされたい」「幸せになりたい」という切なる希望が、相手の優しさによって断たれている様は、「私」の目線に立つとかなり辛い。
愛を乞う彼女の苦悩はあまりに純粋で、一生懸命で、仮に私が友人だとしても「バカだね、やめときなよ」なんて言えない真剣さがある。
もしかするとその真面目さが、「メンヘラ」と捉えられてしまうのかもしれない。

それにしても、この曲をアップテンポにしたのはすごいセンスだと思う。『Last Love』のように悲痛なスローバラードにすることも出来たはずだが、曲として聴くとすごくスタイリッシュだ。

かと思うと、『この夢が醒めるまで』のように儚げなポップス曲があったり、『KILL MY LOVE』みたいにワンナイトラブを繰り返すウェーイな曲があったり、結構ジャンルに振り幅があって、どれも目が離せない。

加藤ミリヤは、性別も年齢も問わず、聴く人の心の奥深いところを捉えるアーティストだと思っている。

最近では、椎名林檎とのコラボ曲『愛楽』がかなりかっこよかったし、これからもまだまだ進化を見せてくれそうだ。

関係ないが、プライムミュージックで曲を聴いていたら、こんな謎アンケートが表示されてビックリした。一応「ユニーク」に投票しておきました。

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さるなし@誰が見た夢
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