
灯台ツアー:海嘯
灯台の中をゆっくりと登っていく。
結構な広さ。あちこちに窓があり、中はとても明るい。思いのほか風もよく入る。前を行く女性のスカートがひらひらと揺れている。
友人が先頭を進んでいる。
何やら叫んでいるけれど、よく聞き取れない。
ガイド役の彼は、この辺りの景色について話しているか、或いはいつもの潮流の話をしているのだろう。
人々は皆、興味深そうに聞いている。
窓から外を眺めては、なるほど・うんうん、と頷いている。
彼に巧みな話術があるとは思い難いが、彼の海に対する愛情に、人々は引き込まれる。
わたしはこの灯台を登るのは初めてだ。
本当のところ、入場料が要るらしいが、友達のよしみで、ツアーに無料(内緒)で仲間入りさせて貰った。
知り合いが彼以外に誰もいないので、ひとり黙々と登っている。
退屈ではない。誰にも邪魔されることなく人々の様子を観察できるのが、実は楽しい。
海はどこまでも深い青をしている。風が強く、白い波が沖のほうまで続いている。
窓からの潮風がいつまでも肌に残る感じがして、何度も外を見るのだが、海の様子にあまり変化はない。
視線を感じてふと見やると、友人の彼女がにこにこと笑いながらわたしのことを待っていた。
(友人の恋人はなぜか女優の「小雪」さんだった)
わたしはこのとき初めて彼女に会うのだが、友人の恋人だということは以前から知っていた。
失礼のないようにしなくては、と思い、ふたりのことをジロジロ見ないように努める。
でも、ふたり並んでいると友人が彼女の背丈の半分くらいしかないのがすごくすごく可笑しい。
それを彼らに悟られないよう、わたしは努めて自然に振舞っている。
そのとき、波しぶきが小さく顔に当たった。
あれ?と思い外に目をやると、波が大きくうねり、沖からどんどんと打ち寄せてくるのが見えた。
優しい顔の小雪さんが気になる。
彼女は泳げるのだろうか。友人はちゃんと彼女を守れるだろうか。と、心配になる。
でもすぐに、まぁ大丈夫でしょう。と思いなおす。
わたしは長袖を着ていて、これなら海に沈んだときにも大丈夫。と、どこか落ち着いた気持ちで大きな波を待っている。
08/13/2007