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わりと日刊だらく[No.101]〜完璧な日〜


今日の散文


完璧な日


知らず知らずのうちに、完璧な日を望んでいたことに気付く。

文武両道、さらに遊びもやる、そんな日を求めている。


社会的に優秀な人は、そんなことをやっていそうなイメージがある。

朝起きてから寝るまでのルーティンが決まっていて、そのすべてが理にかなっている。


朝起きたらすぐに目が覚めるようにベランダに出る。体操をして軽い筋トレや有酸素運動をする。

インターネットで、SNSやニュースを見て、誰かに必要な連絡をする。

ToDoリストを作り、今日一日のイメージを固める。そして、過去のことを思い出したり、その先のことを考える。ここから一日中、先を見ることをやり続ける、常に未来を決めていく。

朝の4時間に学びたい何かをひたすら学び続ける。そして、出社。

8時間の労働をしつつ、合間の時間で勉強をする。

仮眠を取り、活動中のパフォーマンスを最大限に維持する。

食事は栄養学に基づいていて、自分に必要であろう健康効果を狙っている。食べない時間と食べる時間を分けて、オートファジーを狙う。食べる時は、血糖値が上がらないように食べる順番や、そのタイミング、食べるものなどに気を付けている。

労働中は、ストレスが溜まらないモードに入り、仮にストレスを感じてもすぐに元の感覚に戻り、人間関係・業務・個人的趣味などのために必要な作業のすべてをこなす。

読書は毎日30分は必ずする。

趣味の時間も可能な限り取り、しかし時間が来たらすぐにやめて必要なことをやる。

こうやって完璧な一日が完成する。

どんな時も合理的で、冷静に無難にすべてをこなしている。そんな優秀な人だけが送れる完璧な一日を、おぼろげながら夢想し続け、それを欲するようになった。


だが、僕にはそんな一日を送ることはできない。

出来たとしても、一日中まともであり続ける中で得られるものなど高が知れている。

まともであり続けることが出来るし、その中での蓄積はあるけど、その先がないのだ。少なくとも、僕にはない。

一日中、いつものまともな自分でいて、それを楽しめる。すばらしい人生なのだと思う。社会人がみんなそんな優秀な人たちだったら、どんなにいいだろうと思う。


でも、僕には出来ないのだ。

まともであり続けることができない。僕は遊び続けていかなければならない。

その中にだけ、自分が生きていることを感じられる。


修行をしていると、日々じぶんが成長しているのを感じられる。真剣にそれだけをやると決意していれば、その覚悟があれば、自分の感情や感覚を常に見つめ続けていき、そこから何かを発見することが出来る。

新しい感覚のモードを発見し、言葉でそれを包んで、再現可能にする。そうやって僕の感覚のモードの種類は日々アップデートされる。増えていく。


だが、それはもうこれ以上うしろに下がらないためであり、今ここに踏みとどまっていくためだ。

僕はもう大事なことを忘れたくない。日々じぶんがじぶんであるという感触や、世界のリアリティを失っていく感覚を味わいたくない。

生きている感触が失われていくのは本当につらい。そして、それが何に起因するものなのか理解できずに混乱し続けるのは、不安であり、無能な自分をそのままに死んでいくのかと思うと発狂しそうになる。


僕は労働をやって、祈りをやって、成長したと思う。毎日働いても苦を感じない状態を作ることもできた。これもすごいことだと思う。

でも、後ろに下がらなくなったのはいいけど、今度は前に進めなくなっていた。

厳密に言えば、前に進むための世界のパーツを集めることはできるのだけど、それを組み合わせてカタチにすることができなくなってしまうのだ。


前に進むためには、ひたすらそれらのパーツを組み合わせて、また、必要なパーツを見つけ出して、何が出来るかわからないままでいいから、ひたすら何かを組み上げていくしかない。

インプットとアウトプットを無限に繰り返して、見えなかったものを見れるようにしていくしかない。

それが僕が死ぬまで生きる理由であり目的であるのだと思う。

自分が何をやっているのか、何を求めているのか本当に何もわからないけど、ひたすら動き続けて、何かをカタチにしていくしかないのだと思う。

そのための戦略が昨日書いた「労働期と浮浪期」という区分を生きていくということなのだと思う。

後ろに下がらないように、今いるところにとどまれるように、修行をする。

積み上げた土台の上に、色んなパーツの組み合わせを積み上げて、家を作る。

次の瞬間にはその家は壊れていて、もう大して価値のないものになっているだろうと思う。

でもきっと、その瞬間を毎日味わうために生きているのだと思う。


今日の音楽

超越の祈り


一日を終えて

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