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失恋は行方不明

まえがき

これを元に小説書きました。一部ですが、気になるコピーをピックアップして小説にしています。YOASOBIならぬDARASOBI。それでは読んでください、listen…(狩野英孝風)

こんなのも書いてます!

失恋は行方不明

日本列島の給水時間。

この時期だけは、雨男も雨女もいなくなる。
野菜が喜んでる。が、わたしは喜んでいない。
先輩に彼女がいた。「彼女いない」って言ってたのに。

傘は距離を縮める最強アイテム。
「先輩、入れてください♡」と黒髪ストレートのがあの子が言う。雨の日はあの子がちょっと色っぽい。そのアンニュイな横顔、いいね。

先輩があの子の横顔に話しかけた。

「君がいつでも入れるように、大きめの傘を買った」

ってなんだよ。聞こえてるよ。雨音にかき消されてないし。 

だってほら、傘の中なら2人きり。ひとつ傘の下。わたしが後ろにいることに気がつかないのも失恋したのも。全部。

雨のせいだ。

近付かないと濡れちゃうよ? しょうがないよね、「ディスタンス」って言っても傘の大きさは決まってるから。ああ、わたしはなんて意地悪なんだ。わたしの代わりに、空が泣いてくれた。

気づいたら、上を向いて歩いている。
我慢できない。流れる涙を、隠してくれた。

くせ毛はさらに広がる。ノーメイクでも誰も見てない。ダサいTシャツを、レインコートで隠した。
先輩が、好きだったダサいブランド。なんで買ったんだろ。はーっ。サボろ。
わたしは、大学とは反対方向に歩き出した。

コンビニをのぞく。いつも忙しそうなショートカットでキュートなメガネのコンビニの店員さん。今日は談笑してて楽しそう。同じ時給なら、暇な方がいい。雨音は、都会の喧騒を少しだけやわらげてくれる。

いつもの紫陽花。
雨がしたたる姿が、紫陽花の本当の美しさだと思う。わたしは駅に向かった。BG雨。
電車の中で、まさかの同級生と出会う。

「おまえもサボりかよ」

「だれ」

彼は雨の日だけ、コンタクトレンズになる。
電車の音に混ざりながら、わたしはつぶやく。

「先輩に彼女いた」

ふーんといいつつ、かすかに電車に揺られながら彼もつぶやく。

「水もしたたるいい日本」

もうすぐ彼の目的地、TSUTAYA。なんとかっていうブルーレイ・ディスクを買って観るらしい。あのシーンは雨なしでは成り立たない。とかなんとか言ってたな。

帰らないで、は言えない。
雨すごいね、どうする?は言える。

ひとりはいやだな。こんな雨。電車の窓を叩きつける雨。

「どこにも行けないね。
ウチで映画でも観る?」

突然、わたしの顔をのぞきこむ彼。雨、のち、モイスト効果。わたしの心が癒されていく。

「じゃピザ食べよ!」

「雨の日割引」で検索。雨の日は、ピザが安い。

「検索早っ」

彼は笑った。雨の日でも笑顔な人は、
きっと素敵な人だ。

雨のち彼。自転車じゃなく電車に乗ったから、
キミと出会えた。癖っ毛を可愛いと言われた。

なんだか。梅雨でも楽しい。
やっぱり、この人で、正解だ。

ふられて、恋がはじまった。

あとがき

ローラーさん、審査お疲れさまです。今回もローラーさんのコメントある人いるよ。買ってね!








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だら子
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