読書石けん【毎週ショートショートnote】
読書の趣味が全然違った。私は恋愛系、私の彼は、歴史物。お互いに借りて読もうとも思わなかったけれど、同じ空間で違う本を読むことに幸せを感じていた。
ブラックコーヒーの私と、ミルクティーの彼。そして、ボティーソープの私と、石けんの彼。
石けんとボティーソープが並ぶ風呂場。
本がシワシワになっても湯船で読み続けるあなたがいなくなったのは、石けんを綺麗に使いきった夜だった。
「もう大丈夫だよね?」彼は私をのぞき込む。
「無理だよ。あなたがいないと生きていけない」
風呂上がりの私の髪から水滴が滴る。いや、これは私の涙だ。
「生きてんじゃん。僕がいなくても。僕はこの世にもういないんだから」
「歴史小説を1ページずつ毎日読むこと、石けんで体を洗うこと」
そして。
石けんがなくなるまでの期間限定で「彼はここにいる」と約束した。
歴史小説も石けんもなかなか良かったよ。でもやっぱり恋愛小説とボディーソープが好き。私は絶望しながらも少し前を向く。
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