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生き写しバトル【毎週ショートショートnote】

「わたしが隠し子のA子よ」
「わたしがAよ」

「奥様いかがいたしましょう…」

秘書があわてふためく。

「2人とも、まるで夫の生き写し…」

「お父さんとはたまに会って一緒に喫茶店に行く仲でした」
「チーズケーキを半分こしてました」

どのエピソードも本当っぽいわね。困ったわ遺言書には、「子は1人」と…。

その時、ドアがバンと開く。

「わたしが本当の子よ!
ここに生前に父からもらった手紙があるわ!!」

「えっ、全然っ似てない」

真実とはそんなもん…。
いえ、この話はここからが真実。

「はいーバイト料」
「こんなに?ありがとう。いやー奥様の小芝居すごかったね」

「あなたたちいい女優になるわ」

すべては
「弟には相続したくない」そうつぶやいていた夫のため。
生前から、計画を立てていたのだ。

「わたしたち、子はいなくてもよき夫婦だったのよ」

わたしはかつて通った喫茶店を思い出すのと同時に上を向いて涙を止めた。

「またご飯食べようよ」
うなずきながら双子たちが提案してくれる。

「夫と似ていない娘、これが一番リアリティよね」

喫茶店でバイトしていた夫と顔が全く似ていない子が自慢げに続ける

「でもさ、わたしたち、顔似てきてない?」

「共犯者だからね」
わたしたちは、夫の遺影を一斉に見る。

甘党の夫のために、今日もチーズケーキ半分お供えしよう。


あなたのサポートがわたしの自信。とにかく生きる希望ー!