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初めての鬼

初めての鬼役を任された。

恵方巻きをたべ、ビールを飲みほろ酔いの中、そろそろかと初めての鬼の準備する。

仕事が忙しくて、家事も育児も任せきり。妻の機嫌は毎日すこぶる悪かったが、節分が近づくにつれ、笑う姿を見かけるようになった。

子どもも歩くようになり育児に余裕で出たのかもしれない。

家族は最高だ。何もしなくても俺を受け入れてくれる。

鬼の仮面をかぶり、一旦外にでた。再び入ろうとすると鍵がかかる音がカチャリと聞こえた。

なんの冗談だよ。思いインターホンを鳴らす。鬼の顔が広がったのか息子が大泣きしている。

「鬼は、中には入れられないのよ」

妻はなぜ笑っているんだ!?

下を向くと足からみるみる赤くなり、津波のようにじわじわと身体を侵食した。

パニックになり頭を掻きむしると、固いものにあたる。まさか。

俺は鬼になってしまった。悪いことなど何もしてないのに。

そうか…何もしなかったから鬼になったのか。

時は令和。涙だけは、透明だった。







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だら子
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