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ルールを知らないオーナメント【毎週ショートショートnote】

「これだけは覚えてほしい」
担任はスパンコールの服で涙をふいた。

「電池がなければ、リモコンがただの棒のように、オーナメントがなければ、モミの木は輝かない。君たちには役割がある。モミの木のてっぺんは星であり、リボンではない。
上段で輝くモノ、下段で輝くモノ。ルールを知ればこそわかる。大きく胸を張れ」

12月23日、僕たちはオーナメント学校卒業した。

「なあ星、おまえ来年どこで働くの?」
僕がたずねると気まずそうに星は答えた。
「高島屋デパートのクリスマスツリーの上」
「あっ今話題の…」

僕はクリスマスオーナメントの銀色の丸飾り。
落ちても、子どもにもぎ取られても、気にしない。必死にツリーにしがみつく。それが僕の教えてもらったルールだ。

「なあ…明日のバイトばっくれるか」

星の誘いは断れない。
僕らは夜、盗めず借りたバイクで走り出す。
最初で最後の「ルールを知らないフリ」

僕らがいないと少し世界は霞むだろうか。
銀色の背中に朝日があたたかい。

(410字)


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だら子
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