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仮装する擬態生物/8月のエッセイ
SNS上で、動画という形で顔を晒している。その姿は現実の私とはちと違う。濃い化粧を施し、様々な被り物をして着飾る。撮影時には、画面に様々な効果をかけるフィルター機能を使う。このフィルター加工が優れもので、気になる見た目を理想の風貌に作り上げてくれる。いわゆる「盛り」である。盛った姿は正直「これが私です」とは言い難い。半分は私、もう半分は作り込んだ私なのだ。わたしふうの人と言った方が正しい。出来れば、ネット上にいるバーチャル私だと言いたい。
さらにライトを浴び顔の影を吹っ飛ばし、年齢を感じない顔にして撮影をする。はっきり言う。わたし風の私でもなく、シネマジェンヌのダラとなる。
メイクはのってるのかカメラの角度やライトのあて方、余計なものが映りこんでいないかなど背景にまで気を配る。
特に動物カチューシャや、振るとベゴベゴ音が鳴るヘンテコなアイテムは「仮装がいいね」と言われ評判がいい。その裏には、画面がつまらない物になっていないか、どう映っているのか真剣に取り組む自分がいる。ダラという役に入ったプロデューサーは、TVアナウンサーや女優気分で撮影に挑んでいるのだ。
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スマートフォンで撮影するというのは、内側に付いたカメラのレンズをじっと見つめるのではなく、今まさに画面に映る自分に向かって喋る。どう見えているのか、喋りながら同時に考える。女優兼、撮影監督のようなものだ。なんなら簡単な台本だって用意している。名MCのような気分だ。
撮影を終えると即座に編集、必要であれば音楽を選び、視聴者に分かりやすくをモットーに作成する。より見やすい動画にする為に、実は細かく考えている。これはもう、作品。映画とまではいかないが、やればやるほど懲りたくなる。時間こそ掛けないようにしているが、私はちょっとしたクリエイターだ。
撮影すると前もって決めた場合は、前日からフェイクマスクでお肌を整え、着る服も準備する。うーーん、女優気分。
大好きな映画の話しをして、映像作品をクリエイト出来て、皆さんに映画の素晴らしさをお伝えしている、、♡
そう思うと、とっても気分がいい。充実とは正にこういうこと。
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バーチャルな私は、この先どうなるのだろう。映像業界はすでに、AIを加えた女優やモデルを使っている。ほぼ人形なのだ。という事は今後わたしは、アバターのように、アニメーションで動く擬人になるかもしれない。そうなると、いよいよ本当に私でないと思われる。仮装が仮想になる。だけどそれは進化と言えるのではないだろうか。環境に適応し生き残る擬態昆虫のようにインターネット上を渡り歩ければそれでいい。そう思っている今日この頃だ。
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