♯071 他者から与えられる目標にすがっていては自分が見えなくなってしまう【レイジング ブル】上映中
現在、午前10時の映画祭 Bグループで上映中。
【ストーリー】
クラブを経営する1964年のラモッタは、
控室でお客を沸かせる為に準備している。
肉つきのいい体型の彼の過去は、
ブロンクスの怒れる牡牛(レイジングブル)と呼ばれた
プロボクサーだった。1941年、ラモッタはプロデビュー後、
セコンドの弟ジョーイと共に順調に実力をつけていった。
だが次第に八百長を強いてくる組織、自身の妻や弟との
関係に陰りが生じていく。
【解説というか、レビューというか】ネタバレあり
実在のプロボクサー、ミドル級元世界王者ジェイク・ラモッタの
栄光と凋落の半生。彼がどんな人物なのかを描く伝記映画。
リングでは力を全て出し切り、決してダウンしない
ラモッタの私生活は、信頼できるセコンドの弟と、
一目惚れして手に入れた美人妻との関係で
安定を保っていた。
だが、自分が常に有利でなくてはならない
ファイターであるラモッタは、
そのプレッシャーや不安を打ち消すために、
家族に対して猜疑心が強くなっていく。
彼にとってもっとも大事はずである弟も、美しい妻も
信じられず、執拗に攻め立てては
自我を失っていくラモッタ。
嫌気さした家族はそんなラモッタから次第に離れていく。
そして彼の栄光は徐々に落ちぶれていく。
ボクサーを辞め、クラブを経営をし始めたラモッタは、
コメディアンとして再起を図る。
だが、
チャンプの面影なくステージに立つラモッタは、
こんな生き方は自分らしくないと
自暴自棄に陥いってしまう。
輝かしい栄光は完全に過去のものとなり、
己の無力さに気がついたラモッタ。
王者という名誉は、他者から与えられる目標だ。
それにすがり続けていれば、
落ちた人生から這い上がれない。
リングを降りた後も人生は続くのだ。
自分の価値はリングにあるのではなかった。
落ちぶれた人生にダウンしない、
“ブルファイト”
これがラモッタの自分らしさであり誇りだ。
家族を失い、栄光の全てをも失った男が、
持ち前のブルファイトで自分を取り戻す。
この映画は、
強い格闘家になるお話しではなくて、
己の弱さを受け入れた、精神的に強くなった
男のお話しなのです。
【memo】
徹底した役作りのロバート・デニーロ。
ボッコボコに撃たれてる時の血潮がすんごいよ。
表現という枠を超えて、魂でラモッタを演じてます。
✳︎合わせてみたい映画
スコセッシ監督とデニーロの映画といえば、
『タクシードライバー』
やっぱこれだ。