底光りする悪/悪役に惹かれて
極悪女王というドラマが話題になっている。
女子プロレスが舞台のドラマだ。だがわたし、女子プロレスをまるで知らない。おおかた格闘技を基本としたスポーツだと思っている。暴力的で危険な試合の裏にどうやら派閥みたいなのがあって、ヒールと呼ばれる悪役がいるらしい。その対抗として正統派もいて、競技なのに正義と悪がある。その闘いをストーリー性を持って観客へ見せている。ここが何とも不思議でよく分からない。エンタメと競技が混在していて独特だなと思う。今回このドラマを見てその世界観に浸り、どっぷりとハマってしまったという訳だ。
主人公のモデルとなったダンプ松本さんは、極悪党を率いるヒールだ。
普段から映画を多く観る私だが、気に入る役者さんは大体悪役を魅力的に演じる役者さん。女子プロレスもやはり、ヒールに魅力を感じる。奇抜なメイク、非道な武器。次々に話題作を出しているネットフリックスさんだって主人公にするのが悪役なのだ。
では、悪役の魅力は何か。
正義や正論だけでは罷り通らない主義主張を持っている所にあるのではないかと思う。ドラマの中でも描かれていた部分、ダンプ松本さんは辛い学生時代があった。父親のDV、金銭問題やなど母親が苦しむ姿をずっと見ている。幼さゆえ、父親に立ち向かってもどうにもならない現実を味わっている。また成長してレスラーとしてデビューしても、思うようにならない社会現実にぶち当たる。悪役たちの背景には悲しい過去が必ずある。そこに光を当てるのが悪という「役」だ。そして彼らの悲しみは現在に至っても、ずっと続いている。その苦しみに対抗するべく、プロレスという場所で発散出来なかった怒りを爆発させる。その悲痛な叫びをヒールという形でエンタメにしているからプロレスってのは何とも底光りがある。惹きつけられるのはきっとそれが理由だ。
複雑に絡むフィクションとノンフィクション。数ある格闘技のなかでも極めて暴力的ではないだろうか。しかもレフェリーが殴られたりド贔屓したりと、令和というコンプライアンスの時代にこの荒れよう。女性の抑えられた理性を爆発させる合法的な場。プロレスという世界の中だけは無法みたいな、エンタメ兼スポーツみたいな、たった5話だけど女子プロレスの世界に魅了されたのでありました。
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もちろんダンプ松本さん自身は悪じゃありません。悪役に徹した素晴らしいお人。YouTubeで現在のお姿が見られます。素顔でお話しする姿に驚きです。そこも含めてドラマ「極悪女王」お勧め!