フラフラフラフライング黒豆
枕木のように連なった雲は山へと向かい、そこで溜まった雪雲の中へ溶けていく。
そう、私たちは山際へと向かっているのだ。途中に立ち寄ったコンビニでは風もなく、思ったより暖かいなんて言っていたのがまるで昨日のようなほど、同じ日の天気と体感温度とは思えない。
あちらの山でも、こちらの山でも山頂が雪雲の中に浸かっている。
元日は御来光登山と決まって3年目。登山に要する時間も、当日の人の流れの混雑も、夜明け前の寒さも大体分かってきた頃である。前日まで、及び登山後の過ごし方も大体決まっている。世の中のスーパー、コンビニなどは三が日でも営業してくれている。都会も地方も差異があまりないが、大晦日と三が日の3日間くらいはそういうことに頼らずに行きられる人間になりたくて、年末に山際へ籠もることついでに、移動日に必要そうなものの八割は揃えて、それでも足りないものを翌日買い足して終わりにする。次の日に買うことができたとしても、買わない。それでも十分間に合う。
おせちを誂えるにしても、我が家はプラントベースなので精進おせちになるのだが、自分でやり遂げるにはまだ修行が足りない。かといって、それほど作るものも多くはないので、煮豆、煮物、酢の物はくらいは自分で用意している。今年はいただいた柿や柚子の最後の一欠片をなますに入れることができた。保存が効く小豆餡を先行で作り、たっぷり時間をかけて浸水させたい黒豆は一日浸水させながら移動し、灯油ストーブの魔法をかけて、無事、艶のあるふっくらとした黒豆煮に仕上がった。
来年から、登山アプローチの一環として体質強化の一面から糖質のことも考えるようにしようと結論がついていたので、今回から餡豆も煮豆も砂糖を大幅にカット。移動日で身体もそれほど使わない今日みたいな日は一品でもいいとする、など新たなルールの元、一日が終わりを迎える。
もう、明日にでも大晦日がやってきても大丈夫だと思えるほど、十分に過ごせるだけの素材が冷蔵庫に入ったので、明日と明後日は何の憂慮もなく、時間を時間いっぱいで過ごせることができそう。