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塗装現場からのメッセージ《第17回》耐候性を高める塗装

フッ素・シリコーン・セラミック塗装


本コーナーでは、豊富な経験と実績を誇る茨城県稲敷郡阿見町の塗装専業メーカー、㈱技研・代表取締役 宮本勇気(みやもと ゆうき)氏が、塗装現場におけるさまざまな課題解決のためのヒントを伝授します。

※本記事は「塗装技術」誌に掲載されたものです

塗装における耐候性

塗装における耐候性とは、気候や環境変化に耐える塗膜性能のことである。
塗膜が屋外の環境に晒された際の紫外線や太陽光、季節による温度変化、日照時間の変化、雨・風など、自然環境の中で受けるストレスに対する耐性を指している。
このような環境条件に対応できる塗膜を、耐候性の高い塗膜と表現される。これに似た性能で光(紫外線)に的を絞った耐光性という評価項目もあるが、これとは異なるので注意が必要である。

耐候性が弱い塗膜の問題

耐候性が不十分な場合の例として、窓際に置いてあったものが色あせてしまったり、長く使った洗濯バサミがボロボロになってしまったりという経験は皆があるのではないだろうか。
耐候性の弱い塗料で塗装を行った場合、使用されている樹脂により違いはあるが、屋外で使用した場合に塗膜の劣化が早く、白化やチョーキング( チョークのような白い粉の発生)、ひび割れなどが短期間で発生してしまう。
塗膜の寿命は短く、さらには同時に塗装された製品自体の寿命も短くなってしまうという問題がある。

チョーキングの例
塗膜のひび割れの例

耐候性を高める目的とメリット

上記の問題の逆であるが、耐候性を高めるメリットは、塗膜と製品の寿命を長く保つことができる点にある。高耐候性の塗装をする目的には以下の2つが挙げられる。

  1. 外観の長寿命化:塗膜の寿命を長く保つことができ、長期間美観や性能を保つことが可能

  2. 素材の保護:耐候性の弱い素材であっても、塗装をすることで紫外線や酸性雨などから素材を守ることができる

高耐候性を高める塗装方法

耐候性の高い塗装の代表的な塗装としてはフッ素・シリコーン・セラミックなど科学的変化の少ない顔料をメインにした塗装や、紫外線吸収剤を含有させた塗料を使用することで、耐候性の高い塗膜を作ることが可能になる。
フッ素・シリコーン・セラミック系の塗装は、耐候性の他にも、撥水性、耐摩耗性、耐腐食性、耐油性、耐湿潤性、耐汚染性、耐滑り性など、さまざまな機能性がある。また、塗膜を長期間にわたって保護できるという特徴もある。

さまざまな場所で要求される耐候性+α

塗装膜の耐候性能はさまざまな業界や場所で必要とされており、住宅部品などの建材部品や住宅設備部品の他、船舶、機械、自動車、電子機器などありとあらゆる業界で必要とされている。
住宅部品や船舶関連などは高い耐候性の他に耐水性や耐汚染性、自動車関連などは耐食性など、いずれも高い耐候性の他にも必要な塗膜性能があり、複合的な高い塗膜性能が必要とされる。

塗装業者としての役割

当社へは塗装に関するご相談、塗料選定の依頼などさまざまな案件の問い合わせがある。
製品ごとに使用用途が異なるため、使用される環境や求められる性能が異なる。よって耐候性に限らず、さまざまな性能を求められる場合が多くある。
塗料には、色や顔料、樹脂の種類によって、さまざまな特徴がある。中には紫外線に弱い顔料や、薬品に弱い顔料や樹脂など、弱点を持つものも含まれる。要求されるスペック、使用される環境に応じて、用途に合った適切な塗料を選定できる知識を高め、顧客へ提案していくことが塗装会社の務めであろう。

㈱技研…1985 年1 月創業。シリコン加工・テフロン加工・金属およびプラスチック部品の塗装・印刷・組立その他加工全般を手掛ける。取扱品目は製菓、製パン用天板、住宅関連部品、自動車部品、弱電部品、時計部品、その他関連商品・各種部品。

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