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【長編小説】もう一度あなたに会うために(46話~50話)

2024年。再婚したあの人と暮らす生活はすごく幸せだった…。それなのに突然過去に戻ってしまった私は、もう一度あの人に会うために、忠実に人生をやり直すと決めた…それが例え、辛い過去だったとしても…

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後編 あの人に会ってから

46話 相続放棄

兄は、後妻さんの話をした時に…

実は…と語りだした。

兄は、父が入院した日に

私が父に会いに行った後に病院に行った。

その時に、父が…

「後妻さんに、お金をやりたくない」と言ったそうだ。

父への態度がよっぽど酷かったのかもしれないと…思ったけど

最後まで見て貰ったし…と思っていたと話した。


兄は、父が元気な頃から

内緒で父に度々、お金を借りに行っていた。

それは聞いていたが…

だから、父は生命保険の受取を兄から私に変更したのだ。


それと、兄は姉に言われて中古の家を買うと言い出した。

それで、家を探して買おうとしたが…

兄は自己破産しているから兄の名義では買えなかった。

それで、兄は甥っ子の名義で買うことにして

父に保証人になって欲しいと頼み、父は連帯保証人になっていた。


私は、無いとは思うけど…

兄も甥っ子も払えなくなって保証人が亡くなっていたら

相続人の所に来るかもしれない。

私は、生命保険は貰っているし…

遺産は要らないと思った。

だから、相続放棄をすることにした。


あの人のお父さんの時にお世話になった

司法書士事務所に頼んだ。


だから、相続は後妻さんと兄で二分の一ということになった。


兄は、後妻さんにそれを告げて

マンションもすぐ売れるか分からないけど

マンションを売って現金と合わせて二分の一にするか

現金かマンションか、どちらかを選ぶのがいいか

決めて欲しいと提案した。


その時に、後妻さんに香典を返して欲しいと言ったら

後妻さんは、「銀行に入れたから今は無い」と言った。

私は「香典返しの手続きをして、もうお金も払ったから

今度、お金を出しておいて下さい」と頼んだ。

父は、定年退職した時に金のネックレスを買っていた。

兄が、後妻さんに知らないかと聞いたけど

後妻さんは知らないと…

本当に無かったのかは定かじゃないけど…


後妻さんは父の服等、早々に売りに行って処分していた。

この人は、本当に冷たい人だな…


私は父から、墓が骨壺でいっぱいだから

保険金で墓を広くして欲しいと頼まれていたから

墓石屋さんに頼んで広くして貰った。


父が亡くなって1年近くなって…

ようやく、後妻さんから

「私は、マンションを貰うことにした」

と連絡があった。


兄は、書類を作成して

後妻さんと書類を交わした。

父の荷物は、兄がトラックで来て運ぶと言ったら

後妻さんは、「仏壇も持って行って欲しい」と言った。

これにも驚いたが…

運ぶ当日…作業していたら

「遺影も持っていって」と言った。

どこまで、酷い人なんだろうと…

私も兄も驚いた…

その時に、香典をやっと返してくれた。

私は、父のカメラを貰った…


1周忌は、後妻さんも呼んだが…

その後の会食には出ず、お寺だけで帰ると帰って行った。


兄とは、現金は今後のお寺の費用に使うと

約束したけれど…

すぐ、他の事に使ってしまったのかもしれない…


こうして、父の遺産相続の決着は着いた。


あの人は

「父は幸せだったと思う。亡くなる時に、みんなに来て貰ってその中で死んでいくって、すごく幸せだと思うよ」

と、泣きながら言ってくれた。

再婚もして、家にも呼ぶことが出来て

安心して逝けたかな…

ただ…

今度うちのお風呂に入りたいと言っていた

父との約束は実現できなかった…


会いに行かなかった日に会いに行っただけでは

足りない…

どう頑張ったとしても…

どんなに人生をやり直したとしても…

人が亡くなったら後悔するもんなんだな…


しかも、出来事を変えてしまったら

影響が出てしまう…

それはハッキリと分かった。

47話 新たな決意

父が亡くなってからも、仕事は充実していた。

責任のある立場にもなったし…

でも、私は知識が無いことに悩んでいた。

保護者と責任ある立場で話をするのに

もっと知識を獲たいと思った。

ま、会社が不正をしていたから

それがバレたら私は終わってしまう。

それが怖かったというのもあるが…


考えて…

新たな挑戦をすることにした。

それは、福祉系の大学に行くこと。


でも、私は高校中退…

その前に、高校を卒業しなければ大学には行けない。

今更…高校に行く?

定時制?通信制?

それで、行きついたのは

高校卒業程度認定試験だ…


まず、あの人に

「会社を辞めて通信の大学に行こうと思う」

と言ったら驚いて…

「すごい大変だと思うよ。通信って続かない人が多いって聞くよ。高校卒業程度認定も簡単じゃないでしょ。大丈夫なの?」

と言われたけど…

頑張ると話をすると…

「それだけ考えているなら、応援はする」と言ってくれた。


二男に

「お母さん、大学に行こうと思う。その前に高校卒業なんだよね」と話すと

「今日、まさに学校で年を取ってから高校に行った人の映画を見た…母さんも行くの?」と驚いたように言って来た。

「いや…流石にこの歳で今更高校の制服は着れないよ」と笑って言った。

「高校卒業程度認定試験を受けようと思う」と言うと

二男は「母さん、分数分かるの?」

私は「分数…分数ってどうやって計算するんだっけ?」

言われてみれば…

私は、中学ではロクに勉強していない…

数学なんてルートから教科書を開いてなくて

高校受験の時、焦って勉強したぐらいだった…

でも分数は小学生だけど…

覚えていない…

私は気付いた。バカだったことを…

その日、二男に分数を習った。


それから…色々調べて

高校卒業程度認定の学校に行こうと思い

その学校に話を聞きに行った。

すると…大変かもしれないけど

3か月後の試験も受けた方がいいと言われた。

受かる教科があれば次が楽だと…

それと、もし11月の試験に落ちてしまっても

単位を取れば合格になる。

でも2県隣の学校まで行って泊りがけで

単位を取ることになると聞いた。


会社に訳を話して辞めたいと言った。

社長は「困るけど決意が固いなら仕方ない。引継ぎをしっかりしてくれたらいいよ」と言ってくれた。

一緒に働いていた友達は

「大学卒業するのって何歳なの?本当にいいの?」

と怒り気味だったけど…

結局は、応援すると言ってくれた。


私は、会社で給与や経理の仕事もしていたから

すぐ辞めることが出来ないので

引継ぎ期間を長くしていた。

それから、仕事をしながら

夜、勉強をするという生活が始まった。


最初の試験は

現代社会・国語・英語・数学・科学と人間生活

の5教科だった。

今回は、英語は諦めよう。

数学を中心に勉強した。

本当は試験は翌日もあるのだが

仕事は日程的に1日しか休めなかった。


正直、また勉強をすると思ってなかった。

1回目の人生でも、あんなに勉強したのに…

しかも、勉強の事ほとんど覚えていない…


試験当日…

すごい緊張した。

試験会場には、思ったより色々な人がいた。

若い子が多かったけど…

制服を着た子、派手な子、オタクっぽい子…

でも、以外にも年齢層が高い人が沢山いた。

結構なお年寄りも…


私は、英語は全く分からなかったので

適当に答えを書いて…11月にかけようと思った。


帰ってから試験の速報で答えが発表されてから

答え合わせをした。

合格は40点以上なのだが…

なんと適当に答えを書いた、英語が40点で合格してしまった。

そしてなぜか…現代社会を落としてしまった…

不安だった数学も合格…

国語と科学と人間生活も合格だった。


残りの試験科目は、4科目…

48話 高卒認定試験2日目

今まで、お盆休みは家族で旅行に行っていた。

でも、あの人からのキツイお言葉

「大学を卒業するまで旅行には行きません」

「それくらい我慢して勉強に専念してもらわないと」

と言われてしまった。


あの人は、努力しないことを嫌う。

頑張る人を応援する人だ…

でも、厳しい…


日帰りなら良いというお達しだったので

お盆休みに、不合格だった教科の単位を取る学校に連れて行って貰った。

一人で行かなければいけないので

シュミレーションをするために…

学校近くの駅で降りたと想定して

バス停を見たり…

学校の場所も確認した。

それと、泊まるホテルも確認した。

少しだけ観光もしてくれて…

美味しい物も食べた。


8月下旬には、科目合格通知が来た。

自己採点通りだった。

会社も退職した。

オープンから就職して

最初は、1人の子どもを4人で見ていた。

経営も厳しくて…どうなるかと思ったけど

軌道に乗って…

退職の日は泣いてくれる子どももいた…


それからは、あと4科目の合格のために勉強しまくった。

残りの科目は

落としてしまった現代社会・日本史・世界史・生物。


あの人は、私と同じ高校中退で

最終学歴は中卒だ。

あの人は、私が勉強しているのを見て

触発されたのか…

「俺も、試験受けてみようかな」と言い出した。

中卒というコンプレックスもあったのだろう。

11月に一緒に試験を受けることになった。


試験1日目

私は現代社会のみ受験した。

あの人は、受けれる科目は受けて…

2日目も一緒に行って受験した。

結果は…

私はすべての科目を合格した。

あの人は、まったく勉強していなかったのに

数学以外の科目は合格…

「数学なめてたわ」と悔しそうに言った。


単位を取りに行く合宿に行かなくて済んだ。


12月に合格通知が来て

私は49歳にして高卒となった。


それから、大学は東京の通信大学に決めた。

卒業したら社会福祉士の受験資格が得られる。

他には、児童指導員の任用資格や社会福祉主事の資格も貰える。

1年以上の福祉の経験があったら実習も免除になる。


他にも色々な通信大学があったが

スクーリングの期間が纏まってあったり…

毎月あったり…

でも東京の大学は3年で2日間のスクーリングが3回

4年で半日のスクーリングが1回だけなので

費用的にもあまりかからない。


志望動機書を書いて送った。

それで合格が決まる。


2月、合格通知が届いた。


私は、東京も行ったことがないし

飛行機も乗ったことがない…

それで、あの人が

「安いプランとか見つけて行ってみたら?二男も春休みなら一緒にいけるんじゃない?」

と言ってくれた。

安いプランを見つけて二男と行くことにした。


二男は飛行機が苦手だったが付き合ってくれた。

成田に着いて

大学に行くシュミレーションをするために

東京駅に行ってから大学に行って

駅の周りのホテルの確認をした。

それが済んでからは観光…

その日、マラソンしていて

予定のバスに乗れなくて迷いながら…東京タワーに行った。

ホテルに泊まり…

翌日は、はとバスに乗って観光…

二男と2人で旅行に行くことも

これからは無いかもしれない…

と思っていた1度目の人生…

また、来れて良かった。

そう思いながら楽しんだ。


そして…

4月から大学生活が始まった…

2度目の大学生活…

また、あの日が近づいていく…

49話 元夫が出所した

大学生活が始まり…

私は毎日、家事が済んだら勉強をするという

生活を送っていた。

社会福祉と英語は小テストを繰り返してそれをクリアしたら

単位試験を受けるという繰り返し…

大変なのは福祉以外の教科だ。

レポートを書かなければいけない。

レポートなんて書くのは初めてで…

最初は、不合格ばかり…

だいぶ鍛えて貰ったけど…

図書館に本を借りに行ったり…結構大変だった。

しかも…誰も共有できる人もいない。

本当に孤独との闘い…


1年生の終わり…

知り合いから電話があって…

元夫が出所したと聞いた。

知り合いは迎えに行ったらしいが…

元夫は、今回は誰もいなくて寂しい刑務所生活だったと嘆いていたと…

それで、また長男の電話番号を教えて欲しいと言っていると…

私は、長男に連絡したが「教えていいよー」と言うから電話番号を教えた。


それから私は、予定通り1年の単位を取り

2年生になった。

二男は、高校で資格を取って大学の資格推薦を受け、合格して大学生になった。

我が家は、大学生が2人になった。


少しして、長男は「お父さんに会ったよ」

と言って来た。

「見た目もずいぶん変わってたよ。呂律回ってないから何を言ってるか分からなかった。障がい者認定されたらしい」

「二男に会いたいって言ったから、じゃ仕事してしっかりしないとねと言ったよ」

「携帯電話が作れないらしく…作って貰えないかと言われたから考えさせてと言った」

と言うから私は

「やめといた方がいいよ。払ってもらえなくなるかもよ」と言った。

「母さん元気かと聞かれたから、元気よ。再婚したよ」と言ったら

「知ってる、家も引っ越したんだろ」と言っていたそうだ。

「それと…二男の写真が欲しいらしい」

「写真だけでもあげたら?」

と言うから…写真だけならいいかと

二男の写真を撮って長男に送った。

それを元夫に送ったと聞いた。


長男が二男を父さんに会わせるか考えてみてと言うから、あの人にも相談した。

あの人は

「後で後悔しないように会えるうちに会った方がいいかも…」

あの人も、自分のお父さんのことがあるから…

そう、言ってくれたのかもしれない…

二男も

「兄ちゃんが一緒に会ってくれるならいいよ」と言うから

長男に、それを伝えていつか会おうという話になっていた。


1度目の人生では、この数日後…

知り合いから電話が入って、元夫が亡くなったと聞いた。

私は、それを聞いて…

二男を会わせるように段取りをしている事を

知り合いにすぐ連絡して、伝えて貰えば良かったと思った。

もしかしたら…死ぬのを止めれたかもしれない…

それは無理だったとしても、

せめて二男に会って欲しかったと後悔した。


私は、今回の人生は何とかならないかと考えた…


でも、出来事を変えたら1日死ぬのが早まるかもしれないし…

他に影響があるかもしれない…

すごく悩んだ…


でも、やっぱり会おうとしている事を伝えたいと思った。


私は、知り合いに電話をした。

悩みながらもコールを鳴らす…

何回かコールが鳴った後で留守番電話に切り替わった。

まぁ、すぐ連絡してくれるだろうと思っていた。

翌日、知り合いから折り返しの電話があったから伝えて欲しいと頼んでみた。


でも、元夫に何度か電話したけど

電話に出なかったと言われた…

また、電話してみると知り合いは言ってくれた。


数日後…

知り合いから連絡があった…

50話 元夫の行く末 前編

知り合いから…電話が鳴った。

元夫と連絡が着いたのかも?と思いながら…

電話に出た。

「もしもし」

「ゆうこさん、元夫が亡くなった…」

「え?」

「面倒見てくれていた女の人がいたんだけど…その人も連絡が付かなかったらしくて大家さんに鍵を開けて貰って…入ったら亡くなってたらしい。今、警察とか来てるらしい…」

「この後で、警察に移動されると思う」

「なんか、もう誰もいないし…どうでもいいって言ってたらしいよ」


「分かりました。とりあえず、長男に連絡してみます」

そう言って電話を切った。


すぐ長男に電話をした。

「お父さんが亡くなったらしい」

長男もびっくりして…

「マジで…」

「夜には警察署に遺体が行くかも?」

と言うと…

「電話してみる、何署?」

と言われて、私は動揺していたのか…

違う警察署を教えていた…

その後、長男から電話があって

「母さん、違った…どこかな?」

「そうか…じゃここじゃない?」と違う警察署を教えた。

「分かった電話してみる」


その後…長男から

「ここで合ってた、明日行くと言ったから…母さんも一緒に行ってくれる?」

「分かった、行くよ」と返事をした。


間に合わなかった…

やっぱり、出来事を変えようとしてはいけないのかな…


あの人にも伝えると

「そうか…二男を会わせようとしてたのにね…残念だったね…」と驚いていた。


翌日、長男と警察署に行った。

受付で事情を話すと2階に案内された。

そこに入った瞬間…

沢山の刑事さんが一斉にこっちを向いて

じろっと睨んで見て来る…

独特の雰囲気だ…

対応してくれた刑事さんが

「すみません。ここしか空いてないんで…」

と取調室に案内した。

そこで、詳細を聞いた。

元夫は…

お風呂の中で扉に目張りをして

練炭自〇をしていた…

「亡くなったのは推定ですが24日ごろです」

と言われ…驚いた。

やっぱり、1日早くなっている…

私が知り合いに電話したから?

間に合わなかったのに…それもダメなのか…


「写真で元夫だと確認して欲しいのですが…死後数日経っているので…お母さんは見ないほうがいいかもしれない。長男さんが確認されますか?」

長男はすぐ「僕が見ます」と言った。

その時期は、例年より暑い日が多かったから…

傷みがひどかったのかも…


長男は戻ってきて

「父さんだった…」と言った。

刑事さんも戻って来て

「確認が取れたので取り合えず手続きをします。遺体の引き取りは、どうされますか?」

私は

「私と離婚した後に結婚した人がいると思うのですが、その方が引き取りをする可能性は無いのですか?」

と聞いたが…

「その方とも離婚されてますし…その方と連絡が取れないんですよ」

と言った。

「じゃ、こちらでも元夫の兄に連絡をしてみます」

と返事をして帰った…


その日に、元夫の兄に電話をしてみた…

「お久しぶりです。ゆうこです」

兄も驚いて

「どうしたの?」

「実は、弟さんが亡くなって・・・」

と事情を話した。

「ごめんけど…うちは何もしてあげられない」

と言われたので…

「じゃ、長男と相談してみます」と電話を切った。


長男にそう言われたことを話して

「あんたは、どうしたい?」と聞いてみた。

すると長男は

「このまま、放っておいたら無縁仏になるんでしょ?それは可哀想だから…自分が送ってあげたい」

と言った。

「分かった…なら、母さんがお金を出すよ」


私は、1度目の人生でもそうしたのだけど…

今回も、その気持ちは変わらなかった。

元夫が、あまりに可哀想で…


でも、葬式をしても誰も来ないかもしれない…

あの人の、お父さんと同じように直葬にしよう。

そう決めて…直葬をしてくれる葬儀屋さんに向かった…

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