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【長編小説】もう一度あなたに会うために(66話~最終話)
2024年。再婚したあの人と暮らす生活はすごく幸せだった…。それなのに突然過去に戻ってしまった私は、もう一度あの人に会うために、忠実に人生をやり直すと決めた…それが例え、辛い過去だったとしても…
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後編 あの人に会ってから
66話 部屋に入れないのに…
4月になり…
ホーム編成が行われた。
私は引き続き、同じホームになり後輩が出来た。
子ども達は、退所したり違うホームに行ったりした子もいたから10人になっていた。
そして、小学6年生になった5人が異動して来た。
ホームは15人になった。
5月になり…
上の孫が保育園に入れることになって…
長男は、日勤で復帰することになった。
毎日、長男が保育園の送り迎えをする。
保育園の支度、家事も1人で頑張った。
普段、お嫁さんに任せっきりだった長男…
長男にとって、この時が一番頑張った時だったと思う。
週末になると、長男が病院の付き添いをした。
お嫁さんは、その時しか帰れない…
お嫁さんは痩せてしまった…
時々、長男の1人の時間を作ってあげるために
上の孫を預かってあげた。
7月になって…
孫は、病院で3歳の誕生日を迎えていた。
ようやく、付き添いを代わっても良いと許可が出た。
半日だけど…付き添いを代わって…
その間に、長男とお嫁さんは2人の時間を作った。
孫は、我儘になっていたが…
私の事を覚えていてくれた…
ただ…病気の影響か…視力が悪くなっていた。
病院の中をベビーカーで散歩をする。
他の科に行ってはいけないから、同じ所をグルグルと…
それでも、喜んでいた。
施設のほうは…
小学5年生までの女子ホームの子達が…反感を持って…
問題を起こすようになっていた…
夜も寝ないでウロウロしたり…
騒いだり…
新人の職員に食って掛かったり…
職員は疲弊していた…
同期の子も会うと目が赤い…
少し突付くと泣いてしまうんじゃないかと思うくらい…
疲れ果てていた。
そして…
新人が辞め…
先輩が辞め…
同期も辞めそうになったから…
上は、私がいるホームと統合すると言い出した。
そうすると…子どもは27人になる…
職員は、4人…
それでも…やるしかないと思っていた。
そして、ホームが統合する日…
ホームの上司から、A子の部屋を開けて使用する。
片付けをしないといけないと言われた。
私は…
「あの部屋には入れないんですけど…」
と言った。
「なら、私と他の人でやるから大丈夫よ」
と言ってくれたけど…
私は、あの部屋に入らないことで保っていた…
あの部屋は3年は使用しないと言っていたのに…
あの部屋は、お母さんがA子の物を少ししか持って帰らなかったから
そのまま、残っていた。
心理の先生にも、あの部屋に入れないと相談したら
入らなくても良いと言われていた…
私は、明けで帰る時に辞めそうだった同期が一緒だったから
27人だろうと仕事はするけど…
あの部屋に入れるか分からないと話をしていた。
2人で愚痴を言い合って…
帰ろうと車に乗り込んで…
運転して帰っていたら…
なぜだか…涙が止まらない…
運転しながらだったから…
目の前が涙で見えにくくなって…
怖いから…こらえようとするけど…
それでも、涙が止まらなかった。
日曜日だったから…
あの人がいると思って、なんとか涙をこらえて
「ただいま」
と明るく帰った。
あの人が
「お腹空いたでしょ。お弁当買ってるよ」
と言ってくれたから…
「ありがとう」と明るく言った。
でも…
お弁当を食べていたら…
勝手にまた涙が出てしまって…
止まらなくなってしまった。
あの人がビックリして…
「どうしたの?」
と聞いてきたから…
泣きながら…すべてを話した。
それを聞いたあの人は…
「ずっと、心に蓋をしていただけで…何の解決もしていなかったんだよ」
「病院に行こう。そして辞めた方がいい…」
と言ってくれた。
幸い…
翌日から3日間休みだったから…
翌日、病院に行くことを決めた…
67話 診療内科
翌日…
予約をしなくても診て貰える病院を探した。
そして…直接行ってみた。
受付を済ませ…名前を呼ばれて行ってみると…
そこには看護師さんがいて…
「今日、ここに来られるまでのお話を聞かせて下さい」
と言われ…
聞かれるまま、生い立ちからの話をした。
結婚や出産、離婚に至るまで話をして…
そして、ここに来ようと思った話をし始めると…涙が出て来た。
話が終わって…
「次は先生から呼ばれると思いますから」
と言われ…待っていると、名前を呼ばれた。
診察室に入ると…男の先生…
だいたいの事情は見ているようで…
補足で色々聞かれた。
先生は…
「あなたは家族のように思っていた子だったけど…その子にとっては、あなたは家族ではなかった。そう、思うようにしたほうがいいです。あなたのせいではない。職場のケアも足りなかった。病名をつけるとしたら、PTSD寄りの適応障害です」
と言われた…
退職しようと思っていると言うと…
「それが出来るならその方がいい」
と言ってくれ、2週間分の漢方薬を出してくれた。
私は、家に帰ってから…
園長の奥さんに電話をして、病院に行ったことを話した。
「そんなに酷いとは思ってなかった…ごめんね。どうしたい?」
と言われたから
「正直、もう行けないんです。退職させて下さい。申し訳ないです」
と言ったら…
「分かりました」と言ってくれた…
私は、退職した…
気掛かりは、子ども達のことだった。
小学生の子が「先生、次いつ来る?」
と言ったから「4日後に来るよー」
と言って帰ったのに…
他にも、色んな子から「先生、やめないでよ」
と言われていたのに…
施設に行くことを考えるだけで…
涙が出て…手が震えた…
私は逃げたのだ…
子ども達には、私は体調不良で辞めたと伝えられた…
子ども達は、寂しがっていたと…
先生は子ども達にとって大きな存在だったようです。
と後で教えて貰った…
携帯を持つようになって時々連絡が来ていたB子から
「先生、生きてる?大丈夫?」とラインが来た。
私の上司から辞めたと聞いたと…
「元気なら良かった。時々安否確認するね」
そう書いて来てくれた…
それから…
就職で県外に行っていた息子が、仕事に耐えられず帰って来た。
家には無職が二人になった…
私は、前から気になっていた肩に出来た脂肪を診て貰いに通院を始めた。
検査の結果、脂肪は良性で手術で取ることが決まった。
9月のある日
二男と病院に行った帰り…
ふと思い立って、父が住んでいたマンションに行ってみた。
まだ、後妻さんが住んでいるのか気になったから…
下のポストを見ると…まだ名前があったから
―――まだ住んでいるんだな…
と安心して帰った。
それから…
10月の終わりに…
やっと、孫が退院することになった。
8ヶ月半に及ぶ入院生活だった…
私は、二男と一緒に迎えに行った。
そして、みんなで一緒にご飯を食べて過ごした。
退院できて良かった…
また家族が揃って過ごせるようになって良かったと…みんなで喜んだ。
孫は…
「おうちに帰らないの?」と言ったそうだ…
病院をおうちだと思っていたらしい…
孫は、会う度に髪の毛が伸びて…女の子らしくなっていった。
これからも、定期的に病院には行かなければいけない。
でも…
どうか…再発しないように…と祈るしかない…
そして…11月になり…
以前勤めていた会社の同僚と1年ぶりに会って食事をしている時に
電話が鳴った…
表示されているのは…
警察署だった…
68話 警察からの電話は…
警察署から電話?
私は、あの人に何かあったのかもしれない…
と思いながら電話に出た…
「はい」
「○○警察署です。○○○○さんってご存じですか?」
と後妻さんの名前を言った。
「はい、知ってますが…」
「実は、後妻さんのマンションの方からの連絡で、後妻さんが亡くなっているかもしれないんです。マンションの管理の帳簿にあなたの名前が書いてあったので電話をしました。それでマンションに入りたいのですが…」
驚いたけど…父の3周忌依頼、連絡も取ってないし…
「私は、父が亡くなって以来、付き合いがないんです。確か…息子さんがおられたので息子さんに連絡をした方が良いと思います」
と言った。
「では、息子さんに連絡を取ってみます。また連絡をするかもしれません」
と言われたから
「分かりました」
と言って電話を切った。
―――後妻さん、孤独死したのかも…
本当に、衝撃的だった…
息子さんとも連絡を取ってなかったのかもしれないな…
それから数日後、兄の元に警察から連絡が入り…
後妻さんが亡くなっていたこと、息子さんが兄と話したいと言っていると言われた。
息子さんから、どうしていいか分からないと相談されたらしいが
兄は、マンションの名義も後妻さんに変更したし…
僕らが出来ることは無いんですと、言ったそうだ。
9月に、後妻さんの事を思い出して
ポストを見に行った時は、まだ生きていたのかな…
なんか…急に思いたって見に行った自分のことが怖いかも…
死因とかも、もう分からないけど…
結局…寂しい終わり方だったんだな…
と悲しい気持ちになった…
それから、翌年になって
私も、二男も就職をした。
私が就職した所は、不正ばかりの会社で…
毎日、あの人に愚痴ばかり言っていた。
それがいけなかったのか…
あの人の気持ちも不安定で…
しかも、なかなか就職できなかった二男に対してもイライラしていて…
喧嘩ばかりしていた…
「別れたい。もう一緒にやっていけない。二男と一緒に出ていけばいい」
と言われたこともある…
私も、あまりにひどいことを言われるので
もう…別れるしかないかも?
二男と一緒に家を出ようか…
と思ってしまったこともあった。
1回目の人生でも、そう思っていたけど…
翌朝になると…
あの人の言うことは本心じゃないと思い直して…
自分から謝るようにしていた。
そんな時は、あの人も反省してると言って謝ってくれる。
今回は、これからの事が分かっていたし…
あと少しで…穏やかな日々になることが分かっていたから…
同じように、翌日には仲直りした。
会社も、他の人と私に対する態度が違うって事が続いたり…
理不尽なことで怒られたり…
人間関係もぐちゃぐちゃで…
素人ばかりで作った会社だったから
子どもに対する想いなんて無くて…
どんどん不満が溜まっていった。
不正も、ひどくなっていって…
これ以上ここにいたら、いつか私の資格も剥奪されるかもしれない
と不安に思い…退職した。
あの人は…
「良かった…もう愚痴を聞かなくて済むよ」
と嫌味を言った。
私は、いったいいつ戻れるんだろう…
私が過去に戻ってしまってから
随分経った…
次から次へと悪いことが起きて…
なかなか落ち着かない…
でも…私の記憶では、これから悪いことは起こってないはず…
私は来年、57歳になってしまう…
このまま…時が過ぎていくのか…
それとも…
死んでしまうのか…
そんな事を毎日、考えながら過ごした…
そして…
翌年の3月…
B子から
―――卒業したよ。
とラインが来た。
最終話 嬉しい出来事…
B子には、施設にいる間は
自分からは連絡を取らないようにしようと決めていた。
だから…ちゃんと連絡をして来てくれたことが嬉しかった。
すぐ返事を送った。
―――卒業おめでとう。よく頑張ったね。進路はどうしたの?
―――短大に進学した。
―――頑張ったんだね。もう施設は出たの?
―――出たよ。一人暮らし!
―――すごい!
―――ご飯でも食べに行こうー
―――行こう行こう!都合が良い日教えて。
会う日を決めて…
B子の家の近くの駅に迎えに行った。
B子は、すっかり大人っぽくなっていて…
再会できた事を2人で喜んだ…
B子は、推薦で短大に合格したそうだ。
そして、奨学金で行けることになった。
施設が貯めていた児童手当等の国から出ていたお金と、アルバイトで貯めたお金で
一人暮らしの用意をしたと…
これから…学業とバイトで忙しくなりそう…
施設では、ほとんどの子が就職する。
進学をする子はあまり…いない。
B子から、他の子の情報も聞いた。
1人は、自立支援ホームに行き、一人は母の元に帰った。
そして、あとの2人は就職したそうだ。
みんな元気そうで良かった。
それと…同じホームに行ったC子は…
ホームの先生と合わず…児相の配慮で
里親さんの所に行って、落ち着いていると聞いた。
1回目の人生でも、会えて嬉しくて…
一緒にランチして…
本当は孫のような歳の子なんだけど…
親子のように買い物をした。
また、B子に会えたことが本当に嬉しかった…
今回も、同じように過ごして…
お祝いを渡して…
困ったことがあったら、遠慮せずに連絡するようにと言って…
1年に1回は会おうと約束して帰った…
会えたことが嬉しくて…
ニヤニヤしながら車で帰っていたその時…
突然、車が大きく揺れた――――――
―――――地震?
そして、周りが真っ暗になった―――――
いったい、何が起きたの?
私、事故しちゃったのかな?
そう考えていたら…
いつの間にか…意識を無くした―――――
そして―――――
目が覚めると…
そこは…暗くて知らない場所のベットの上…
―――ここは、何処?
―――私、やっぱり死んじゃったんだ…
―――ん?隣にあの人がいる…どういうこと?
私は、枕元にあるスマホに手を伸ばした…
今日は…2024年9月…
確か…B子に会ったのは3月…
6か月進んでる!
位置情報は…県外にいるのか…
ここは…何処かのホテルみたい…
あまりの事に驚いて、ウロウロしている私に…
あの人が目を覚まして
「もう起きてるんだ?どうしたの?眠れなかったの?」
と話し掛けて来た。
「うん…そうなんだよね…」
と言いながら、少しづつ状況を理解していった。
どうやら、あの人と旅行に来ているらしい…
私は…もう58歳になってるってことだよね。
戻ったんだー!
良かった…
6か月の記憶が無いのが…怖いけど…
少しづつ理解して行こう…
あの人も52歳になっていたけれど…
穏やかな顔…
やっとあの人に会えた…
私は、気が付くと泣いていた。
驚いた、あの人が
「えっ、どうしたの?何かあったの?」
私は…
「ううん、なんでも無いよ…幸せだなって思ったら涙が出てきた…」
「本当に?それならいいんだけど…」
「うん、大丈夫だよ」
旅行の途中で戻ったから、前半の記憶がないのが
勿体ない気がしたけど…
帰ってから
二男、長男、お嫁さんにも会えた…
孫たちの元気な顔も見れた…
それと…唯一タイムリープの事を知っている、親友にも会えた…
親友も、戻ったことを喜んでくれた…
親友は、あれからタイムリープはしてないらしい…
私は幸せだ…
あの人に会ってから…
私は変わることが出来た…
あの人のおかげで、幸せな時間を過ごせている。
嫌だけど…
もし、また過去に戻ることがあったとしても…
私は、あの人に会うために…
どんな過去でも、繰り返す…
その為なら、どんな我慢でもする…
でも…
なぜ、半年ワープして戻ったのかな…
これって…本当に戻れたの?
それとも、また今から何か悪いことが起こるのか…
その可能性はある…
これまで頑張ってこれたのは…
色々な人に支えられて来たから…
私の人生は大変なことも多かったけど、それだけは私の宝だ…
これからまた…どんなことが起きるか分からない…
でも…私は…
何が起ころうと…精一杯、生きる…