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【長編小説】もう一度あなたに会うために(31話~35話)

2024年。再婚したあの人と暮らす生活はすごく幸せだった…。それなのに突然過去に戻ってしまった私は、もう一度あの人に会うために、忠実に人生をやり直すと決めた…それが例え、辛い過去だったとしても…

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前編 あの人に会えるまで

31話 二つの嘘

私と元夫の関係は

そのまま続いていた。


相変わらず元夫は、色々な所に

連れて行ってくれていた。

蛍を見に一緒に行き

私がフェスがあって好きなアーティストが出るから

行きたいと言うと連れて行くよと言ってくれ

夏は花火を見に行こうと約束をしていた。

まぁ、お金は私が払うのだけれど…


孫が生まれて少し経った頃

知り合いの人から連絡があった。

元夫が逮捕されたと…

それも、万引きで逮捕されたが

恐らく覚せい剤も出るだろうと…


私は、ついにこの時が来た…と思った。


元夫から、手紙が届いた。

捕まってしまったこと

フェスと花火に行くと約束していたのに

行けなくなってごめんと書いてあった。

それと、お決まりの「待って欲しい」だった…

「万引きなんかで捕まってしまって情けない。出て来る頃は、もう歳だから真面目になりたい。とにかく会いに来て欲しい」と…

とりあえず、会いに行った。

面会で会った元夫は、手紙と同じことを言った。

私は、「そんなの信じられない、今は考えられない」

と伝えて帰った。

警察署を出た所で

あのママが車から降りて来たのが見えた。

私には気が付かなかったが…

元夫に会いに来たとしか思えない状況だった。


家に帰って、連絡をくれた知り合いに電話してみた。

それで、ママが来ていたことを話すと…

実は…と知り合いは語り始めた…

元夫は、マンションの家賃も払えなくなり

ママと一緒に、車生活をしていた。

生活に困り、万引きをしたのだろう。

その時にママも一緒にいたが逃げたそうで…

ママが私に連絡をした方が良いのではと言ったと…

今では、女房気取りで若い子に運転させて

面会やら差し入れに行っていると…


今までは、私が奥さんとして警察でも扱われていたけど

今は、あのママが奥さんと呼ばれ

私は愛人みたいな存在になっている…

私は可笑しかった。


知り合いは、まだもう一つ

言わなければいけないことがある。

でも、自分が言ったとは言わないで欲しい

と話を続けた。

「二人の間に子供がいるんですよ」

子どもは1歳くらいで男の子だと…

衝撃だった…

確かに、おかしいと思う事があったと思い出した。

クリスマスに、二男がお菓子入りの靴を欲しいと言った時に

元夫は、もう一つ靴を買うと言って買ったことがある。

その時は、知り合いの子にあげると言っていたが

なぜか態度がおかしいと感じたことがあった。


1度目の人生では、

これを知り合いから聞いたその時は

冷静に対処したけれど

その話を聞きながら…頭が真っ白で…

パニックだった…

でも、落ち着くと怒りが込み上げて来て…

でもまた更に時間が経つと…

私は、いったい元夫の何だったんだろう

と情けなくなった。

これまでの22年は何だったのだろうか…

私は、大人になって初めて

声を出して泣いた…

すると、二男がびっくりして

「お母さん大丈夫?」と

ティッシュを持って来て涙を拭いてくれた。

優しい子だ…

この子が傍にいてくれて良かった…


私は、元夫を本当に愛していた。

でも、どんなに想っても

どうにもならない事もあるんだ…

そう実感した1度目の人生。

今の私だって、分かっていたことなのに

心は痛い…


私は、決意した…


やっと、ここまで来れた。

私が、過去を変えなければ

これから起こる出来事も変わらないはず…


あと1年で「あの人」に会えるのだから…

32話 本当の別れ

私は、元夫に会いに行った。

そして、この間面会に来た時に

ママと子供を見た事を告げた。

本当は子供は見てないのだけれど…

知り合いに聞いたとは言えないので…


「そんな状況で私によく待って欲しいって言えるよね。ずっと私をだましておいて…」

元夫は

「ずっとじゃない。そんな状況になったから…」

と何か言っていたけれど

私にはどんな言葉も入らなかった。

「もう二度と私達に関わらないで、二男にも絶対に会わせない」

元夫「じゃ、二男に会いたくなったらどうすればよいのか」

私「陰からそっと見ればいい」

元夫は、無言だった…

私は「さようなら、もう二度と会うことはないから」

面会時間はまだあったのだが

そう言って面会室から出て行った。


これが、私が元夫に会った最後となった…


私は、復讐してやりたいくらい悔しかった…

でも、思い直した。

関わらないのが復讐だと…

そう考えることにした。

何があっても、もう二度と関わらない。

そう誓った。


こうして、私は本当に別れることができた…


長男にお父さんが捕まったことを告げると

「どうせ、また待つんでしょ」と…

私は、子供がいたことなど話し、別れたことを話した。

「どこかに兄弟がいるってことなんだね

ま、会うことはないだろうけど」

私は

「あんたは大人だから、お父さんと会いたいと思えば会えばいいよ」と言った。

「そうだね…」と長男は言った。


関わらないと言っても、色々と話は入って来た。

その後、ママと籍を入れたとか

裁判の行方など…


長男の所にも、元夫から手紙が来ていた。

お母さんと別れたと…

「お母さんの事を本当に愛していた…でも、どうにもならないこともあるなんだと悟った」

と書いてあったと聞いた。


それから突然、元夫と刑務所で一緒だった

という人が訪ねて来た。

元夫は逮捕されたこと

離婚したから、もう状況は分からないと告げた。

それから少しして、またその人が訪ねて来た。

拘置所に面会に行ったと…

元夫に家を訪ねたことを話すと

「元気でしたか」

「男がいる雰囲気だったか」

と言ったらしい。

どこまで、アホな男なんだと…呆れた。


仲良くしていた捜査員の人は

転勤になっていたから

電話ですべてを話した。

仕事でこっちに戻るという話になった時に

自然と会おうということになった。

私は、初めて捜査員の人と二人であった。

「逮捕した男の元奥さんと会ってるなんて色んな意味でバレたら大変…
元夫も、まさか二人で会ってるなんて夢にも思ってないだろうね」

そう言いながら、色んな話をした。

この人とは、飲みに行っただけで

本当に何もなかったのだけど

私は、元夫に対して小さな裏切りをしている気分だった。

捜査員の人は、私に勇気を与える言葉を

沢山言ってくれた。

これまでも本当にお世話になった…

感謝しかなかった。


元夫と一緒に行くはずだったフェスも

花火も長男家族と一緒に行った。

去年、花火を見に行った時に

ヘリコプターに乗れるイベントをしていて

私が飛行機に乗ったことがないからと

元夫が、なけなしのお金を出してくれて

みんなで乗ったことを思い出した…


悪いことばかりではない、楽しいこともあった…

そう、思えるようになりたい。

未来に記憶がある私は、そう思えるけど…

1度目の人生の私には、無理だった。

ただ、悲しいだけだった…

33話 父と兄のその後…

私は、父に本当に別れたことを話した。

父は「そうか…」と言いながら喜んでいるようだった。

その頃、父とは別々に住んでいた兄と兄嫁にも話をした。


兄が家を増築すると家に戻ってから

父は寂しそうだった…

父は、夕ご飯の時に晩酌をするのだが

長い時間をかけてチビチビ飲む。

だから、兄家族は夕ご飯を食べたら

すぐに部屋に行ってしまう。

私は、たまに行くだけだから

父に付き合って色々な話をしていた。

確かに、毎日付き合うのはキツイと思う。

でも、兄達は気付いてないかもしれないが

父を邪見にするような態度が

あるのではないか…と私は思っていた。

私が家にいる頃、散々兄嫁の悪い所を

父に訴えていたが、信じて貰えず…

父は定年退職して、家にいるようになって

兄嫁の意地の悪さに気付いた…

父があげた食べ物は、食べようとせず

ずっと冷蔵庫の中にあったり

でも、他人から貰った物はすぐ食べる。

兄嫁は外面は良いのだが

父と私には、意地悪だった。


父は、退職後も付き合い上手で外に出ることも多かった。

そんな中で、よく行く店の女の人と仲良くなって…

その人を家に連れて来て、一緒に住むと言い出した。


兄は驚いたが、あの家は父の物だし

承諾して、一緒に住みだした。

その人が家に来た時も、お互いに挨拶しなかったとか

色々あったけれど…

家事を別々にしたり、試行錯誤して生活をしていた。


その後、兄が困って父に相談をして来た。

競馬で、すごい借金がかさんで大変なことになってると…

増築した借金もある。それを足したら1千万以上だった。

父は考えて…家を売る決断をした。

いつも、そうだ…

兄が借金をして困ると父が何とかする。

私も何かと父に頼っていたから人の事は言えないが…

額が違う。

でも、仕方なかった…

父は家を売り、彼女と中古のマンションへ

兄は賃貸の家を借りた。

父の友達が、家を売ったお金を妹にあげないのは

おかしいと言ってくれたらしく…

私も、その時に残っていた借金を返すことにして

150万貰った。


兄は、結局…

また、借金をして

どうにもならなくなってから

兄嫁に相談したらしく…

私の所に、兄嫁が相談に来た。

その頃は、お互いに腹では何か思っていても

遊びに行ったり、表向きは仲良くしていたから…


私は以前、元夫の裁判でお世話になった

弁護士さんを紹介することにした。

私自身も、友達も債務整理でお世話になっていたから

私も兄と一緒に弁護士さんに会いに行った。

その時に、初めて兄の借金の話を本人から聞いて

驚いた…

借金先が17件もあったからだ…

弁護士さんの判断は自己破産だった。


自己破産は大変だったけど

返済や取り立てに怯えていた兄はホッとしたようだった。

結局、私も手助けをしてしまったけど…

私も色々と迷惑をかけていたから…

でも、また誰かに助けられて

兄の為になったのかどうかは分からない。


兄の借金問題が済んだ後…

次は、甥っ子が骨肉腫で入院した。

1年に及ぶ入院生活…

甥っ子は、手術はしたが切断などはなく

悪い所を取るだけで済んだ。

走ることは出来ないが

多少のハンデはあるけれど歩けるようになった。

中3だった甥っ子は、院内学級に通い

高校受験も無事、合格して退院した。


周りでも色々なことが起きている。

私の別れなんて…大した事がないように思えた。


私は、前に向かっていくと決めていた。

「あの人」に会うまで、もう少し…

忠実に生きるのみ…

34話 出会いたくなかった人

親友は、どんな時も前向きで

私を引っ張ってくれる。

そんな親友は、私に…

「ゆうこが苦労した分、幸せになれるはず…次に行こう」

と言ってくれた。

親友にも、これから試練の時が来る。

でも、今の親友は何も知らないから言えない…


私の気分は次の人を探すというか…

今は友達が欲しいと思っていた。

色んな所に連れて行ってくれていた元夫が

いなくなったからかもしれない…


従弟がネットの掲示板で

彼女と知り合ったと言っていたから聞いてみた。

近所の友達を探すサイトで知り合ったと

そのサイトを教えてくれたから登録してみた。


「母子家庭で7歳の子どもがいます。一緒に遊びに行ってくれる友達を募集しています」

と書いて登録してみた。

そうしたら、すぐ色々な人から返事が来た。

でも、その中には嫌な人もいた。

「寂しいんでしょ?」とか

明らかに悪意のある返事も多かった。

すぐ写真を要求する人…

すぐに会いたがる人…

すごいイケメンの写真をすぐ送って来る人…

質問をしても、質問の返事しか送って来ない人…


その中で、数人はメールのやり取りをする人も現れた…


この中に、3か月付き合って別れた人がいる。

この人は、本当にクズだった…

最初は良かったが

どんどんクズっぷりを表してくれた…

分かっているから出来れば付き合いたくない…

でも、この出会いと別れがあったから

いいタイミングで「あの人」と出会った…

ここも、変えられないのか…

変えてしまったら

「あの人」と出会えないかもしれない…

せっかく、ここまで来たのに

変えるわけにはいかなかった…

もう少しだから我慢するしかない…

結局、結論はそこになる。


私は、この人がクズ男だと知りながら

メールを続け…会う事にした。


9歳も下だから抵抗はあった…

ぐいぐい来られたが

私は自分の過去を黙って誰かと付き合うことは出来ない。

すべて話をした…

それでも、変わらず付き合いたいと彼は言った…

それから二男にも会わせて付き合いを始めた。

彼は、大型の中距離運転手で

休みもなかなか合わなかったので

こっちに帰って来た時は私の家に来た。


正直、3か月しか付き合わなかったし

愛情もそんなに無かった…

これからの事を知っていて

付き合うという行動は苦痛だった…

早く時が過ぎて欲しいとばかり思っていた。

元夫は、分かっていても愛情があったから

これまで頑張って来れたのかな…


彼は、いつの間にかお金が無いと言いながら

ご飯を食べに行ってもお金を出さなくなった。

彼の電話が鳴り続けるから

「電話出たら?」と言ったが

「いや、面倒くさい女だから出ない」

「どうして?」

「お金を借りたけど、返せとしつこいから」


いやいや…お前が悪いんだろ…


そのうち、私にもお金を貸して欲しい

と言って来たから断った。


1度目の人生では、好きな気持ちもあったから

将来について考えた。

彼はバツイチで子どもが一人いたが

元奥さんが引き取ったと聞いていた。

彼はまだ若い…

再婚したとしても、子どもも欲しいだろう。

でも、私は39歳…

恐らくもう子どもは出来ないかもしれない。

それを彼にも話した。

その時の彼の反応が、あまり良い反応ではなかった…


私は、どうにか別れる口実を作りたかったから

今回も同じ事を言った…


私は、どうにか3か月で別れなければ…と必死だった。

35話 別れたかった人

私は、別れに向かうために

少しずつ彼に冷たい態度をとった。

でも、彼は何だかんだ言いながら家にやってきた。


やっぱり、その時が来ないと別れられないのか…


私の記憶では、私が会社の飲み会に行った日に

今から来ると連絡をして来て、その日に別れた気がする。

その日を待つしかなかった…


それから、会社の取引先の人との飲み会を

同僚の人がセッティングした。

前もって分かっていたから、二男は兄嫁に頼んだ。

その頃、賃貸の家に引っ越していた兄嫁は

何かと私を誘って来ていた。

「家に泊まりにおいで」とよく言ってくれていたし

泊まって一緒に夜中までホラー映画を見たり

私に何かあると、二男を泊まらせてくれていた。

その飲み会も早くから分かっていたから

頼んでみたら快く引き受けてくれた。

その頃、兄の借金問題があったからか…

私が元夫と別れたからなのか…

兄嫁は優しくなっていた。


それから暫くして…

ついに、その日はやってきた…


二男は学校が終わってから、兄嫁が迎えに来て

連れて行ってくれていたので安心だった。

兄嫁は

「飲み会が終わったら連絡して、迎えに行くよ」

と言ってくれたが…

「いや、今日彼が来るかもしれないから明日行くよ」

と言った。

本当は来るとも言われてなかったけれど…

私の記憶では、この日なのだ…


私は飲み会でも気が気ではなかったけれど

とにかく…彼からの連絡を待つしかなかった。

私はいつも飲み会に行っても

楽しめなくなるからメールしたり

メールに返事をすることはないのだが…

その日は、メールを気にしてしまった…

同僚が「どうしたの?何かあるの?」

と気にするくらいに…


私は願った…

「今日でありますように…」


それから、酔いも回って来て

だんだんどうでもよくなって来た頃…


彼から「今から家に行くよ」とメールが来た。

「迎えに来てくれる?」

と返事をしたが

「いや、今日は行けない」

と返事が来た。


1回目の人生の時は

なんで迎えに来てくれないんだろう

と思った。


やっぱり今日だ…

ま、急いで帰らなくてもいいか…

そう思い、楽しんでから帰ることにした。

飲み会がお開きになってから

私はタクシーで帰った。


彼には、合い鍵を渡していたから

家に帰ると彼は、私を待っていた。


「別れたい」

と言って来たから

私は、待ってました…と思いながらも

「なんで?」と言った。

「やりたいことが出来たから、もうあまり来れなくなると思うし」

「やりたいことって?」

「ドラム」

「来てほしいと誘われたから」

彼は小さい頃からドラムをやっていて

バンドを組んでいたこともあったけど

解散したらしく、入れる場所を探していた。

「そうなんだ、良かったね。私も、このまま付き合ってもよくないと思っていたから…いいよ」

と言った後

「でも、そのスポーツバッグは返して」と言った。


彼は、荷物をまとめていたのはいいが

勝手に、長男のスポーツバッグに詰めていたのだ…

「そのスポーツバッグは長男の物だから」

と言うと…

彼は慌てて詰めた物を出して

どうしよう?という顔をしていたので

私は、「これに入れたら」

と紙袋を出した。


マジでクズな男…


彼が紙袋に詰め替えた後

「じゃ、元気で」

「うん、そっちもね」

と言葉を交わして彼は出て行った。


私は…

これからも運転気を付けてね…と心でつぶやいた。


やっと、別れられた…

もう少し、あともう少し…

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