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小説投稿20年、現在57敗中…(⑪2年連続で、最終に残るも)


日経小説大賞の最終選考に

 2019年9月中旬――

 メールが届きました。

「このたびは第11回日経小説大賞にご応募いただき、ありがとうございました。応募作『カーニバル社員』が最終候補に残りましたので、お知らせいたします。今後のスケジュールですが、12月〇日が選考会になります。受賞した方にのみ、18時~20時の間に電話でご連絡を差し上げます。選考会の日取りを口外なさることはくれぐれもお控えください」

 そして、12月の指定された日、スマホをテーブルに置いて、じっと見つめていました。
 が、連絡はありませんでした。

 2019年12月24日付けの日経新聞に、日経小説大賞に関する記事が大きく掲載され、選評の欄に目が釘付けになりました。

 選考委員の伊集院静氏には、「荒削りで乱暴なタッチだが、作中の、ジャンプに似た可能性を感じた」と評されていたものの、高樹氏には「ありがちな設定と終わり方でテレビドラマを見るようだった」と書かれ、辻原氏は「クライマックスが不発に終わった」と…。

2019年12月24日付け、日本経済新聞

 受賞式が翌年2月にあり、一般参加可能(要ネット予約)との掲載があったため、私も出席してみようかと思い立ちました。もし可能なら「担当者に直接会って挨拶できれば。そしたら、次につながる何かきっかけが出来るかも」と、ちょい下心もありました。ですので、その旨を作文(本音は上手くオブラートに包んで)、メールしてみました。

 けれども、返事はありませんでした。

 文芸誌の場合は、最終選考に残れば、担当者が多少応援してくれるといったシステムがあるようですが、新聞社の場合は違うのでしょう。担当者といっても、あくまで記者なので、受賞者に対する連絡係に過ぎず、そういった面倒はみないのかもしれません。

 北海道新聞文学賞のときにもそう感じましたし、自分の記者時代を振り返っても同じでした。知り合いの元編集者も、似たような発言をしていましたので、「記者は立場が違う」は、間違いないと思います。

 だから、「返事がなくて当然だった」と自分自身を納得させました。布団の中で悶々としながら。



2年連続で、最終に残るも


 ですが、ここまで来たら「もうひと踏ん張り」と、新作を書き始めました。

 半年ほどかけて、証券会社の新入社員を主人公にした作品「胸叩き」を仕上げたのです。バブル絶頂期に入社した私の体験を基にして、バブルとは何だったのか、なぜ崩壊したのかといったテーマを意識して書きました。

 それを、第12回日経小説大賞(6月末〆切)に送ったのです。

 もし、最終に残ったのなら、9月中旬の金曜日に連絡があるな、と見込んでいたので(前回、金曜だったとの理由から)、その日はスマホを手元から離しませんでした。

 夜7時ぐらいだったか。「さすがに、もう連絡はないだろう」と、肩を落としながら妻と近くの中華料理店に行き、焼きそばを食べていたときです。スマホがぶるっと震えました。

 どうせジャンクメールだろうと、目をやると日経新聞からでした。前回と同じような内容で、12月〇日に選考会、受賞者のみに電話で知らせるとのことでした。

――やった。今度こそは。

 箸を握り締めました。

 中華料理店からの帰路、近くのコンビニに寄って、妻は普段手に取らない高いアイスを買い、私は発泡酒じゃないビールを買い物かごに入れ、飛び跳ねながら帰宅しました。

 しかし、指定された12月の当日、電話は鳴りませんでした。

 2020年12月23日付け日経新聞に掲載された講評によれば、

 伊集院氏は、

「これで受賞はいいかとさえ思った」

 と書いているのに…。

 高樹氏の選評には、「サスペンスアクションのドラマのようで文章も少々荒い」と評されており、前回と同じように選者の意見が分かれたのだと想像できました。

2020年12月23日付け、日本経済新聞

 北海道新聞文学賞のときも、そうでしたが、やはり女性選考員からのウケが悪いのでしょうか。

 妻からも、「作品中に『女体盛り』とか『無理やり小便を飲まされる』とか『蛭に肩の血を吸わせて凝りをとる』『処女に手を出して、監獄に入れられた』なんかのエピソードをいっぱい書くから下品なのよ」と、冷めた目つきで指摘されました。

 でも、そうしたシーンがないと面白くないと、私は反論しているのですが、そこは男女の差なのでしょうか。分かりません。


日経小説大賞が終了


 その後、新たに歴史物の作品に挑戦して、2021年に「大日本帝国布哇」で、2023年には「三笠爆沈」で、同賞に応募しましたが、駄目でした。

 そのうえ、2023年11月に伊集院氏は亡くなられ、日経小説大賞は2024年3月発表の第15回をもって終了となりました。

 日経小説大賞受賞という私の夢は、完全に絶たれてしまったのです。

 爆沈…

2年連続で最終に残るものの、予選落ち

つづく


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