小説投稿20年、現在57敗中…(⑩ライター業、自然廃業に)
ライター業、自然廃業に
旅行ガイドブックの仕事をして10年、毎年1冊のペースで書いていたので、道の駅ガイド、キャンプ場ガイド、動物園ガイド、花ガイドなど、合計10冊のガイド本を出しました。
「もう、ガイドブックの仕事はいいかな」と考えていたころ、コロナ騒動があって取材が難しくなったうえ、車中泊を続けて道内各地を回るのも、そろそろ体力的に限界かなと。そのうえ、フリーランスですから、事故を起こしても補償などはありません。車の整備費や維持費ももちろん自腹です。何度か、ヒヤリハットもありました。もともと車の運転は好きではなく、長時間運転すると必ず肩や腰が痛くなっていましたし。
そうしたタイミングで、ちょっとした業務上のトラブルもあって、その出版社からの仕事を断ったのです。
それ以降、依頼は来なくなりました。
まさに、「一度断ると、来なくなる」(「⑥作品を投げ捨てられて」参照)と嘆いていた知り合いライターの言葉通りでした。
ときを同じくして、道内NPOの活動紹介を行うという道庁がらみの仕事も、年間予算が付かなくなったことや、担当者が変わったこともあり、依頼がなくなりました。
そのメインにやっていた仕事の二つが消滅して、不定期の単発仕事だけでは金銭的にどうしようもなく、自家用車の維持費も大変なので廃車処分にしたため、実質的にライター業は廃業となったのです。
日経小説大賞に的を絞る
こうなったら、貯えが尽きるまで、たとえ尽きたとしても小説投稿に全力を注ごうと覚悟を決めました。(妻には内緒で)
「作家になる」と筆ペンで紙に大きく書いて、部屋の壁に貼りました。
とはいっても、机に向かうのは午前中だけで、午後からは本を読んだり、散歩したり、買い物に行ったり、昼寝したりと、まあ普通の社会人から見れば、気楽な生活をしていましたが。
どうすれば、受賞できるのか。
それまでの落選から、さすがに少しは学習しました。
カテエラ(カテゴリーエラー)になってはいけないと。
私の作品は、事実を下敷きにしたエンタメ系です。対象読者層は、40代から60代の男性。つまり、ライトノベル系の文学賞は対象外ということです。あとは、女性向けや、純文学系の賞も無理でしょう。となれば、かなり絞られてきます。
さらに言うなら、作家の将来性をほとんど考慮しない新聞社系か、地方文学賞ならばもっと可能性があるはずです。しかし、あまり知られていない賞では意味がありません。
これらを鑑みて、狙いを定めたのが「日経小説大賞」でした。
賞金500万円。選考委員は伊集院静氏、辻原登氏、高樹のぶ子氏と、申し分ありません。これまでの受賞者の年齢も高めで、第8回では63才の作者(受賞時)が受賞していますし、応募総数も3~400人ほどと、高額な賞金額にも関わらず少なめです。それに、受賞作は出版され、印税も出ます。言うなれば、小説家として世間に認められるのです。
ただ、プロの応募もOKなので、レベルは高いでしょう。
この賞に応募しようと、ブラジル駐在員の話を描いた作品「かいしゃでサンバ」を選びました。
前年3月に、小説すばる新人賞の3次選考に残ったもので、応募数1380作品中の7本にまで入ったものの最終選考には残れず、もう少しのところまで行った作品でした。
同誌12月号に掲載された「新人賞応援企画、編集部からのアドバイス」で、「中心の事件が、長編の物語の核としては小さく、全体的な満足感が足りない」と指摘されていたため、事件の背景を書き込んで大きなテーマを潜ませるなどの改稿を加え、タイトルを「カーニバル社員」として、2019年6月末に第11回日経小説大賞に応募しました。
そして、なんと……
日経小説大賞の最終選考に残ったのです。
(つづく)
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