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妄想小説 報道の逆説 後編

第四章:世論の変容と報道の逆襲

初めは拓の行動を支持していた世論。しかし、メディアの報道が続くにつれ、人々の反応は変わり始めた。

「やっぱりやりすぎだよな」

「最初は面白かったけど、これは迷惑行為じゃないか?」

「彼のやり方は間違っている気がする」

「迷惑系とどう違うの???」

報道番組では、拓の過去の発言が問題視され始めた。まるで前科を暴くように、些細な言動が切り取られ拡大解釈され、大々的に報道された。

さらに、有名人や識者がSNSやテレビ番組で批判を始めた。

「彼の支援者の中には過激な思想を持つ者がいる」

「かつて彼は、こんな差別的な発言をしていた」

「私は思うんですよ。真摯に報道に向き合ってきたからこそ彼のやり方はただの社会の鬱憤を晴らす自己満足だと」

「報道と暴露は違う」

「彼の行為は報道の秩序を乱す危険なものだ」

どの番組でも彼は批判の的になり、彼らの発言は瞬く間に拡散され、多くの人々がそれに同調した。

ネット上の意見も変わり、「あれ、俺たちは騙されていたんじゃないか?」という声が増えていった。

そういった”世論の声”はすぐに報道され、注意喚起がなされた。

その結果、拓を支持していた人々は次第に沈黙していった。最初に声を上げた者たちは叩かれ、「あいつと同類か」とレッテルを貼られることを恐れ、距離を取るようになった。

「もう関わりたくない」
「ただの迷惑系と同類」

ネットで拓を表すのは主にこの二つとなり、徐々に孤立していった。

第五章:孤独と失墜

世論の風向きが変わるにつれ、拓の支持者は次第に離れていった。広告収入は激減し、企業スポンサーは次々と契約を打ち切った。

「申し訳ありませんが、弊社としては今後の協力を見送らせていただきます。」

ある日、彼のSNSアカウントは一時凍結された。
「嫌がらせ行為に該当する可能性がある」という理由だった。動画の拡散力も落ち、彼の声は次第に小さくなっていった。

仕事を失い、生活も苦しくなった拓は、かつての仲間に助けを求めるが、誰も手を差し伸べなかった。

「俺たちも巻き込まれたくないんだよ」

やがて彼はアパートを引き払い、狭いネットカフェで夜を明かすようになった。スマホの画面には、彼を嘲笑するコメントが並ぶ。

「正義の味方気取りの末路w」 「自業自得だな」

拓はため息をつき、画面を閉じた。

一方で、大手メディアは変わらなかった。ニュースは変わらず流れ、事件の被害者や加害者のプライバシーは晒され続けた。

報道の自由は、相変わらず一方通行の特権だった。

今日もテレビでは、何を喋っているのかよくわからないが、肩書が大層立派な「識者」が得意気に話している。

何を言っているのか要点がよくわからないが、肩書が大層立派な「専門家」が得意気に話している。

この国では、肩書が大層であり立派な人が話すのが力であり正義になる。よくわからない長い横文字であれば尚説得力が増す。

そのような「識者」や「専門家」を多く抱える大手メディアに勝てるはずは無かったのだ。

誰もがなぜか彼らの話に納得してしまうのだから。。。【完】

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