【翼をください】 田南透 ※腐視点感想
ゼミ旅行で絶海の孤島に訪れることとなった主人公一行、強い台風が近づいている事を知りつつも現地の漁師達と交流したりサイクリングに向かったり各々自由に過ごしていた
台風が島に直撃した翌日、同じゼミ生である石元陽菜ともう一人の死体が発見される、ゼミサーの姫を殺したのは誰なのかという推理小説
登場人物
小杉景太:主人公、陽菜のことが好き、弟に対して過保護
小杉雅水:主人公の義理の弟、昔起きた事故により片足が不自由
石元陽菜:一見聖母の様な印象だが中身はなかなかいい性格をしているゼミサーの姫、最近ストーカー被害に悩まされている
高坂蓮:陽菜が狙っているイケメン医学部生
(全員同じ大学に在籍)
ストーリー
まず今回の被害者陽菜だが、自分がモテるのを十分に自覚し、男達から【秘密】を聞き出し生かさず殺さず良い様に利用している所謂悪女
開幕主人公を使ってバレンタインのプレゼントを高坂へ届けさせたり、彼女持ちの男にちょっかいかけてみたり、高額なプレゼントを貰って相手を借金持ちにさせたり…
そんな世渡り上手な陽菜も、狙っている高坂が自分に靡かない事や、無言電話のストーカーが現れたことで段々と苛立ちがつのってく。我慢できなくなった陽菜はストーカーへ罵詈雑言と鬱憤晴らしに男達の【秘密】をぶちまけてしまう
「自分が陽菜に話した【秘密】を誰ともわからない相手に暴露するなんて…!あと俺の陽菜はこんな汚い言葉使わない!!」
とショックを受けたストーカーはその後、陽菜殺害を決心する、いわゆる過激派反転アンチとなる
ゼミ生はそんなドロドロ人間関係の中旅行へ向かうこととなり、殺人事件に巻き込まれてしまうのだった
誰がストーカーなのか、誰が陽菜を殺したのかを推理しながら読み進めていくとこいつにこんな過去が…っていうかこいつそうだったんか…と意外な背景があり思いの外スルスル読める作品
腐視点感想(ネタバレ注意)
死ぬほど登場人物の関係性ドロドロしてる…
主人公は小杉姓だけど父親に認知されてないから誰とも血繋がってなくて愛されたい欲求高めだし、同居してる叔母さんに男としてみられてるし、一番は弟!この弟が諸悪の根源、兄の一番の理解者面してるがこの弟とんでもないヤンデレである
最終的には主人公…愛されて本当に………可哀想…ってなる
弟の足
幼少期、主人公が窓から飛び降りるよう指示したら本当に飛び降りちゃった事が原因、この出来事から主人公は自分のせいで弟の足が不自由になったと後悔し続けている、そのため親友や彼女の誘いを断り、弟の為に自分の人生を捧げてきた
お互い大学生になった今も弟に手を貸したりトースターにバターを塗ってあげたり愛情を持って接している、と同時に、弟に今まで自分の人生をめちゃくちゃにされてきたゆえの憎しみもあり内心ぐちゃぐちゃである
弟の主人公に対する愛や独占欲
この本に出てくるどの登場人物のバックボーンよりもドロドロしてる
弟がやらかしたこと一覧
・子供のときに主人公が可愛がっていた犬に嫉妬し浴槽で溺死させる
・中学のときに主人公が彼女を家に連れ込んだと見るやいなや監視カメラを買いに走る
・その彼女を嫉妬で殺す
・主人公を野球チームに誘った親友に嫉妬して溺死させる
・主人公が惚れていた陽菜+αにとどめをさす
・動けなくなった主人公を監禁する
主人公が自分を捨ててどこかへ行ってしまうかもしれない不安から、その原因になる人物を消していってる形
とっくの昔に足は完治しており、不自由な状態を見せれば見せる程、主人公が自分の方に意識を向けてくれるから17年演技を続けている
最終的に主人公が自分を置いてどこにも行けない様、羽をもぎ取ってしまっており、この本のタイトルである「翼をください」は主人公の気持ちを表しているのかもしれない
前半は主人公が惚れてる女性に気に入られるためいろいろ頑張るっていうTheノーマルな作風だったのに、中盤から終盤はまさにジェットコースターで弟が全部持っていくアブノーマルな作風へ
陽菜+αにとどめをさしたのは弟だけど、実はもう一人の犯人がいるので是非読んでみて欲しい作品
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