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素面でのホテルマン生活 1

 15年ぶりのホテルマン生活が始まりました。

 総支配人はじめ管理職の方々、厨房の料理人さん達からの「おー、帰ってきたか(笑)」と暖かい出迎えもあって居心地は良かったです。

  しかし、問題ないだろうと思っていた仕事の方はやはりブランクには勝てず、数々のミスもしながら、仕事勘を取り戻すまで1ヶ月近くかかりました。

 部署の社員は昔から知っている課長と若い社員と私の3人で基本回します。

 酒は止めて5年目になると会社の方には話はしていましたが、最初の頃はどうやら隠れて飲んでいないか監視されていたようでした(苦笑)

 アルコール依存性はやはり信用されていないことを感じました。

 以前の上司は総務に異動になっていて接点も少なくなり、恒例だった仕事後の麻雀もほとんどしなくなり、以前に比べると健全な毎日でした。

ただ断酒してから5時起き9時就寝の生活をずっと続けていたので、ホテルでの不規則な仕事ではこの生活パターンを続けるのは不可能で、そこは不満でした。

 1ヶ月もすると仕事勘も戻ってきました。

 酒が切れる時のお茶やコーヒーのサービスをする際、手が震えていてお客さんに怪訝な顔をされる心配もしなくて良くなりました。

 飲みすぎて遅刻、欠勤することも無く普通の社会人としての生活がやっとできるようになったと内心喜んでいました。

 ある程度気持ちに余裕ができてくると、会場設営の雑さが目につくようになってきました。そこは適度に修正をかけてきましたが、もう1つ、若い社員に問題がありそうだということに気がつきました。

 会場設営させても設置ミスなど抜けが多い、頼まれごとを忘れる、
忘れ物、無くし物が多い…など

 これはカウンセリングの勉強で習ったADHDの不注意優勢型かもしれんな...。

 どうもホテル側は本人の性格の問題と思っているフシがあり、言って聞かせると変わると思っているようだが、
とりあえず本人に話を聞いてみる。

 「とにかく忘れるんです」

  「そうなんや...。小さいノートをポケットに入れておいて、忘れないように書いておいたらどうかな?」

  「それもやってみましたが、書いたことを忘れてしまうんです...」

   「......うーむ...。」

  これはどうしたものやら...。

 上司は半分匙を投げている感もあるので、とりあえず私が横についてフォローしながら仕事することにしました。

 スリムで背が高く、色白でメガネをかけた無表情な青年なのたが、メガネを外すと結構なイケメン。

 引きこもり傾向がありネット中毒気味。

 無気力感が目立つが、放っておけないところも感じる。

 社員としてしっかりしてもらわなくてはならないけど、なかなかそうもいきません...。

 そんな彼にも転機がやって来ました。

 年に一度のホテルの一大イベント

 ディナーショーの季節がやって来ました。

 ショーの2週間前に課長がなんと急遽入院ということになり、ディナーショーの現場責任者の大役が彼に回って来ました!

 ディナーショーはショーが始まる1時間前でコース料理を提供しきらなければなりません。

 現場の進行状況を把握し、厨房との連絡をとりながら料理を出すタイミングを調整しなければなりません。

 ショーが始まる時間はきっちり1時間後。

 時間の遅れは許されません。

 コミュ障の気もある彼が、あの怖い料理長とうまく連絡を取りながらやっていけるのか...

 そんな大役が経験も浅い彼に勤まるとはとても思えません。

 心配ではありますが、ホテルとしても彼を1人前にする賭けに出たようです。

                                続く

                                       

 

 

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